環境サロンを軸とした環境教育(CS-ESD)の推進
2016年03月13日
日本学術会議環境学委員会から早川先生を通して、環境教育に関する原稿を依頼され、短文を書きました。銀天エコプラザ指定管理の第2期に向けての思いをまとめました。そのまま採用されるかどうかはわかりませんが、ご参考になればと思い、全文を掲載します。皆様におかれては、今後ともどうぞよろしくご支援のほどお願いいたします。
まちなか環境学習館における環境啓発~環境サロンを軸とした環境教育の推進について~
特定非営利活動法人うべ環境コミュニティー理事長 浮田正夫
1.はじめに
筆者は山口大学で38年間、環境衛生工学の分野で教育研究に携わり、引退後はNPO法人うべ環境コミュニティー、宇部環境国際協力協会の代表を務めるほか、大学の非常勤講師、県市の審議会等の委員として、修士終了後、一貫して環境問題に関わってきている。
環境教育については、15年前に発足し、現在は休止状態になっている山口県環境教育学会にも関わり、山口県環境学習推進センターの所管する環境アドバイザーの一人として時々講演を依頼されたりしている。また平成23年度からは、うべ環境コミュニティーが、宇部市まちなか環境学習館の指定管理者を受けるようになり、環境学習ポータルサイト”うべっくる”の運営を含めて、環境啓発活動全般により密に関わるようになっている。
2.宇部市まちなか環境学習館について
市民募集による愛称”銀天エコプラザ”は、かつて繁栄を極めた宇部の中心商店街の組合から寄贈を受けた4階建てのペンシルビル(総面積270m2)が、宇部市の環境学習拠点の一つとして、生まれ変わったものである。(http://ubekuru.com/ecoplaza_about.php)
1階に事務所、2階に小会議室と倉庫等、3階に大会議室、4階に学習室が設けられている。
指定管理業務は、条例によって規定されており、①環境学習の推進及び情報の提供 ②市民の環境保全活動にかかる情報の発信 ③市民の交流促進及び環境保全に貢献する人材育成 ④その他(まちなかの活性化)がある。
日常的なサービス業務の主体は、学習室の提供であり、営業時間は、火曜日の定休日を除いて、9時から21時となっている。
本来の環境学習や啓発活動としては、実施してきた主なものは、
①環境学習指導者、環境関連団体、環境学習プログラムリストの整理
②宇部市環境学習ポータルサイト”うべっくる”の運営及び銀天エコプラザ通信(月1回)の発行と、各種イベント(年3回)の出展による環境啓発
③自主事業としての環境サロン(毎月2回程度)、
④まちなかエコ市場(年4回)、⑤まちなかおそうじ隊(毎月1回)
ポータルサイト”うべっくる”は、ときわミュージアム、アクトビレッジおのを含めた環境学習関連情報や環境関連団体の活動紹介などを発信している。このアクセス数を増やすことが、大きな課題の一つである。
今年度末で、第1期5年間の指定管理が終了し、平成28年度より新たな第Ⅱ期5年間が始まる。決して楽な委託条件ではないので、指定管理者の募集に対して手を挙げたのは第1期と同様、当法人しかなかった。
第1期において、当初から環境啓発のためにもっとも力を入れてきたのが環境サロンの実施であり、重要な環境問題のテーマについて、毎回10~30人程度の参加がある。しかし、ポータルサイトにサロンの内容について詳細な報告を掲載したり、動画をアップしてきたこともあるかもしれないが、次第に参加者が固定的になり、最近は出張サロンを多くするように心がけている。
3.環境サロンとCS-ESD
先述のように、長らく環境衛生工学の分野に席を置いてきたが、次第に、「技術だけでは現代の環境問題は解決できない、環境倫理の普及が重要である」と考えるようになった。 また、「環境はわれわれを取り巻く全てのもの」と捉えることにより、いわゆる狭い意味での「環境」ではなく、社会環境も含む、あるいは「モノの環境だけではなく、ココロの環境も含めて考えるべきである」というように考えるようになった。つまり、いくら大気や水がきれいでも、若い人達がしあわせを感じられないのであれば、その環境はよくないということである。
このような観点からは、この10年、徐々にクローズアップされつつある、持続可能な開発のための教育(ESD)の考え方に通じるものがある。ちょうど2年前に岡山の池田満之さんのお話を聴いて、我が意を得たりと思い、同時に、ともすれば後ろ向きのイメージのある環境教育が、こども達の「生きる力」を引き出すという、前向きの姿勢が感じられ、教育界の賛同も得やすくなるのではないかと、心強く感じた次第である。
一方、特に山口県では全国的に先駆けてコミュニティイ・スクール(CS)に取り組まれてきており、各小中学校の学校運営協議会を通して、地域の人達が学校運営に協力して、日常業務に追われて疲弊しがちな先生方を支援する動きが活発になっている。
しかし、こども達の「生きる力」を育むための学校側のニーズと、地域の人達が提供できるシーズの間のマッチングは必ずしもうまくなく、学校側、地域側の双方が、それぞれ受入体制、支援体制をしっかり整備して、どちらもウィンウィンの関係になるような、いわばCSにESDをうまく組み込めるような仕組みづくりが非常に重要であると考える。
これまで力を入れてきた環境サロンを是非、その仕組みの一環として機能させるべく、これからも市の教育委員会や各小中学校、校区自治会、環境関連団体等への働きかけを一層強めていきたいと思う。環境サロンの場が、先生方や地域のコーディネータ、ファシリテータの研鑽、交流の場になることを願っている。
また、4階で勉強する受験生に働きかけ、おそうじ隊やサロンへの参加を呼びかけ、世代間対話の機会もより積極的に作っていきたいと思っている。
蛇足ながら、筆者が、学校教育に重点を置いている理由は、従来にありがちな、一部の恵まれたこども達を対象に、充実した環境学習のプログラムを提供するより、全てのこども達の「生きる力」を育くめるような環境学習でなければならないと思うからである。
4.おわりに
筆者は、これまで環境省の事業としてこのような観点から申請を行ってきているが、2,3年連続して採用にはなっていない。その原因の一つは、納税者への説明責任を果たすために、事業の成果が目に見えることが重視され、「百年河清をまつ」ような事業は敬遠されることも要因の一つであると思う。
学校側がどうしても「学力偏重」になりがちなのも、結果がはっきりと数字で表せることと無関係ではない。しかし、地球温暖化の問題一つとっても、人間の価値観を教育によって少しずつ変えていかなければ解決できない問題であり、是非このような息の長い取り組みを支援するような社会の理解を期待したい。
3.11以来、これまでの価値観を見直そうとする動きが見られるようになっている、グローバル経済が加速され資本主義のひずみが急速に増大する中で、基本的な人間の生き方を教える、本当の意味での、人と自然の間の規範、「環境倫理」も含めた、健全な「道徳教育」が普及することを願っている。
年々、このようなボランティアに関わる人達の高齢化が進み、簡単なことではないことを痛感するこの頃であるが、もうしばらく辛抱してみたいと思う。
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