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北九州大学の松本亨先生から紙おむつのリサイクルの環境保全効果についてお話を聴きました。
2017年01月19日
1月14日に北九州市立大学の松本先生においでいただき、紙おむつのリサイクルによる環境保全効果、南筑後地域における廃プラスチックリサイクルの動き、これらに関連したリサイクルが高齢化社会にどのように受けとめられているか調査された結果などについて、詳しくお話ししていただきました。
環境衛生工学の分野では、単に水や空気をきれいにしたり、ごみを処理したりする研究のほかに、システムを総合評価する社会経済学的な環境システム研究も非常に重要だと思いますが、松本先生はその分野の数少ない研究者の一人です。
2015年の紙おむつ生産枚数は乳幼児用150億枚、大人用70億枚あわせて、220億枚弱である。2009年までは、乳幼児用はやや頭打ちの傾向を示していたが、その後また急速に増加している。大人用は少しずつ増加しつつある。
ちなみに日本衛生材料工業連合会の資料によると、紙おむつ1枚あたりの重さは乳幼児用で39g、大人用で59gである。http://www.jhpia.or.jp/pdf/news48.pdf
松本先生の示された組成は、パルプ70%、プラスチック20%、高分子吸水材10%です。
近い将来、もやせるごみに占める紙おむつの割合は15%を超えるのではないかとも言われている。仮に、生ごみの分別リサイクルが進んでいけば、この割合は30%を超えることになります。
なお後の質問にあった、生理パットは含まれていないが、同年におけるその生産枚数は754億枚です。
大木町では、60カ所に紙おむつの回収ボックスが置かれていて、いつでも出せるようになっている。回収ボックスには紙おむつメーカーのロゴがかかれているが、メーカーも費用を負担しているためであるそうです。
大木町における、家庭からの紙おむつの回収率は76%と推定されています。
後で説明されたアンケート調査の結果では、この回収システムに対する評価は高く、多くの利用者が、収集日を気にせずにいつでも出せること、家の中で臭いを気にせずに済み衛生的になったと肯定的な評価をしています。
下の図では、家庭からの紙おむつの量よりも、病院、介護施設からの紙おむつの量の方が40倍以上になっていますが、これは現在トータルケアシステムに集められる割合を示していて、まだ家庭からの紙おむつを分別収集している自治体がほとんどないため、必ずしも両者の割合を示しているものではありません。
紙おむつリサイクル工場の見学時の記録は、簡単なものですが、以下のブログに紹介しています。 http://ubekuru.com/blog_view.php?id=4256
この図は、評価したいシステムと比較対照としての同等のシステムの比較をする場合に、共通した機能の部分について、CO2排出量の算定がやられました。
ライフサイクルインベントリ分析という方法ですが、たとえば、評価対象でプラスチック部分のRPFとしての利用に対応する比較対象では、石炭の利用を対応させる。
また、排泄物由来の脱水汚泥の肥料として利用は、同じ窒素量の化学肥料に対応させるといった方法です。
RPFと建材への利用と擬木と建材への利用の両ケースとも、現状の焼却処理(比較対象)に比べ、リサイクルシステムの方がCO2排出量が1千トン/年以上少ない結果が得られました。
この要因として、RPFの燃料利用による石炭代替分による部分の寄与が大きいとされた。また、分別収集による燃料消費の増加はさほど大きくないということでした。
後の質疑では、コストの比較はどうなのでしょうかという質問がありました。明確な答えはなかったですが、たしかにまず重要なことであると思われました。
松本さんは、リサイクル工場を運営するトータルケアシステムの依頼でこの計算をされたとのことですが、このデータは紙おむつメーカーがカーボンオフセットとして利用する上でも役立つということでした。
紙おむつのリサイクルが他地域でも可能かと言うことに関しては、回収ボックスが置けるかどうかも大事で、収集によるCO2の増加はさほどではないが、コスト面は問題になるだろうとのことでした。
20年以上前に、城田久岳さん達と、「紙の生態学的適正価格に関する研究」を手がけたことがありますが、生態系に迷惑をかけないように紙を生産し、消費し、廃棄すれば、価格はいくらになるだろうかという研究です。
我々がどんな環境にすみたいのか、その目標が高ければ高いほど、紙の価格は上がります。その上で、価格と利便性を天秤にかけて紙の消費をすべきであるという考え方で、快適性、利便性の高い、紙おむつの使用も、環境外部費用を内部化して、適正な値段で使用すべきなのだと思われます。
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