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世界2月号は特集・クルマの社会的費用、「テスラ・ショック」や「脱・クルマ依存へ」必読です
2022年01月25日
岩波の月刊誌、「世界」2月号は特集1・クルマの社会的費用を取り上げています。飯田哲也さんが「テスラ・ショック-モビリティ大変革と持続可能性-」の記事を投稿とのFB情報をみて、月間購読の「世界」を心待ちにしていました。
まずは、除本理史(大阪市立大学)氏の「緑の社会変革に向けて―『自動車の社会的費用』再読-が面白い。経済学者の宇沢弘文が1974年に著したこの岩波新書、自分は学生時代に読んだと思うが、名著は書庫に埋もれている。自動車が走るための道路改良や交通事故防止、大気汚染による健康被害は皆、社会的費用なのに、外部化され、自動車購入者が払っていないことを金額で示したのだ。
同書の出版後、社会的費用の「内部化」はどう進んだか、大気汚染訴訟と排ガス規制強化、自治体によるPMディーゼル車規制、世論の支持を挙げるがCO2規制は十分でない。電気自動車化の世界潮流が進み、脱炭素へ向かっているが、緑の社会変革に向けて市民社会が企業行動をチェックし、情報公開と政策変革をことが大切という。
今井博之氏の「路上を子どもたちに返す」は、宇部の自転車ネットワークに関わり、車道の自転車レーンを要望してきた、うべこまち(うべ交通まちづくり市民会議)にも身近な問題である。
道路はこれまで、クルマの高速移動を優先して構築されてきて、人々の移動や物資の輸送、経済に多大な進歩をもたらしたが、一方で交通事故や大気汚染など健康被害を起こしている。この道路環境はまた人々のコミュニケーションや子ども達の発育にも悪影響を及ぼしている。その例として、小児の肥満が自宅前の道路で遊べる子どもとそうでない子どもで有意差ありの研究がある。ヨーロッパでは歩車共存の道「ボンエルフ」が広がっている。子どもが道路で遊ぶことを奨励し、速度は30km/時以下に抑え、クルマに優先権を与えないのだ。この政策を交通鎮静化(Traffic Calming)という。建築家で子どもの遊び場研究者の仙田満氏は「道はそもそも子どものもの」、山や小川や空地のようにという。
さらに、飯田哲也氏の「テスラ・ショック」を読むと、世界のモビリティ変革の黒船が迫っていながら、日本人は、日本政府は、トヨタはどこを見ているのか?と驚く内容である。統計的データを示しながら、ノルウェーの化石車販売台数の激減、世界のEV新車販売比率の増進が示される。
自動運転について、「ウェイモ方式」が用意された3次元地図データを使うのに対し、「テスラ方式」は車載カメラとAIでリアルタイムに判定するビジョン方式をとり、後者が指数関数的に伸びそうという。自動運転はライドシェアやロボタクシー、MAASにつながり、高齢者の、地方の移動困難を救う手立てになりそう。車の稼働率が5%から50%になれば、必要な車も激減するので、旧来のエンジン車ビジネスモデルは先がないという。
グリーンピース・ジャパンのダニエル・リードは、「Fun to Drive?トヨタと気候変動」で、どの自動車会社が気候変動に積極的か、ランキングを示している。トヨタが最下位とはショッキングですが、『日本の乗用車の脱炭素かによるマクロ経済および環境への影響』という報告書が発表されている由、是非読んでみたいと思います。
ハイブリッドでもない、ガソリン車に乗っている自分は、化石人間かなと思う記事でした。図書館はどこでも、「世界」を雑誌棚に入れているので、この特集を、是非お勧めしたい。(文責:村上ひとみ)
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