「多世代の市民を巻き込む企画の工夫」 山本安彦さん 続報です
2020年03月29日
ディスカッション
〇 このまちなか環境学習館にも、環境関係の図書もあるし、昨年からまちかどブックコーナーも設けられている。いわば、ミニミニ図書館のようなものだが、残念ながら勉強部屋の提供に終わってしまっている。今日の話は参考になった。
〇16名の職員でこれだけことをやられているのは率直にすごいと思った。下関の図書館の館長さんお話を一度聴いたことがあるが、この方もしっかりした理念をもってられた印象がある。
→西河内館長は2018年度1年間、その後津館長も1年足らずで辞められた。もったいないと思う。
〇「スポーツと文化」が同じ部署で扱われる傾向があるのもどうかと思う。文化政策は別で、しっかりしなくてはならないのではと思う。ぜひこういう活動を長く継続してほしいと思う。
→ 契約では来年度まで。あまり長くてもよくないと思う。いずれにしても図書館は、学校と社会、市長部局を融合できる存在として、いいポジションにいて、いろんなことができるところである。
〇宇部市では学校図書館には学校司書がそれぞれいると思うがどうなのか。
→山陽小野田市は2,3年前すべての学校に学校司書がいたが、今は複数校掛け持ちになっている。山口市も2校掛け持ちで、専任の市は少なくなっている。ただ、学校司書の場合は司書の資格がなくてもなれるようになっている。少なくとも研修が受けられるようになっていないと、実務がうまくいかないのではないかと思う。山陽小野田市では学校教育課が音頭をとって毎月のように研修を実施している。ただ学校司書の人はみんな非正規職員だと思う。
〇平成19年度に図書館・公民館9割カットというのがあった。それから徐々に回復して今8割くらいまで回復していると思う。図書購入費は、山陽小野田市は就任時150円くらいだったが、220円くらいまで回復しているが、県下では低い方。下松市は最も高く、2倍以上ある。山口、岩国、萩がそれに次ぐ。
宇部市はトキスマの利用について図書館がどう絡むのか、難しいところ。コミュニケーションの場として考えられているんだろう。きちんとした方針が重要だと思う。宇部市の場合は正規の司書が一人もおられない。それが弱い所かも。
〇これだけ色々やられていて驚くが、それをどう評価するか、将来の展開に活かされて行こうとしているのか。
→利用者の層が多彩になったといわれている。人との出会いや会話が生まれたり、色々な展開が図れるようになってきている。他の職員にとってもコミュニケーションが増えてきたと思う。参加者であった人が、自分の体験の話をする立場になられた例もある。そういう人の動きにつながっていくことが大事。
〇本を読んだ感想を聞いて、それぞれ受け取り方がちがうことで、立体的な組み立てができるというようなことがあるのかなと思うが。
→読書会がきっかけとなって、その著者についてもっと知りたくなったりすることもある。FMサンサンきららで読書部というのがあって、図書館とつながりを持って、私も毎月話したりしている。昨日行った民間の店では2か月に1回読書会をされていて、本をどういう風に読むかとか、どんな本を読むといいかとか知りたいという人も来られている。徐々にそういうつながりも出てきている。
〇小学校で長く教員をしている。ここ5年間くらいでずいぶん子ども達が変わってきたように思う。家庭でも親も忙しくなり、大人と話す機会が少なくなっている。ネット、テレビ、Youtubeで情報を得るこが多くなっている。その中でものの考え方が、ゲーム感覚的になってきている。発達障害の子供達も多くなり、今まで通りの教育方法では行かなくなるように思う。本を読むことの重要性についても認識して学校でも読書の時間を設けるなり、いろいろ工夫をしてきている。
本を通して知識を得るために、週3時間ほど、昼休みがあって、掃除があって、その後5次元の前に10分ほど読書の時間をとる。また、5,6単元ごとに市販のテストをするが、終わる前の25分ほど読書の時間を取っている。
学校図書館の管理も少し前は教員が司書の資格を取るなどして兼務していたが、とても回れないので、今は教員免許はないが学校司書の方がやってくれてずいぶん楽になった。
10歳くらいまでの間に本を読む習慣をつけさせたい。宇部の場合は市立図書館から青空号が年3回まわってきて、本を2冊借りることができる。1冊は字が主体の本、1冊は特に制約を設けないようにしている。
→幼児期がとくに大事だと思う。(幼稚園への出前図書館は毎週実施されている。)就任した当初ある中学校が授業が成立せず荒れていた。相談を受けて、毎月、彼らの心に届くような本を持って行って読んでもらうことを2年間続けた。そうするとずいぶん状況が改善されたことがある。
〇昔、本が好きでよく図書館へ行った。知識を入れて、過去を勉強するだけではなくて将来を考えることが大事だと思うが、今は効率を追求しすぎて、視野がせまくなり、どう生きるのかといったようなことを考えなくなった。昔は図書館には専門職の人達がいて、色々なことを教えてくれた。最近、言葉が軽くなってしまっていたり、あまり話さない子ども達もいる。図書館で、一般の言葉をきれいにわかりやすく話すかといったことも図書館で、身につくようなことはできないかと思ったりする。
→表現力という点ではビブリオバトルがあり、5分間で本の魅力を語るプレゼンテーションのやり方を競うこともやっている。それから、非正規の職員の場合は経験が浅くなりがちなので、期待に十分答えられないことが多い。経験豊かな司書がいることが大事だと思う。
〇小野田の図書館の場合、16名のうち何名が正規職員なのか。また人件費含めて予算はいくらか。
→正規が4名、非正規が12名です。1億円弱です。そのうち人件費がかなりを占めている。
〇学校の場合、正解があることを教え、生徒たちは正解を覚えてしまいがちだが。正解がないことを考える力を養うことが大事だと思う。多様な考え方を出し合い、考える場が必要だと思う。学校では難しいかもしれないので、図書館がそういう役割を担えないか。
→その通りだと思う。そういうことを考えてみたいと思う。
〇大学生を見ていると、指示を待つタイプが多く、主体的、積極的な姿勢が十分でないと感じる。幼少期が大事だと思い、プレーパークで子どものそういう力を延ばす試みをしてきているが、子ども達は自然にすごい力を発揮してその期待に応えてくれる。大学でも IT系の人達は結構自主的に作っていく能力を持っている。彼らはどんどん仲間どうしで教えあったりしている。4年間そういう授業をしてきたが、学生同士の引継ぎもできてきているようだ。就職したらまt上の方から言われて、普通のモードに戻ってしまうかもしれないが。このESD研修会もそういうことを目指しているんだと思うが、発達障害に対してもどうするのかとか、もっと大学としても考えていかなくては思うし、今日の話を言いて、図書館とのリンクもいいなあと思った。
→図書館の可能性も限りなく大きいと思う。それをどこまでやっていけるのかを考えていきたいと思う。
お話をお聴きして、この山陽小野田市の図書館での取り組みは、世界的に見ても誇れるレベルではないかと思いました。ぜひこの伝統を引き継いでいただきたいものと思います。
当初、ESD研修会のまとめと反省会に見合ったテーマかどうか、すこし心配もあったが、最後はESDの在り方そのものの議論になり、大変有意義な議論ができたと思います。
また、山陽小野田市図書館で取り組まれている多世代の市民を巻き込む様々な工夫は、まったくスケールやレベルが違いますが、まちなか環境学習館の運営方法についても大きなヒントや刺激を受けることができました。
Youtube録画のURLは以下の通りです。
Part1 https://www.youtube.com/watch?v=n_yLsirA7uw
Part2 https://www.youtube.com/watch?v=rhNS58D6hPo
Part3 https://www.youtube.com/watch?v=K5jtr5wjSyg
Part4 https://www.youtube.com/watch?v=kvurZpQnNpc
お話しいただいた山本安彦館長に感謝するとともに、館長はじめ同職員の方々のご努力に敬意を表します。 (文責:浮田)
以下は、参加者の一人から、お寄せいただいた感想です。
「多世代の市民を巻き込む企画の工夫」を聴いて 溝田忠人
事前の案内には副題に~図書館を人づくり・まちづくりの核に~とあった。お話の内容は正に、地方自治体の図書館として、このタイトルの豊富な取組であった。まず、公共図書館のあるべき姿を洗い出し、分析し、子供の読書活動を推進する計画を5項目:
1)マタニティーから始める切れ目ない活動推進、
2)「科学」を柱にした子ども読書活動、
3)学校図書との連携、
4)読書ボランティアへの支援と関係機関との連携、
5)司書の研修、学校司書のスキルアップ、と掲げた。
これに基づいて「サイエンスカフェ」、「マタニティーブックスタート」、「子育て絵本カフェ」、「持ち寄り本カフェ」、「随筆カフェ」、「音読茶房」、「ぬいぐるみとしょかん おとまり会」、「夏休みさよならイベント」、「多言語によるおはなし会」、「児童文学わいわい講座」、「読みきかせ絵本を楽しむ会」、「出前学校図書館」、「市内中・高校生によるおすすめ本の展示」、「「科学」がテーマのスポット展示」、「図書館フェスティバル」などの実に多様な取り組みにより、山陽小野田図書館への市民の関心を高めてこられた。
職員16名うち正規雇用職員4名という人員で、これだけの規格を実施されて来たことに頭が下がる思いであった。
印象の深かった取り組みをいくつか挙げると;
図書館に子供のぬいぐるみを預かって一泊させ、そのぬいぐるみが夜の図書館で本を読む姿を撮影しSNSで発信するなどして、子供が泊まれない図書館で仲良しのぬいぐるみにおとまり体験を託し関心を高める
;色々な外国語で絵本などを読み聞かせる
;高校生によるおすすめの本の展示;フォーミュラーカーの展示・体験中学校に出かけて校内放送を使って本を読む
;市内外の作家・専門家や芸術家を招聘してのイベント
;図書館をお化け屋敷にする;合コンを図書館で行い実際にカップルが生まれた
;お手玉の上手な方を講師に子供にお手玉を習わせる
;アイリッシュハープコンサート;などなど魅力的な取組が紹介された。市の文化醸成の中心という自覚に基づくとはいえ、これだけの規格を実現するパワーに敬服するばかりである。
近年、外部企業に委託した図書館が増えているが、図書館など文化施設の意義は、単なる年度財政収支の負担で見ていては、評価されることは無いだろう。この子らが、子供の頃にかかわった思い出を糧として立派な人材に育って初めて分かる意義である。そういう長い目で見た意義が近年は軽視されがちである。しかし、この評価は難しくどうすれば地方自治体の首脳部や議員に理解してもらえるか分からない。このような図書館の活動が30年くらい続けば、例えば「故郷納税」に市立図書館への寄付の項目を加えれば結果が表れるかもしれない。
山本館長は7年間在職されているそうである。これは異例に長いことのようだ。司書にかかわらず専門職は長く地域とかかわってこそ本当の力が出せるはずである。現在では学校司書も減らされ、多くが2校掛け持ちないし司書の資格のない非常勤職員である場合が多いとか。こういう現状からも地域の活性化が長い目で見てじり貧になって行く原因を作っているように思えた。
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