うべ環境コミュニティー主催 第2回「こころの語り場」 が開催されました。
2025年01月10日
うべ環境コミュニティーでは、「こころ」に関連するテーマについて、多様な年代、価値観、背景を持つ参加者が本音で語り合い、心理学を主要なテーマとするエッセーをじっくり考える「こころの語り場」を開催しました。10月の第1回こころを語る会に続いて、第2回目の開催でした。
開催の目的は若い人たち、特に心理学に興味を持つ若者たちが意見を述べ合って、それに対してシニア層を含む年長者も経験に基づく意見を述べあうことでした。これによって参加者が創造的な意見を述べあい、それぞれの参加者が勇気を持って前向きに生きていく気持ちが強くなることを目指しました。
開催日時は令和6年12月21日(土) 13:30~16:00、場所は 宇部フロンティア大学 臨床心理学実習室 でした。参加者は心理学に興味を持つ高校生、フロンティア大学大学院生および学部学生、一般市民で、合計14名でした。
「こころの語り場」の記録と得られた成果を下記に示します。
☆ オープニング・オリエンテーション(20分間)
参加者は高校生2名、大学生(+大学院生)3名、一般参加者(現役が4名、シニア3名)+大学教員2名の合計14名でした。意見交換を活発に行うために参加者を3グループに分け、それぞれのグループに高校生・大学生・一般参加者が程良くミックスするように配置しました。
読み合わせの資料として、河合隼雄著「心の処方箋」新潮文庫(2004)の中から3つのエッセーをグループAのデスクに配布し、その中からAグループに所属したメンバーの話し合いによって、一つのエッセーを選びました。他のグループも同様にテーマを選定しました。その結果、以下のようなエッセーが選ばれました。
Aグループ:河合隼雄先生のエッセー「心の新鉱脈を掘り当てよう」
Bグループ:鷲田清一・熊野純彦先生のエッセー「自分らしいってどういうことだろう?」
Cグループ:日野原重明先生のエッセー「思いついたらすぐ実行」
☆ サマライズ (30分間)
AグループとCグループは、最初に各パラグラフを参加者が音読し、続いて内容に関して数枚の画用紙に大きい字で要約を書き出しました。約30分の後に、この要約をホワイトボードに貼りだしました。
Bグループでは、少し文章が長かったため、最初に各参加者が黙読して、その後多少の意見交換を経て、要約の作業に入りました。
☆ ダイアローグ(50分間)
各グループのホワイトボードの前に全員が集まり、参加者が一人一人、各2分の持ち時間で画用紙に書いた要約のプレゼンを行いました。参加者はそれらに対して建設的な意見を述べ合いました。
☆ エンディング(10分間)
全体的な意見交換とまとめを行いました。
以下はそれぞれのエッセーに対するダイアローグ(参加者のプレゼンと、意見交換)の記録の抜粋でです。
◎ 「心の新鉱脈を掘り当てよう」(臨床心理学分野)
他のグループにも共通することであったが、初めて他のグループの内容を知って、要約のプレゼンに接すると最初戸惑う場面があった。そのグループのファシリテーターがエッセーの内容概略を説明してから、各人のプレゼンをすると言った工夫が必要と感じた。
Aグループでは、多くのメンバーが「こころのエネルギー」と言うキーワードに引かれたようであり、自分の意思でこころのエネルギーをうまく使って、新しい新鉱脈を掘り当てていきたいと言う気持ちが強くなったように感じた。
◎ 「自分らしいってどういうことだろう?」(哲学分野)
このグループの内容は哲学的なこともあり、よく考えると、なかなか難解であった。しかしながら、皆さん真剣に考えたプレゼンであった。「エッセーの内容に自分はこのような点に疑問を抱く」と言うようなご意見に対しては、もっと突っ込んだ意見交換が必要だと感じた。高校生はよく本質に迫っており、一方大学生のプレゼンは具体的内容を述べたいという意欲が感じられました。この年齢の3~4年間の成長がよく対比できて、貴重な体験であった。皆さん、自分を信じて生きていって欲しいと感じた。
◎ 「思いついたらすぐ実行」(医療分野)
日野原重明先生が101歳の時のエッセーで、「勇気ある実行」と言うキーワードに多くの参加者が触れていた。やろうと思ったら時を移さず実行する、勇気を持ってまずやってみよう、と言う若い人のプレゼンには感心した。他の人たちも同様のプレゼンであったが、「失敗したらどうするのか」とか、「実行しようと決意するのは、どのような時なのか」などの意見が全体討論で出され、これについて活発に話し合われた。「失敗を恐れずに、先ずは小さい目標でやり始めよう。うまくいけば大きく育てよう」と言った意見が異なる年齢層から出された。
参加者のアンケート結果(抜粋)
参加者に対するアンケートから、「こころの語り場」に対する「期待」と「気付き」の項目を以下に列挙します。
【期待】
多くの世代の交流
少人数でのグループワーク
色々な人が集まって一つのテーマから様々な意見が出て面白くて楽しいので、いい思い出になります。
何か発見があればよいと考えています
自由な心の開放が産まれると楽しいと思います
自分の心を見直したい
生きていくヒントが得られてよかったです。
時間の延長
【気づき】
多様な考えをまなぶことができた
新たな発見、気づきがありました。
一つの文章でも、読み手によって意見が変わること
人によって捉え方が様々で、興味深かったです
自分探しって、ソフィスト!
多世代、偶然の出会いがすごく良いです。
若い世代もしっかりした者も、発表能力がある。
ダイアローグの時間、話し合いの腰を折る人がおり、少し残念だった。
自分自身をあらためて見直すことができた。
コーディネータによる総括コメント
参加者アンケートにもあるように、多世代間の出会い、意見交換は好評であった。その意味では所期の目的はある程度達成できたと考えます。同じエッセーを読んでも、それぞれの参加者によって多様な意見があることは、参加者各人が強く感じて、他人の意見に触発された部分も多かったと思います。
プレゼンの経験が多いか、少ないかによって、年齢層の差が現れるのは仕方がないと思いますが、若い人たちはその年齢に応じて、(余裕が有るか無いかは別にして)良いプレゼンを行っていたと思います。
プレゼン時間が短く、突っ込んで議論をすることができなかったことは、今後の検討事項として残りました。いただいたアンケートのご意見も参考にして、今後の企画を考えていきたいと思います。
今後の展開について
今年度開催した第1回および第2回の「こころを語る会」の実施結果を踏まえて、2~3月に「第3回こころを語る会」を企画したいと考えている。
参加人数が多いと十分な意見交換ができないという難点もあるが、どのような時間配分が良いのか、もっと議論して準備を進めたい。
参加者の新規開、開催日程の調整、テーマの絞り込みを綿密に行い、次年度に繋がるような企画を検討していきたい。
「心理学ミニワークショップ」
宇部フロンティア大学の三島准教授が、「こころを語る会」の内容に合わせて、“レジリエンス(しなやかな心の強さ)”をアップするワークショップ、マインドフルネスのワークショップを行った。
人生の満足度を曲線に表し、こころが折れかけたり、躓いたりしたときに、どのように立ち直り、頑張れたかなどを振り返った。その時々で自分で頑張ったこと、工夫したこと、周りに支えてもらったことなどを思い出し、自分自身の持つレジリエンスを確認し、強化を試みた。また、思い出した過去に対しては、タイムマシンに乗ったつもりで、その時の自分の側にイメージの中で寄り添い、「がんばったね」「大事だよ」などコンパッションを送り、過去を癒すことを試みた。
マインドフルネスのワークショップでは、呼吸や身体の気になる場所に意識を向けて、自分の中で何が起こっているのか肯定的に観察し、受容し、コンパッションを向けた。自分の大事なことに気づく、自分を癒す等の効果が期待される。
謝辞:会場提供など多大のご協力をいただいた宇部フロンティア大学様に深謝いたします。
報告者 :
薄井 洋基 (神戸大学名誉教授・うべ環境コミュニティー理事
三島 瑞穂 (宇部フロンティア大学准教授)
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