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スーパーコンピュータと計算科学による未来予測
2023年07月21日
― 線状降水帯の予測可能性について ―
スーパーコンピュータの計算能力は年々向上していますが、現在日本で最速のスパコンは「富岳」です。2012年に供用開始されたスパコン「京」は当時世界最速の性能を誇っていましたが、世界一の座にあるのは、ほんの数年でした。「京」の後継機として開発されたスパコン「富岳」は2021年に供用開始されました。(昨年6月に投稿したブログURL: http://ubekuru.com/blog_view.php?id=5906 をご参照ください)スパコン富岳は当時世界一の性能を誇っていましたが、現在はアメリカのスパコンに追い越されて、世界第二位の性能になっています。
話は変わりますが、今年も梅雨末期の豪雨で各地にひどい被害が出ました。特に最近関心を集めているのは、線状降水帯による限られた地域における短時間の豪雨による洪水や崖崩れなどの被害です。スーパーコンピュータによる線状降水帯の予測が可能になれば、人々の安心材料になることは間違いありません。線状降水帯の予測には、どのようなスパコン性能が必要とされるのでしょうか。筆者がスパコン「京」と多少ともかかわっていた2012年の7月に、九州北部に線状降水帯による豪雨被害がありました。当時の研究によりかなりの精度で線状降水帯の予測が可能になってきました。これはあくまで研究段階の成果でした。
スパコン「京」や「富岳」の使用は、全国の研究者が自分のやりたい計算を申請し、登録機関による審査の結果使用が可能となるシステムです。それ故、必ずしも災害予測にスパコン京を占有できる訳ではなく、10年前は線状降水帯による災害予測がスパコン京によってどれだけ可能となるのかを研究し、実証している段階でした。それから約10年後の現在、気象庁は「京」の約1/3の性能を持つ専用機を持ち、本年5月に下記の気象庁発表がありました。
先日来の山口県や秋田県などにおける災害発生に対して、上記の予報システムが今回の線条降水帯の被害予測にどれだけ効果を発揮したかと問われると、未だ不十分と言わざるを得ません。スパコンによる気象現象の未来予測には、問題としている地域だけでなく広く周囲の気象データ(計算領域内だけでなく境界条件の正確な把握)がどれだけ正確であるかが予測精度を高めるために重要です。洋上の定点観測網の充実や、陸上でのドップラーレーダー網の整備など、まだまだ検討すべき課題があるように思われます。今後の予測精度の向上に期待したいと思います。(H.U. 記)
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