中村哲医師の追悼ドキュメンタリーの映像を知り、その内容について紹介します。
2023年07月19日
この度、縁あって中村哲医師の追悼ドキュメンタリーの映像を知り、その内容について紹介させていただきます。
主に、医師である中村哲さんがいかにして、アフガニスタンの砂漠化した農地の再生のための灌漑用水の大工事を成し遂げられたかの説明の抜粋です。
元の映像は、NHKBS1、2020年12月28日放送の「良心を束ねて河となす 〜医師・中村哲 73年の軌跡〜」によるもののようです。
参照した動画、https://www.youtube.com/watch?v=VdQFQPF4htc
は、映像と音声がずれている部分があります。BS1の再放送は2023年7月23日午後11:30放送予定ですので、ご興味ある方はぜひご視聴ください。
また、島谷幸宏先生がなぜ水工学とは専門外の中村 哲医師の考え方に同調されたのか、以下の動画を見ればよくわかります。 https://www.youtube.com/watch?v=kjk3lgS7_1g&t=42s
まず、最初の写真は、通常の日本の用水堰のイメージとして、クナール川の取水点で大きい岩や石を詰めた蛇篭を投入し、徐々に対岸に近づけて行ったけれども、もう一歩のところで大岩まで流されてしまうことが分かったところです。
水の必要な時期まで、あと2か月しかない切羽詰まった状況でしたが、中村さんは故郷福岡県の朝倉町の山田堰を見に帰り、斜め堰のやり方を学ばれます。
そして、左上の写真に見られるように、斜めに堰を作り直し、漸く用水に水を流すことができました。
左下の写真には、喜びをかみしめる中村さんの姿が映っています。
この25km以上の灌漑水路によって、砂漠化しつつあった広大な場所に農地が回復することになったわけです。
ところが、完成から1年たたない夏にクナール川の大出水があり、灌漑用水取水口、用水路の一部が大きな被害を受けてしまいます。
左上の写真が用水路の取水口の状況です。
中村哲さんは、この大被害について、教訓ととらえ、「主役は人ではなく大自然である、人はそのおこぼれに予かって慎ましい生を得ているに過ぎない。」問うことを体得されます。
中村先生は再び郷里の山田堰で3日かけて、自ら観察し、右上にあるように
斜め堰が直線ではなく、円弧であることを見い出されます。
そこでクナール川の取水堰も右下の写真に示されるように、作り直し、この写真の左上に位置する取水門に大出水時に過度の流れが及ばない工夫を施されたということです。
なお2000年の大干ばつや2010年夏の大出水の原因については、中村哲医師は以下のように書かれています。http://www.peshawar-pms.com/kaiho/138nakamura-2.html
「標高の低い山脈から流れる川が涸れるとジューイの水が失われ、次いで地下水の減少が起きてカレーズが枯渇する。一方、7,000m級の高山を源流とする大河川では、取水困難は水量の減少ではなく、流れの不安定化―洪水や河床・河道の変化によって生ずる。(中略)
アフガニスタンの年間降雨量は約200ミリ前後とされ、非常に少ないが、降雨降雪の絶対量が近年になって減少したという確証はなく、偏在と言う方が正しい。 ヒンズークシ山脈の雪線の著しい上昇と低い山脈の地下水の枯渇は、少雨よりも高気温による可能性が強い。」
関連してhttps://www.youtube.com/watch?v=zuEY9Ib9wAM
【京都環境文化学術フォーラム】記念講演動画も初期の井戸掘りやカレーズに関わる事業など、参考になります。
最後の部分では、中村哲医師の生い立ちや、社会的な活動のごく一端の紹介です。
中村さんは小さいころ若松で育ち、お母さんの実家の祖父や祖母の影響を強く受けて育たれたようです。
左下の写真は2001年9月11日の世界貿易ビルの崩壊を受けて、ブッシュ大統領がアルカイダの壊滅のため、掃討作戦を実施することを宣言し、当時の小泉首相も同調して、自衛隊を後方支援に派遣することを決定します。
忙しい中、帰国され、それに反対する意見を国会の委員会で述べられているところです。
右上の写真は、2010年の初めての通水式の折、一人少し離れたところで、用水路建設や社会活動に追われているときに、次男の方が、難病で10歳で夭逝されたこと、その約束を果たしたことで、涙を流されているところであるそうです。
右下の写真は、クナール川大出水の大きな被害の後の修復工事の上を米軍のヘリコプタ-が飛んでいるのを見て、「彼らは殺すために空を飛び、我々は生きるために地面を掘る。」という言葉を残されています。
当時のアフガン戦争における米国とそれに追随する日本の姿勢は、現在のウクライナ戦争においても、状況は異なりますが、基本的な姿勢は変わっていないように感じます。これでいいのでしょうか。(文責:浮田)
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