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第3回環境サロンの概要報告 続報です。

2019年10月20日

ただ、この取り組みの結果、今後の重要な課題が認識され、得られた課題として、水・物質循環、生態系メカニズムの把握と、その結果を流域管理にどう活かすのかが上げられ、流域管理の総合指標の必要性もさることながら、生態系メカニズムの把握には環境DNA技術が重要であると認識された由である。

環境DNA技術とは、魚などの生物が水中に排泄する糞や粘液の分泌物などにその生物固有のDNAが含まれ、その濃度を測定することで、魚の存在や数を推定しようとするものである。測定方法は、水中からDNAをろ過抽出し、その生物特有のDNAプライマーを用いて、DNAを増殖させる前処理を行い、PCR装置により分析する。

環境中の生物量を潜水や採捕によって正確に把握することは、非常に労力を要し、難しいが、この環境DNA技術を用いれば、非常に効率的に生物の種類や数を推定できる。
希少種・外来種の分布、特定種の現存量推定、生物相の解明に役立てることができる。

演者の研究室では、環境DNAの精度を確認するために、あらかじめ室内の水路実験でカワムツを飼育し、その数と環境DNA濃度の比例的な関係を確認されている。

一度に多種類の生物種を同定、計測できる、次世代シーケンサーを用いるメタバーコーディング法も、より高価な装置が必要だと言うことであり、詳細はわからないが、実用化されてきているようである。

演者らによる山口県周辺の河川調査では潜水・採捕により確認した種数と比較して、全河川でメタバーコーディング法により得られた種数の方が多かったデータも紹介された。
講演時、演者らによって試作された、ドローンを用いて空中から河川水の採水をしている動画も見せていただいた。

現在、資源量が減少しつつあるアユのモニタリング例について、高津川と佐波川での調査を紹介され、アユの生活史に応じて、移動する状況や、生息密度が環境DNAによって把握できること、また、濃度よりも流量を乗じたフラックスで表した方がより適切にこれらを把握できる可能性があることが示された。

高津川は構造物がない。近年、アユ資源量が少なくなっている。佐波川は魚道はあるが、堰が多い。

外来生物として、ヌートリアや、オオカナダモについても環境DNAにより、分布状況を把握できることも示された。

最後に,流域圏研究の展望として、AIや、衛星リモセンデータ、ドローン等無人航空機リモセンデータの活用、安定同位体分析による有機物起源解析、、環境DNA技術などを活用して、研究を深化させていきたいとされた。

質疑では、
・生態系サービスという概念は人間本位の考え方で抵抗感がある。
魚などの他どんな種類の生物に適用可能なのか。
→甲殻類、両生類、ほ乳類、鳥にも応用できる。阿武川でオオサンショウウオがいることもわかっている。アオコやカビ臭の原因微生物にも適用できる。
・環境DNAの環境中での安定性や蓄積性はどうなのか。
→現場では種々の要素があり、定量精度的には今後も検討の余地はある。
・環境DNA研究センターの今後は
→予算的な自立も課題であり、計測の委託も受け入れていきたい。と言ったような議論があった。

赤松先生は新たに設けられた山口大学 環境DNA研究センターの代表として、複合領域の先生方を束ねられています。一層の活躍を期待いたします。

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