広島県の海岸漂着ごみに関する詳しい調査結果が公表されていました。
2023年03月28日
2018年度から2019年度にかけて広島県が海岸漂着ごみに関する詳しい調査を実施し、2020年2月にまとめられている報告書「広島県海岸漂着物実態調査」から参考になる部分を一部を紹介させていただきます。調査は復建調査設計に委託して行われています。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/395551.pdf
まず、写真撮影による外観調査ですが、実に135箇所の海岸について、春夏秋冬の4回の調査が行われています。
左表に示すように海浜のごみのたまり具合の外観から12段階の評価ランクに分け、右上の図に春期の結果を例示しています。
右下は山口県に近い西部区域の宮島を中心とした四季の結果を示しています。
左の表は、示されている区域別の評価結果と評価基準に基づいて、区域別の総合評価点を試算してみた結果です。
西部区域91、中部区域10、東部区域15という評価になりました。
山口県に近い西部区域が他区域に比較して非常に漂着ごみが多いと言うことが分かります。
次に、10箇所の海岸については、やはり四季にわたり詳しい分別調査が行われています。
漂着ごみの分類は右表に示すように36種類に分けられます。
調査された海岸は図に示される西部区域6カ所、中部地域2カ所、東部区域2カ所です。
同報告書では、2016年年度調査での換算ゴミ重量は海域別で西部2823kg,中部 425kg,東部 262kg であったこと、ただし,組成調査の精度を補完するため,各海域最低でも2地点を選定することとし,各海域のゴミ組成詳細調査地点数は西部:中部:東部=6:2:2 としたことが記されています。
右下には四季の調査時期が示されています。
海岸漂着物組成調査の方法については、同報告書で以下のように記述されています。
「海岸の中で漂着ごみの分布状況が代表的な箇所に海岸線延長 10m幅の調査範囲を設定し、調査範囲内のごみを全て(竹や流木等の自然物及び長辺 1cm 未満の小片は除く) 回収した。回収したごみを持ち帰り、分類表に従い分別し、各分類の重量及び体積を計測した。」
細かいごみの分別結果に入る前に、四季の平均値として、ごみ全体の重量と体積と、発泡スチロールのフロートが占める割合を次表に示しています。
発泡スチロールのフロートは、広島湾等のカキ養殖で、スペーサーとして使われているパイプとともに、養殖筏等に使われているようですが、同報告書では、以下のように扱われています。
「発泡スチロール製フロートは区分したそれぞれの範囲内の個数を把握し、評価ランクに反映した。(俵状の発泡スチロール製フロートが形を留めた状態で漂着しているものを計数し、およそ半分に割れているものは 0.5 個として計数した。)・・・なお発泡スチロール製フロートは、平成 28 年度調査で実測した結果より、重量は約 6.75kg、体積は約 366L」
10海岸の調査結果から、単純平均した発泡スチロール製フロートの割合は重量で21%、体積で36%に上ります。
最後に、35種類分別による結果について、貴重なデータなので、解析を試みましたが、その他という詳細の分からない項目が7項目あり、プラスチック以外のロープや漁網という項目もあり、途中で断念しました。
次図は同報告書からそのまま四季平均として重量と体積について、区域の全海岸について推定された値を、そのまま紹介させていただきました。
全体に西部区域の影響を大きく受けて、広島県全体とすると、重量で52.2 トン、体積で1507m3、そのうち発泡スチロール製フロートが重量で42.8%、体積で78.4%を占めています。カキ養殖パイプは重量で23.3%、体積で4.2%です。
ペットボトルは重量で13.2%、体積で9.0%、その他プラスチック重量で4.7%、体積で3.5%となっています。
山口県の宇部周辺でも、発泡スチロール製フロートやカキ養殖用パイプ、ペットボトルは横綱格の漂着ごみです。
広島県漁協はカキ養殖パイプを搬入すれば、購入するという体制をとられているようですが、フロートの管理を含めて、もっと規制を本格化すべきであると思います。
なお、広島県環境保全課の文書には2018年度~2021年度にかけての同調査結果から、県全域の漂着物重量推定値の変化のグラフが示されています。
(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/487640.pdf)
これによりますと、EPSフロートはあまり減らず、カキ養殖用パイプは減少傾向にあります。ペットボトルの量もかなり減少傾向を見せていて、広島県の努力、それを反映した市民を含めた清掃活動の効果や、搬入されたパイプの買い取り制度の効果も現れてきているようにも思われます。
(文責:浮田)
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