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たんぱく質の構造解析と人工光合成の研究最先端(その3)

2016年05月16日

人工光合成の研究においては、バイオミメティックな情報を基にした触媒開発研究が重要です。葉緑体に含まれるたんぱく質の構造解析に注目すると、X線回折による構造解析とその前段階としてのレーザーについての理解が必要です。前回は人工光合成研究の触媒開発の準備段階としての情報をまとめました。
http://ubekuru.com/blog_view.php?id=3949

 たんぱく質の構造を決定するためには、X線の中でも単色性に優れた(コヒーレントである)強力なX線レーザーの使用が有効です。

X線自由電子レーザー(XFEL) 施設SACLA(サクラ)

 X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free-Electron Laser)は、通常のレーザーと異なり、物質に束縛されていない自由電子を用いてレーザー増幅を行います。 日本におけるXFEL施設は、 第3期科学技術基本計画における5つの国家基幹技術の1つとして位置付けられ、理研の大型放射光施設SPring-8に隣接して整備が進められてきました。2011年3月には施設が完成し、 愛称をSACLA(SPring-8 Angstrom Compact free electron Laser)と決定されました(2011年3月29日発表:
http://www.riken.jp/r-world/info/info/2011/110329/index.html)。SACLAは、これまでの放射光と比べて、輝度は10億倍、パルス幅は1,000分の1 (10フェムト秒=100兆分の1秒)、さらに100パーセント位相のそろったコヒーレントなX線という性能を持ちます。目指す最短波長は0.6Å。 基礎・基盤研究から、産業や応用研究開発まで、諸外国に先駆けて革新的な成果を創出することが期待されます。具体的には、がんやエイズなどの難病に対する特効薬の開発、持続的発展に必要な新エネルギーシステムの研究など、幅広い分野での活用が見込まれています。

具体的な発光方式としては、アンジュレータと呼ばれる装置を用います。装置内で電子を周期的に小さく蛇行させ、蛇行の都度発生する放射光を干渉させることにより、極めて明るい特定波長の光が得られます。 通常のレーザー発振装置では、両端に共振反射鏡を置いて、コヒーレントな赤外線や可視光のような波長の長い光を出すレーザーが完成します。
 しかしながら、短波長のX線では、反射率の高い鏡が存在しないので共振器を作ることはできません。共振器内で多数回光を往復させて電子との相互作用を強めていくのに代えて、非常に長いアンジュレータに電子の塊を通して、後ろの電子から出る光と前の電子との相互作用によって電子を波長間隔に並べ、コヒーレントなX線を発生させる自己増幅自発放射(Self-Amplified Spontaneous Emission : SASE)機構が、1980年代に提案されたことによって、XFELの実現可能性が出てきたのです。

現在、世界中で計画されているXFEL施設はすべて、このSASE機構に基づくものですが、この機構でXFELを実現するためには、超高品質の電子ビームを作る技術や、高精密電子制御技術が要求されます。日本の技術の粋を結集することによって、このような新技術を作り上げ、完成したのがSACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)なのです。
 このようなX線自由電子レーザーを照射して得られるX線回折データは非常に高速・大容量の計算を行うことによって、たんぱく質の構造が決定されます。SACLAで得られたデータは、神戸市のポートアイランドに設置されている理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」に送られて、データ解析が行われています。
岡山大学大学院自然科学研究科の沈建仁教授(バイオサイエンス専攻)と大阪市立大学・複合先端研究機構の神谷信夫教授(物質分子系専攻)らの研究グループは、光合成において光エネルギーを利用し、水を分解して酸素を発生させる反応の謎を解明しました。光合成は、太陽の光エネルギーを利用して、二酸化炭素からブドウ糖を作り出す過程です。ブドウ糖は、我々人間を含め、ほとんどすべての地球生命体が、呼吸によりエネルギーを取り出している栄養源です。光化学系II複合体(PSII、前々回のブログを参照してください)は、太陽からの光を受けて、水を分解して酸素分子を発生させ、同時に電子を発生させています。この電子は、二酸化炭素をブドウ糖まで変化させるために利用されます。これまでPSIIの酸素発生反応は、4個のマンガン原子(Mn)と1個のカルシウム原子(Ca)が複数の酸素原子(O)により結びつけられた金属・酸素クラスターの上で進行しているとされていましたが、そのクラスターの正確な化学組成と詳細な原子配置は明らかにされていませんでした。

PSIIの全体構造 (19個のタンパク質からなる単量体が2つ集まって二量体構造をとっており、真ん中に対称軸があり、2個の赤丸の場所に触媒中心がある。)

 沈教授らは、PSIIの結晶の質を従来と比べて飛躍的に向上させることに成功し、大型放射光施設(SPring-8、SACLA)を利用してX線結晶構造解析を行いました。これにより、そのクラスターはMn4CaO5の組成をもち、全体として歪んだ椅子の形をしており、ひとつのMnとCaにそれぞれ2個の水分子が結合していることが明らかになりました。これら4個の水分子のいずれかは、Mn4CaO5クラスターから発生する酸素分子の中に取り込まれるものと考えています。今後、このクラスター構造を模倣した触媒が開発されると、触媒まで太陽の光エネルギーを伝達する部分と、その触媒が水から作り出す電子を用いて水素分子やメタノールを合成する部分を組み合わせることが可能になり、人工光合成を実現できるようになります。これにより、近い将来に人類が直面するエネルギー問題や環境問題、食料問題を一気に解決する足がかりになるものと期待します。 (HU)
なお、今回のブログの写真などは、下記のURLより引用しました。

http://www.spring8.or.jp/ja/about_us/whats_sp8/
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2014/141127/
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2011/110329/
http://www.aics.riken.jp/jp/

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