2023年度第2回ESD研修会での議論に関連した全国レベルのデータを調べてみました。
2024年02月04日
標記研修会で話題になった小・中学校の児童生徒の自己肯定感や将来の夢や目標を持っているかといった質問に対する回答について、国立教育政策研究所による全国学力・学習状況調査の結果(概要)から、全国の結果を経年変化を含めて引用させていただいた。
https://www.nier.go.jp/23chousakekkahoukoku/report/data/23summary.pdf
https://www.nier.go.jp/21chousakekkahoukoku/21summary.pdf
https://www.nier.go.jp/19chousakekkahoukoku/19summary.pdf
まず、「自分には、よいところがあると思いますか。」という問いに対する回答結果は、当てはまる、どちらかと言えば当てはまるを合わせて小学校で2018年度84%、2021年度コロナの影響か76.9%まで低下したが、2023年度は83.6%と回復している。同様に、中学校では、88%、76,2%、80.1%となっている。タブレットの利用は上昇傾向に影響している可能性もあるかもしれない。ちなみに宇部市の場合は、2023年度で83.0%、79.5%と全国と比べて小学校、中学校ともほぼ同程度となっています。
次に、「将来に夢や目標を持っていますか。」という問いに対する回答結果は、当てはまる、どちらかと言えば当てはまるを合わせて小学校で2018年度85.1%、2021年度コロナの影響か80.3%に低下したが、2023年度は81.4%とやや回復している。中学校では、それぞれ72.5%、68.6%、66.4%となっていて、小学校と比較すると低めになっている。
ちなみに宇部市の場合は、2023年度で82.6%、67.3%と全国と比べて小学校、中学校ともやや高めとなっています。
「地域や社会をよくするために何かしてみたいと思いますか。」という問いに対する回答結果は、2023年度のみの結果ですが、当てはまる、どちらかと言えば当てはまるを合わせて、小学校で 76.0%、中学校で63,0%と小学校に比べて低めになっています。ちなみに宇部市の場合は、73.8%、66.4%と全国と比べて小学校はやや低めだが、中学校は高めとなっています。
次に、いじめの認定件数のデータを文部科学省の令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果についてより引用して示します。
https://www.mext.go.jp/content/20231004-mxt_jidou01-100002753_1.pdf
2022年度の児童生徒数1000人当たりのいじめの認定件数は、小学校89.1件、中学校34.3件、高等学校4.9件と、学年が上がると減少していることが示されています。
同じく、同じ調査結果の資料から、不登校児童生徒数の割合の推移を引用して示します。、
小学校に比べると中学校の方が、1000人当たりの割合はずいぶん高くなっています。経年的には1990年代後半と2010年代後半にやや増加の時期があり、とくにコロナの影響もあってか、令和に入ってからの増加が顕著になっていることで、対策が急がれているようです。2022年度では小学校は100人当たり1.7人、中学校は6.0人にも上っています。
さて、研修会の終盤、教員採用試験の倍率が低下していることが話題になりましたが、働き方改革と関連して、教員勤務実態調査の結果を調べてみました。
https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_zaimu01-000029160_1.pdf
平日の1日当たりの在校等時間を教諭について見ると、2022年度では、小学校で10時間45分、中学校で11時間1分、高校で10時間6分となっており、土日はそれぞれ36分、2時間18分、2時間14分の時間が加わっています、中学校、高校はおそらく部活指導の関係で多くなっていると思われます。2016年度と比較すると、平日、土日ともに、全体に在校等時間が減少しているが、なお長時間勤務の教師が多い状況にあるとしています。
先のデータは祝日のない1週間の平均値であり、同じ調査結果で、小中学校の教諭の1週間の総在校等時間の分布図が示されています。調査は10月11月の祝日がない週について行われており、2022年度は2016年度に比べてかなりの改善がみられるものの、1週間の在校等時間の平均値、小学校で55時間、中学校で59.6時間と比較して分布図を見ると、小学校教諭の34.2%が55時間以上、中学校教諭の36.6%が60時間を超えています。
なお、関連して「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」{給特法)では、給料月額4%の教職調整額という教員独自の給与を払う代わりに、時間外勤務に対して労働基準法に定められた超勤手当を出さない仕組みになっており、上述のような厳しい状況を受けて、4%を10%に改定する提案がなされているようですが、十分な対策ではないという批判も多いようです。
https://kyoiku.sho.jp/249128/
また、令和2年4月1日から適用された「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」では、児童生徒等に係る臨時的な特別の事情により業務を行わざるを得ない場合は別として、①1か月の時間外在校等時間について、45時間以内、②1年間の時間外在校等時間について、360時間以内という上限が設けられています。
https://www.mext.go.jp/content/20200206-mxt_zaimu-00004748_1.pdf
仮に、時間外在校等時間が、月45時間以内であれば、教職調整額が現行の4%でよいとしたとして、現状ではどうあるべきか考えてみました。調査が行われた2022年の10月11月の祝日も土日と同じ時間外在校等時間があるものとして、一月当たりの時間外在校等時間を試算すると、小学校で61,3時間、中学校で83.8時間となり、45時間との比率を用いて4%の調整額を補正すると、小学校で5.9%、中学校で7.9%ということになります。これに少し上乗せしたものが10%という提案になっているのかと思われます。
しかし当然のことながら業務時間だけでは、業務の厳しさ、ストレスの大きさは考慮できません。本来のやりがいや楽しさが感じられれば時間がかかっても耐えられるでしょうが、そもそも、社会のひずみや矛盾により、子ども達に負の影響を与え、さらにこれまで、家庭や地域社会が分担してきた、子ども達の教育を学校の先生方がほとんど一手に負わなければならないという厳しさを政治をはじめ、社会全体が真剣に考え、取り組まなくてはならないことではないでしょうか。(文責:浮田)
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