足利由紀子さんによる第5回環境サロンを兼ねたESD研修会の概要(続報)です。
2018年12月30日
次に、小学校の環境学習とどのように関わってきたかについて説明していただいた。
学校の中での座学による干潟の学習、色々な実物を持って行く
干潟の現場での学習 最近、学校が忙しくなり、事前学習、現場学習、まとめという一連の時間がとりにくくなっている課題がある。
○山・川・海のつながり、
カキにプランクトンを食べさせる実験、干潟の土で、校庭の砂でトマトジュースを混ぜた水をろ過して、違いを見る
学習補助教材を環境省の事業で、教材をつくったことがあり、これを使って、授業したり、先生の参考にしてもらったりしている。イランで使われている例もある。
川の学習、ライフジャケットで魚を捕らせる。白地図で川を追いかけさせる
透視度計で川の水やいろいろな水を計らせる。臭いを嗅がせる。水道水、用水路、お風呂に水など。生きもの調査の場合は、下流の場合はみんな汚いという判定になったりするので透視度に変えた。
上流中流下流の子供サミットも大分県と4年間やったことがある。色々な議論をしてくれる。生きものと防災の関係など、4,5年生でも、かなりのレベルの議論ができるので面白かった。
山・川・海の学習をしている学校もある。森林組合の組合長OBさんに山の話をしてもらう。山の腐葉土をコップに入れて、水を入れると、逆さにしても腐葉土の場合は落ちない。
大きいでこ巻き、巻き寿司をつくって、食べさせ、ノリ、青ノリを使う。山がいいからミネラルが流れてくるので、おいしいノリができるということを感じさせる。
山国川上流の今は閉校になっている上流の小学校の子供4人が夏休み64km自転車で干潟に下りてきて、干潟の学習をし、エイを捕まえたり、夜はカニの産卵を観察する。その後、1泊して帰るという学校もあった。
「だいすき!山国川」、「ベッコウトンボ」という補助教材もつくった。
○ごみと野生生物
隣の市の中学校で、この子達が幼稚園生や小学生を連れて行ってビーチクリーンをしてくれる。マイクロプラスチックについて、ヤクルトのビンが壊れて行ってるものを見せて、拾えるうちに拾う。山口、福岡、大分に大量に流れ着く、カキ養殖のパイプや、外国産のゴミもなども実物を持って行って話をする。先に事前の説明してから実地作業をすると、積極的にゴミを拾ってくれる。
大分県と、「海のごみ問題と野生生物」を作成し、今月末にもできあがる予定。このような教材で事前に、学習しておいてもらうことが大事だろう。
○漁師さんと水産教室
どんな漁業をしている。地域の産業理解。はじめは、仲立ちをしていたが、少し慣れると、漁師さんだけでやっていただけている。
ノリ漉き体験、後日、給食で食べる。あるいは、干物教室 レンチョウの、うろこをとって、塩を振って、干すだけでいい。夕方持って帰れる。
その他、漁師さんの奥さんなどによる地元の魚を使った料理教室もする。包丁やまな板がない。牛乳パックを開いた物をまな板代わりに使うなど工夫した。
カブトガニの絵を描かせたいというので、漁師さんが40尾ほど衣装ケースに入れて、持ってきてくれて、こども達が、上手に絵を描いてくれたこともある。
松林の清掃にも、近くの小学校の生徒が来て助けてくれた。昔、中津には、「浜遠足」という習慣があって、市内の学校のこども達が松林に来て、宝探しや相撲など、遊んだあと、アサリをとって帰ったらしい。
今回は、隠して置いた松ぼっくりを宝探しをさせて、持って帰った。一年生とクリスマスの飾りづくりに使うとのこと。お年寄りに聞き取りを行って、大新田の松林の物語も読本としてまとめている。
なぜこういった自然体験学習が大切なのかについて、独立行政法人国立青少年教育振興機構の調査によると、自然体験の多い子どもの中には、道徳観・正義感のある子どもが多い傾向にあること、また自然に触れる体験をした後、勉強に対してやる気が出る子どもが増えること、とくに中学校、高校に比べると、小学校の場合にその傾向がより顕著であるが示されている。
今ある学校を対象に心理学の先生に加わってもらって、同様の調査を行っている。
( 参考までに、下記のURLによって、同じ機構の最近の調査の結果でも、自然体験の多い子どもの報が、自己肯定感が強く、まだ同様に、道徳観・正義感が強い傾向が示されている。http://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/107/File/20180129gaiyou.pdf )
私たちのスタンスは、学校での環境学習の主役は先生と生徒であって、市民団体やNPOは学校でできない部分をサポートする役割であると考えている。
また、大事なこととして、山川w海のつながりや、水の循環を理解してもらえるような内容を心がけている。
あと、やはりリスクマネージメントには十分注意を払って行かなくてはならないと思っている。海に船に乗ったり、川に入ったりする活動が多いので、実地訓練や座学の講習を受けたりしている。
最後に、NPOの経営について、われわれもこれまで、やりたいことをやってきたわけだが、ボランティアがベースであった。しかし15年ぐらい経った頃から、一部のメンバーに負担が大きくかかるようになってきた。
とくにフリーランスは自分だけで、こちらの負担が大きくなってきた。もし病気でもなれば、まずい、このままでは続かないと思った。ちょうど2013年にセブンイレブン記念財団から、組織強化の助成をいただいて、3年間、事務局専従スタッフの雇用ができた。収入の増加、情報発信力の強化、、事務仕事のIT利用による省力化、等を検討した。オリジナルグッズとしてカブトガニサブレの販売も行っていて、年間60万円程度売上があるが、色々手間に係る費用を考慮すると、黒字ではなく、セブンイレブンからはあきらめた方がいいと言われている。
会費や寄付をいただくにも、寄付は都会の方々からが多く、アニュアルレポートやパンフレットの充実、SNS発信など、まず情報発信をきちんとすることが前提である。
大口予算申請時に言われて、次ページに示されるようなロジックモデルも作成したが、専従職員の雇用のための予算も今年度で切れるので、どのように継続すべきか考えなくてはいけない状況である。
インプットして、NPOが持っている資源、抱えている課題、課題解決に向けた取組、短期的に期待できる成果(アウトプット)、3~5年後あるいは、10年後の中長期的成果(アウトカム)などが、書かれている。
このような表を、ひがたらぼの事務所にも貼って、みんなで現状を認識しながら、身の丈にあった活動をしていくとされた。
来年20周年を迎えるにあたり、目指す物として、助成金や補助金に頼らない運営、ひがたらぼの拡大、意欲ある若手人材を雇用できる力をこの先10年でつけたい、今までボランティだったメンバーにも賃金を、等を上げられ、最後は、干潟環境の持続的保全に向けて努力したいとまとめられた。
質疑:
・どうやって子どもをこういう活動に参加させるか、親をどう説得すればいいかを考えることが多い。
→20年の間に、親も変わったなと言う印象がある。お客さんの感覚の人が多い。10年前とも違うかんじがする。勉強するこども達は多いが、野外学習はさほど人気がない。ちらしの工夫も要るのかも知れない、保育園や学校との連携も大事だと思う。これからも子どもも親も変わっていくだろうから
・ここまでNPO法人でやっておられるのは、すごいと思う。中津市や学校関係の積極的な働きかけがあったのか。環境学習指導者のリストは整備されているのか。
→先生のクチコミが多いと思う。総合的学習の時間が設けられた時期にスタートした経緯がある。その時期の先生のつながりはその後も有効だった。
少し前から経営強化のために無償の出前でなくて、有償でと思い、そのようなパンフもつくったが、現実はそれを受ける側のわれわれの人材不足という面も考えなくてはならない。材料費が要る場合とかは、学校にも負担をお願いしている。
大分県には環境教育アドバイザー制度がある。窓口は保健所になっている。年間予算が500万円くらいあるのではないか。サポーターにも謝金が出る。このほか森林税活用事業の一つとして森の先生というのもある。中津市は総合教育を推進する制度があったようだが、最近は廃止になっているようだ。
・助成金の申請はどなたがされるのか。
→ほとんど、自分が書く。20万円くらいのものなら比較的簡単だが、人件費が使えるような助成はなかなか通らないのが現実だ。
・お話を聞くのは2回目だが、今回本当によくやっておられると圧倒された。参考資料として、われわれうべ環境コミュニティーと水辺に遊ぶ会の活動計算書の比較をしたものをお配りしたが、われわれの場合は環境学習館の指定管理料がほとんどを占める。しかし実体は受験勉強の場の提供になっていて、本当にやりたい環境保全活動は、別に外部資金の申請によらなくてはならない。ボランティア理事の高齢化とともに、年々しんどくなっているというのが現実である。 http://ubekuru.com/blog_view.php?id=4865
前回のお話で、漁師さんからカラスの姉ちゃんと呼ばれていたと言われていたが、なぜなのか。
→はじめ密漁者と思われていたが、その疑いは晴れ、その後は愛鳥家と思われた。カモがノリを食べると思われていて、野鳥の会の人は嫌いで、しばらくはそう呼ばれていた。その後、漁師さんとも仲良くなって、上がってご飯をたべて行きなさいと言われるようになった。昔のようにアサリがたくさん獲れた時代は漁師さんも気持ちにゆとりがあって少しくらい子どもが貝をとっていってもかまわなかったのだろう。
・宇部は海岸が工場用地で、意外に海が遠い印象がある。
→山口県は環境学習施設も多くて、大学も多くよくやられている印象がある。水産大学校の学生さん達にはずいぶん協力いただいている。中津の漁村は高齢化が進み、若い学生達が出入りして、なんかやっている、声が聞こえるだけで元気が出ていいと言われるお年寄りも多い。こども達にしても、20才くらいの若者と接するのはいいようで、そんなことも中津アカデミアを始める一つの要素だった。
・こちらでも、市や教育委員会は環境に関心が今ひとつという感じがするが、そちらでは々なのだろうか。
→中津市自体は経済と福祉と教育に力を入れているが、環境には教育にさほど熱心ではない。しばらく前から、より広めの教育に重点を置くのがいいかなと思っている。
・全体的にボランティアの貢献に対する適当な評価規準がないのが問題と思う。話は別だが、ペットボトルを用いた顕微鏡をスマホで見ると、200,300倍の映像が見れる。
→興味深いので、一度教えていただければありがたい。
(参考までに作り方の動画: https://www.youtube.com/watch?v=Umz3euSegQI )
・中津干潟のアサリはどういう状況ですか。山大から使わなくなった顕微鏡をいただいて、海のプランクトンなどを、見せてあげるといいと思う。これからもお体に気をつけて頑張っていただきたいと思う。
→昭和60年をピークにして今はゼロで、山口湾と似ている。ありがとうございます。
今回も本当に、参考になるお話をいただき、ありがとうございました。周防灘の対岸における足利さん達の縦横無尽の活躍ぶりに、ただ脱帽という感じでした。参加者がすくなくてもったいなかったので、詳しい概要にしました。
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