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2020年度第5回ESD研修会「協力」から「協働へ」今求められる学校・家庭・地域の連携

2021年03月16日

 遅くなりましたが、1月30日に行われた2020年度第5回ESD研修会の報告です。

話題提供は、上宇部中学校校長の藤井一憲先生です。藤井さんは中学校の英語の教員として、主に山口市内の学校に勤務した後、国の派遣事業で宇部市の姉妹都市であるニューカッスル市の高校で約2年間日本語を教えられたとのこと。その後、社会教育主事として、長門市教委や県教委で国際教育や地域連携教育に長年携わられ、上宇部中に赴任する直前までは、県教委義務教育課で地域連携教育推進班の班長を務められていました。
 講演の後は、当初話題提供をお願いしていた宇部市教育委員会松岡学校教育課長と松本コミュニティ・スクール推進課長を交えて、パネルディスカッションを行いました。

 今年度は、ブログの整理が大変滞っていて、第3回、第4回研修会の報告もまだできていない状況です。上宇部中学校の取り組みについてはこれまで、二度伺ったことがあります。http://ubekuru.com/blog_view.php?id=4036
http://ubekuru.com/blog_view.php?id=5548
前者は仲介役としてのお話、後者は地域の側からのお話でした。

 今回のご講演は非常に資料も多く、内容に富んだものでした。理解不足もあり、ブログで伝えきれない部分があると思います。可能であればYoutubeでの紹介も考えたいと思います。

 まず、子ども達を取り巻く社会環境として、①グローバル化、情報化等により、変化が激しく予測困難な未来、②新型コロナウィルスの影響で、だれにも正解がわからない時代を上げられた。子ども達の65%は大学卒業後今は存在していない職業に就くとも言われる。そして、今後、社会において求められる能力として、①答えのない課題に最適解を導くことができる能力、②分野横断的な幅広い知識・俯瞰力をあげられた。

 改訂された学習指導要領にも、社会の激しい変化の中でも何が重要かを主体的に判断できること、多様な人々と協働して、新らたな価値を創造していくことができること、複雑な状況の中で、目的を再構築することができることの3つの視点があげられていることを紹介された。まさにESDで育みたい力であると言える。

 実際、大学入試でも、これまでの学力評価だけでなく、主体性、多様性、協働性の経験を書かせるなどの動きもみられるようである。
 
 なぜ学校・家庭・地域は連携しなければならないのかというのは、2006年の教育基本法の改正で位置づけられたものであり、今後、社会において求められる能力を育むためには社会総がかりで子ども達の育ちや学びにかかわることが必要であるとされた。

山口県はコミュニティー・スクール(CS)の先進県であり、他地域からの問い合わせも多いが、開かれた学校からさらに一歩踏み出し、地域と一帯となってこども達を育む「地域とともにある学校」へと転換する有効なツールがCSである説明しているとのこと。

 ちなみに、ここ数年の推移のグラフが示されたが、CSの効果か、山口県では全国平均より自己肯定感では3.2%、地域行事への参加では8.9%高くなっている。また地域貢献に対する意識も3.7%高くなっている。ただ、山口県の小学校と中学校を比較すると、74%と60%と中学校はかなり低くなっている。この意識を向上させるには、教員による価値付けや、地域行事へ参加した子ども達への地域の人からの声かけが必要であるとされた。

 平成29年の社会教育法の改正によって、それまでの地域は、「学校がめざす子どもの育成に協力する」立場から「地域住民その他の関係者が学校と協働する」体制整備を行う必要性が盛り込まれたようである。

 協力する、協力してもらう、の関係ではなく協働の関係に持っていくための一つの方法として、生徒自身が企画を考え、それを学校運営協議会で議論することで生徒達の意識も変わってきたそうである。

 山口県では、➀グランドデザインで、どんな子ども達にしたいか、めざす資質能力を整理し共有する。②CSの仕組みを活かした評価・改善、③生徒を主役にしたカリキュラムマネジメント により社会に開かれた教育課程の実現 を奨めている。
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a50900/cs01/cs01.html

 また、2020年度の新学習指導要領では、その前文に「よりよい学校教育を通してよりよい社会を創る」という理念を、学校と社会が共有し、社会と連携・協働しながら未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む「社会に開かれた教育課程」の実現を重視することが明示されているようである。https://manabi-mirai.mext.go.jp/torikumi/chiiki-gakko/
 下の図は、そのイメージとして、「社会に開かれた教育課程」の実現のためのコミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進 を示すものであり、学校側からみると、地域の団体は多様であって、それらのネットワークを形成してもらい、一体的にコーディネータの役割を担ってほしいという期待の表れであろうか。

「上宇部中学校区のこども達の育ちを地域ぐるみで見守ろう」というキャッチフレーズを掲げ、めざす子どもの姿として、「夢・絆・志 ふるさとを愛し、ふるさとの未来を創る子どもの育成」を上げている。
図中、夢たまごネットというのは、上宇部中学校区の3つの小中学校の連携した、地域教育ネットである。
SDGsのアイコンとのつながりに関しては、学び続ける(SDGsのアイコンNo.4)、地域をつくる(同No.11、住みよい環境をつくる(同No.12)、人とつながる(同No.17)を重点として取り上げている。これらに・・・できたか?をつければ、それがそのまま評価につながるということであり、PDCAが回りやすい。そのために学期ごとに、生徒に学校アンケートをとっているとのことである。

具体的にどうするのかについては、小中学校合同のあいさつ運動、地域の公園清掃など子ども達の提案とのことである。「あ・そ・べ・ぶ・ち」のそれぞれ、挨拶・掃除・勉強・部活・地域貢献を意識した表現も生徒会のこども達の発想である。また、地域とのつながりについても、生徒達がSDGsとの関係を整理した地域貢献カレンダーが紹介された。

 最後に上宇部中学校の「社会に開かれた教育課程の実現」をし、さらなる飛躍を図るための方法として、以下の2点を上げられ、
①グランドデザインを活用した評価改善サイクル~生徒を主役にした新しい時代の学校運営協議会のスタイル~
②SDGsでつなぐ上宇部の子どもの学びと育ち~高校との学びの連続性を意識した宇部市ならではの「串」の活用~
 ①についてはSDGsを活用することによってカリキュラムマネジメントを行うとされた。すなわち、
・教育課程全体を通じて、教科横断的にSDGsを横串としてつなげていくこと、
・小学校中学校の学年について、SDGs」を縦串にしてつないでいくこと、さらに
・地域との協働活動についてはSDGsを斜めにつなぐ串として考えるということであった。、
 新年度の教科書にはSDGsのアイコンがすごく多くなっているそうである。

 宇部市教委でも小中学校のカリキュラムについて、関連するSDGsの目標ごとに整理する作業が進められいるようである。上宇部中学校の場合は、宇部高校探求科との連携も考えているということである。
 地域貢献については生徒達が提案した斜め串の活動も実際に採用され、実施されているとにうことであった。

 最後の写真はある学校の運動会で、先生、親、地域の人の騎馬に子どもが乗っているもの。後でこの子どもが馬になって、地域の人に乗って下さいと言ったそうである。

 質疑: 
○上宇部中学校のケースは模範になると思うが、もう10年くらい取り組まれているのか。
他校へどう拡げていくのかも課題他と思う。
→師井前校長時代6年を含めて、今年度で7年目である。来月、上宇部中学校区の地域協育ネットでも話をするように言われている。教職員には、研修会で何度もこのような話をしている。地域の理解は十分進んでいると思う。今回のように市教委とも一心同体で連携している。

(その2)に続く

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