12月21日、第5回環境サロン「高度情報社会への人間の適応について」小柴満美子先生がありました。
2019年12月23日
小柴先生は、2016年2月から山口大学大学院創成科学科準教授として、ものづくり創成センター副センター長も務められています。1985年3月に武蔵野音楽大学音楽学部ピアノ科を卒業されましたが、その後方向転換され、ものづくり、エンジニアを目指して三鷹光器に弟子入り。この会社は、人工衛星に搭載するX線望遠鏡や医療用機器などを開発する精密機器メーカーで10年間ほど勤められました。その中で、脳の中の美しさや無限の広がりに惹かれる一方で、さらに分子レベルで見ていく必要性を感じ、東京農大学工学工学部生命工学科に1998年4月一年次から入学され、2001年3月卒業、2002年3月大学院修士課程修了、2005年3月大学院博士課程修了まで飛び級を含め、基礎を固められたようです。これだけ見ても異色の逸材であることがわかります。
話したい話題を挙げられたが、とても1,2時間ですべて話せるものではないので、大事な点の一つとして、何度でも再挑戦する社会、リカレント教育大学の取り組みについて、短く紹介された。人間は歳をとると、自分で限界を設けがちであるが、本来は、母親の胎内にいるときから、死ぬ瞬間まで、ずっと環境とコミュニケーションをとりながら、成長しつづける存在であるという考えを普及すべく、その創設を大学執行部に働きかけているとのことです。リカレント教育大学は大学としても少子高齢化社会の中で、社会の活性化、生き残りのために多くの大学で進められているもので、山口大学においてもすでに、山口ファイナンシャルグループと連携して2019年11月から、次世代経営を学び、未来創造を応援するどちらかというと中小企業を主対象としたプログラム「TSUNAGU塾」がスタートしています。
小柴先生は、生涯教育を科学的根拠に基づいて充実したものとしていくことに、一番の関心をもたれているようです。一昨年より、宇部市公園緑地課の受託事業として、子供が遊び学ぶ環境づくり、自分の責任で自由に遊ばせる「うべ版プレーパーク」
https://www.city.ube.yamaguchi.jp/machizukuri/toshikeikaku/kouen/playparkkaisai/index.html#a_20191001も始められ、活発な活動が展開されています。
また2016年度から始まり4年目の次世代人財育成「テクノロジー×アート チャレンジ講座」にも参画されています。
https://www.city.ube.yamaguchi.jp/machizukuri/sangyou/shougyou/charennjikouza2018.html
市内外国内から有名な講師の話が聞けます。たとえば、人の感性と脳の関係を追及して、居心地のよさや操作性を考えるマツダの研究者やチーフデザイナー、電通で五輪誘致に導いた人、ときわファンタジア(http://tokiwa-fantasia.com/)にかかわったチームラボの人たち、建築デザイナーの方々など。
こういった活動のプラットホームをつくり、宇部から国際的に広げていきたいという思いから、昨年国際行動ストレス学会を開催したが、広報不足もあり、残念ながら参加者は少なかったということです。
また、プレーパークは、所属している、こども環境学会(仙田満理事長)の実践活動として位置づけられているようです。こどもたちが複雑で厳しい屋外の自然環境で、独立した人格を認められると、例え危険な目にあっても、自ら考え困難を乗り越え学んで行くことができます。
以下、これまでやってきた研究の紹介を、誤解もあるかもしれませんが、かいつまんでお伝えします。
人間の脳は、身近な環境、地球の自転、公転、太陽の活動、宇宙の電磁波等々の影響を受け、年齢とともに成長していくわけで、生活のリズムが乱れれば、当然精神的、肉体的な影響を受ける。この影響を子供から高齢者まで、連続的に見てみようとするものである。
埼玉医科大学では小児科に属しているが、早産で生まれた赤ちやんを集中ケアの保育器でモニタリングしながら、条件と整えて正常に生育させることを助ける技術の研究開発もされているそうです。
ときわ公園イルミネーションフェスティバル「TOKIWAファンタジア」で出展した大学生が自分たちで作った作品をある高齢者施設にもっていって、ITも使いながら説明したり、コミュニケーションを持ったところ、高齢者の方々は単にきれいだとか言ったほかに、明日何をするかという意欲がわいたという効果があったとのこと。
生育段階で、どのように発達していくのかを知らなくてはいけないし、あまり途中を分割して詳しく見るだけでなく、連続的に総括して、把握することが大事だと思うとのことです。
人類の脳の容量は、徐々に増えてきている。横軸の時間が長いことに注意が必要であるが、2回ほど、減少した時期がある。これは大きな隕石の衝突があり、気候が変化した時代に対応すると考えられ、しばらくすると、また増加していくといった傾向がある。
室内の作業環境を例えば、冬季27℃に設定すると、気持ちはいいが、ダラーっとしてしまって創造力は低下する。19℃に設定すると、やや快適性が落ちるが、創造力は良好である。成長期にある程度ハングリー精神を経験させる方が、よりよく成長できることを示唆する結果が得られている。外気温を考慮しながら必要最小限の環境設定をすることでより良い進化を促す可能性があり、これらもIoTやICTを活用できる可能性を示しているといえるということです。
このように適度のストレスがあった時のほうが免疫力が高い、大きな仕事が終わってあー終わったと思ったときに風邪をひいたりする。
今は90%近く屋内で過ごすことが多くなった。寿命が延びたといういい面もあったが、宇宙環境の影響には弱くなっているかもしれない。
厚生省の「軽度発達障害児に対する気づきと支援のマニュアル(H19)」によると、およそ10%弱の軽度発達障害児の出現頻度である。またH9年とH15年の年齢別自殺率のグラフを比較してみると、おおむねH15年の方が高めであるが、男性のほうが女性よりも高く、また増加傾向もより顕著である。男性の場合、55~60のリタイヤ前と90以上で高くなっている。自閉症の発症率も男性のほうが女性の5倍多いそうである。どうも遺伝子的に男性のほうが精神的に弱いようである。鬱は最近はよい薬物療法もあり、うまく療育環境を整えることによって完治するといわれているが、発達期に発症しする発達障害については残念ながら完治しないといわれている。
戦争経験や、震災や犯罪などによる非常に大きなPTSDの場合は遺伝子が修飾されてしまうことが知られている。
また、脳の神経免疫と腸内細菌が関係していることも知られるようになり、その細菌は空気中を伝搬するので、地球環境とも関係することになる。
いずれにしても、人間の脳は非常に多様な環境情報を総合的に評価し、生育していくもので、量子コンピューターも話題なるが、維持管理が大変で、ほんとうにすごいものだと思う。人間の脳とITをいかに相乗的に活用するのかということが大事だということか。
社会的と物理的な外的環境と栄養環境の影響について、動物実験でやった例をいくつか紹介する。
まず、夜と昼のリズムを乱した場合の精神に対する影響をサルの動物実験で見たものである。ずっと明るいところで過ごす、あるいは、ずっと暗いところで過ごすサルの行動や感情の反応をモニタリングして多変量解析を行うと、 X軸に活動、Y軸に好き嫌いの感情に関連した傾向が得られた。Z軸は年齢の軸であり、これらの傾向を連続的に見ていくことで、環境因子の影響を明らかにできるというものである。ずっと明るいところで過ごすと、多動性、いらだちなどの傾向を示すことがわかった。
次に、それぞれの環境影響が成長時期のある時期に特に高感度に影響し、またその影響が固定したり、高齢期になって発現することにも注意する必要がある。例えばピアノの学習などは3歳までで、固定するとか 、(次につづく)
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