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HUさんの教育視座―2- 自分の子供が学習障害になる前にどうしたらいいのでしょう

2016年04月21日

 子供たちがすくすくと育ってほしいとみんなが願っているところですが、最近は登校拒否児童の増加、その原因となっている適応障害や発達障害などと呼ばれる心の障害の子供たちが増加する傾向にあることは、社会的にも大きい問題となっています。また、病気に苦しむ子供や、身体的な障害を持つ子供を持って悩み苦しんでいる親御さんも多いことでしょう。
 私は教育学や発達科学の専門家ではありません。高等教育と研究の現場で長
年頑張ってきましたが、学生たちとの交流の体験から、初等教育あるいはもっと早い段階における子供たちの発育と教育について、私の経験を基にして何らかのアドバイスができないものかと、このブログに原稿を書くことにしました。小学校、中学校に通う時期になっての登校拒否の問題は次回に意見を述べることにして、今回は幼年期の発達について述べることにいたします。
 私が幼年期を過ごしたのは、昭和20年代の四国の田舎の片隅でした。当時は第2次世界大戦の終結後、数年たった段階で、田舎の暮らしは貧しいながらも隣近所の人たちが協力し合う、地域社会の良い面がたくさん残っていた時代でした。私は母方のおばあちゃんと一緒に暮らしていました。父方のおばあちゃんは昭和初期に亡くなっていませんでした。私のおばあちゃんに加えて、溜池を挟んだ向こう隣の自転車やのおばあちゃんと、3軒目の東隣の宮下のおばあちゃんが私の2番目と3番目のおばあちゃんでした。両親以外に3人のおばあちゃんに可愛がられて、ゆりかごの時代を過ごせたことは、今も幸運であったと思っています。

当時は、男性は40歳から50歳台で亡くなる人が多く、不思議とおじいちゃんの記憶は多くありません。おばあちゃんたちは自分の孫の面倒を見るだけでなく、近所の孫たちも分け隔てなく、叱ったり一緒に遊んだりする環境でした。
 小学校に行くころには、友達も増えて遊ぶ地域も広がっていきましたが、幼年期はおばあちゃんたちと近所のおばさんたちが子供たちを共同で見守る社会があったのです。私の部落は全体で30戸ほどの小さい集落でしたが、夏になるとバスをチャーターして、留守番の年寄だけを残して8㎞ほど離れた海水浴場に一日旅行をすることもありました。また、四季折々の氏神様やお寺の行事に集落の担当を決めて参加し、冠婚葬祭があれば部落の全員が参加して世話をしていました。

昭和30年から40年台の高度成長期には、このような地域社会の強い結びつきが徐々に失われ、社会は効率重視の消費拡大路線に飲み込まれ、若者は都会に出ていき過疎化は進む一方になりました。私の卒業した小学校も140年余りの歴史に幕を閉じて、2016年3月に閉校になってしまいました。田舎で周囲の大人たち、おばあちゃんたちに見守られて育った私たち戦後のベビーブームの団塊世代は地域社会とのかかわりが希薄になる中で、仕事と家庭生活、子育てに頑張ってきました。その過程で、私たちの子供時代には皆無であると思われた発達障害に代表される学習障害の子供たちが徐々に増えてきたように思います。私の少ない経験からの感想ですが、仕事の多忙さのため父親の家庭へのかかわりが極端に少ない場合、母親が幼児教育を取り仕切って、相対的に父親の教育へのかかわり少なくした場合などに登校拒否の子供が発生する確率が多いような印象を受けています。極端な場合は自分の夫を子供の前で、悪し様に言うケースも耳にしたことがありますが、そのようなことは現に慎むべきであると思います。子供たちは自分の両親の関係を、私たちが思っている以上に批判的な目で見ていると思います。しかも、自分で主体的に判断して行動できる年齢以前の幼児は、両親や周囲の人たちの愛情に疎外感を持つと、内向的に、あるいは自閉的になっていくのではないかと思います。私は自閉症をはじめとする学習障害の治療の専門家ではないので、子供の障害に危惧を抱かれている親御さんに治療の指針をお伝えすることはできません。私の言えることは、何よりもご両親がお子さんに愛情を注いでいただき、育児を何よりも大切に思っていただきたいということです。社会と孤立した両親であってはなりません。ママ友とか公園デビューとか、私も娘の育児の様子から、最近のお母さん同士の付き合いについて話を聞きます。仕事の都合で知らない土地で、夫婦と子供の核家族で生活をしないといけない状況の人たちも多いのですが、同じ年齢のお母さん同士の付き合いだけでなく、出来るだけ広い年齢層の人たちと交流を深めていただきたいと思います。おじいちゃんやおばあちゃんが健在でしたら、経験豊かな高齢者と子供たちが一緒になって遊べる場を作って頂きたいと願います。そのことが、子供の安定した精神の発達に深い意味を持って来るのです。また肉親との交流だけでなく、地域社会とのかかわりを持って、地域のコミュニティーで行っている子育てや教育の取り組みに積極的に参加してほしいと思います。私の娘の育児を見ていると、子供への対応が手一杯で、とても地域とのかかわりあいを深めることが難しい状況であることは理解できます。でも、子供の安定した生育のために、核家族の中だけでの育児でなく、地域コミュニティーの活力を家庭内の育児に取り込む努力をしていただきたいと思うのです。

 一方、住民の高齢化と少子化、育児世代の親たちの生活の合理化・効率化などの理由により、地域コミュニティーの成り立ちがますます困難になりつつある昨今です。もう昭和の古き良き時代の村落共同体に戻ることは難しいのかもしれません。それなら、今の時代に出来る地域コミュニティーの組み立てを積極的に創出していこうではありませんか。何をやるにも人のパワーが基本です。今、力を結集できる可能性のあるのは団塊世代です。続々とリタイアしつつあり、しかもパワーを残している高齢者が積極的に地域コミュニティーの活性化に尽力すれば、子供を育てる環境はどんどん良い方向に向かっていくと思います。ボランティアの精神をもって、自分の趣味の世界に閉じこもることなく、利他の志を持って子供たちのために尽くそうとする人たちが大幅に増えることを願っています。この人たちが地域のコミュニティスクールの中核となって、教育委員会や学校の先生方と協力体制を組み、自治体の支援を受けながら子供の安定した発育をバックアップしていくことが最も大切なことと思います。
若いお母さんたちは、育児と生活に精一杯かもしれませんが、もうひと踏ん張りして地域社会の育児の取り組みに参加して頂きたいと思います。そのことが、とりもなおさずご自分のお子達の発達に良い影響を及ぼすことになるのです。お父さんは、仕事に忙しいのは理解できますが、将来にわたって自分の子供が健康で障害のない人間に育っていくことが、回り回って自分たち夫婦の幸せにつながることを十分理解してください。それだから、育児をお母さんに任せずに、参加すべきところは参加して、更に自分たち夫婦の良好な関係を子供に良く見せつけてあげてください。そんな両親を見て子供は安心して育っていくのです。おじいちゃん、おばあちゃんを始め、高齢者の皆さんや壮年期の人たちも自分のところの孫たちだけでなく、ご近所の子供たちにもわが子や孫達に接するのと同じように、優しく時には厳しく接してあげてください。
地域社会の再構築と、幼年期からの教育に対する地域の体制の組み立てに、私たちが努力していく中に、きっと学習障害の子供たちの数が減少していく展望が開けてくると信じて、私もボランティアの道を進んで行こうと決意しているところです。

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