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食育に関する環境サロンの概要報告です。

2015年08月13日

「子どもの育ちを支える食育環境のあり方とは!?
~台所に立つ子どもと家族の絆をはぐくむ取り組みについて~」
池田良鶴 宇部志立市民大学環境学部三期生(元東京都教育公務員)

本年度の環境サロンのテーマの議論の時に、食の環境を取り上げてはどうかということになり、食育に関連して、自然食の店をやっている人からマクロビオティクスのお話を聴くのもいいかなとも思ったが、お話を直接2回聴講して大いに共感した竹下和男先生の素晴らしい実践を皆さんに知ってもらいたいと思い、今回はビデオも鑑賞しながら、新しい形式でやってみることを試みる。この方の考え方を伝えるということが、主な内容になる。

 「弁当の日」について、聞かれたことはないかもしれないが、竹下先生は、生きる上での時間、3つに分けて、①暮らし(主要な場として家庭)、②遊び(〃地域)、③学び(〃学校)、
 ①は一番長いし、②、③を支える土台になると言うことで1番大事な時間。
 暮らしの時間は、①家族とともに過ごす衣食住に関わる時間 いまその暮らしの時間が本当に希薄になっているのではないかと感じられる。衣食住にかかわる生活習慣が大事だが、衣の面では豊かに多様になっている。食の面ではどうなんだろう。
また、我慢する力が弱くなっており、欲求不満の耐性を身につける必要がある。

 お母さんが子どもにどう接しているか、衣食住のこと、家のことはしなくていいから、とにかく勉強をしっかりしなさい。そして人に迷惑をかけないようにしていきなさい、という方が多い。本当は人と助け合うことが生きていく上で大事。迷惑をかけ合って生きる存在であり、お互いに補い合い、支え合って、助けてもらいながら、そのことを感謝することが大事ではないかと思う。

 一方、これとは逆に放任の育て方もある。お互い言うことを聞かなくなり、もう勝手にしなさいということになることもある。昔と比べて共働きも多くなり、家庭での時間が少なくなっている傾向がある。  

 このような状況の中で、竹下先生が、「他人のことを思う気持ちが果たして育つのか」と非常に心配された。こども達は、本来は、他人が喜んでもらうことで満足感があるはずなのに、むしろ腹が立つ原因になったりする状況に危機感をもたれ、実践活動を行われるようになった。

竹下先生のお話はこれまで2回聴いたことがある。「はなちゃんのみそ汁」の紹介もさえることが多い。結婚前に25歳でガンが見つかり、結婚して、はなちゃんが生まれ、33歳でなくなる。この話を聞いて、感動し、鼻がつーんとした人、涙が出てきた人は小学生1%、中学生7,8%ということである。一方、大人の人達は大体、涙を流して感動する。
https://www.youtube.com/watch?v=Lj5cIySVLtQ

 それは何故か。小学生は興味の対象は自分だけでまだ共感脳が育っていない。大人の人には共感脳が育っている。人のことを、わがこととして思いやる力、生きていく上でこの「共感脳」というのは非常に重要である。
 しかし、「家のことはいいから、勉強しなさい」ということでは、共感脳が育ちにくくなっているんではないか。この力は自然に身につくわけではなく、社会生活のなかで自分で行動を通して、身につくことである。

 社会生活をする上で大事なこととして竹下先生は、
①他人のことを思いやる力、
②他人とコミュニケーションを成り立たせる力 
③ルールの中で幸せを実現する力
 これらを中学校卒業までに、身につけてほしいと願っている。
 そのためには具体的にどうしたらいいか。だれかに喜んでもらう経験をできるだけ多くすることが大事だが、現実は、こども達は追い立てられて、自己尊重感、自己肯定感を持ちにくい。
 いじめの加害者は、自分はいじめているつもりはないと言う。これもまだ共感脳が育ってないから。

 そういう子どもさんを見て、他人の気持ちがわかる心を育てる場面をできるだけ多くつくることを思い、暮らしや遊びの時間を少しでも充実させる方法として、「お弁当の日」を考えられた。2001年香川県滝宮小学校で始められ、2014年度末では1700校にのぼっている。2003年には「地域に根ざした食育コンクール」で農林水産大臣賞を受賞。2015年のミラノ万博日本館では「弁当の日」が紹介された。

ここで「子どもを台所に立たせよう」という、テレビ寺子屋の講演ビデオを鑑賞。https://www.youtube.com/watch?v=O9WaSyPSzOk
(以下要旨)
 17年ぶりに小学校に戻ったときに、多くの子ども達が給食をおいしそうに食べていないなと感じて、弁当を献立から片付けまで全てこども達に作らせたらどうかと言うことを考えた。こども達がなぜ台所に立ちたがるのか、そのときは何時なのかにちてお話しする。
 人の役に立ちたい、「何かやることない?」と言ってきたとき、かえって邪魔だし、「勉強していなさい」と対応すれば、折角の芽を摘んでしまうことになる。

7歳までの子どもは、周りの人のそのまままねをする。親の姿をそのまままねる。
 味覚の発達は3歳から9歳まで。この時期にぢどころに立たせた方がいい。甘い、うまい、甘さと油の味はおっぱいの味で、うまみは離乳食のだしの味。無条件に本能的にあるが、苦さ、渋さはこの時期に安全なものと認識させなければならない。ある大学で、苦い、渋いが分かる学生の割合は3割だったという。ほしがるものばかり与えていると、偏食にも結びつく。

勉強だけしていればいいと言っているとその通りになる。あまり子どもを大事に育てる、してやることが愛情だと考えていると、子どもはしてもらうことが親を喜ばすことになると思う。
 自分で調理することによって、色々なカンが育つ。失敗をすることによって大きな失敗をしないようになる。
 作ってくれた子供ほめて上げる。子どもはどんどん成長する。献立、買い出し、料理、食事、あとかたづけを覚えると、自主性が育ち、子どもを叱る必要もなくなるとのこと。
 食材の「命」に料理を作ってくれる人の「命」を和えること。それがいただきます。
( 以上要旨)

 印象に残ることとして、子どもというのは、親が喜んで自分の食事を作ってくれてないと感じること恐怖に思う。自分ガキがつかないままにオーラを発していることもある。また、お弁当を包んでないから、持って行かなかった高校生の話があったが、そんなことぐらい分かるだろうと叱っていたり、あるいは悪かったねと申し訳なく思ったり、要は、親がして上げることが愛情表現であると思っていると、子どもはやってもらうことが親を安心させることだと思い、自分自身で伸びていく力を失っていく、これがスポイルであると思う。

「お弁当の日」の取組について
最初5,6年生から始めた。子どもだけで作る弁当の日、一人で全部作ってみよう。目的は大人への一歩だと呼びかけた。つくりかた、準備に必要なことは家庭科で教える、安全には十分気をつけて。1回目11月スタート弁当、2回目12月チャレンジ弁当、3回目1月はプレゼント弁当。
 実現までは色々大変だったようである。先生方は、いいことは分かるが、これ以上仕事はふやしてくれるなという気持ちもある。PTAお母さん方もひまがないので、同様。親は一切手伝わないでということで説得。手をかけることが愛情と思う親もいるし、お弁当はお母さんの仕事という考えも多い。最後は校長としてのリーダーシップで進められたのだと思う。
「弁当の日」は、単なる知識ではなく実践なので、内容が違ってくる。
 1回目、子どもにより色々程度の差があるが、2回目、3回目へと子ども自身が成長してくる。図書館にも多く関連の本が置いてある。それらを見ると、この取組によって、家族のあり方まで変わってくる。子どもに自主性が育ち、子どもといい関係がもてて、子育てを楽しんでやることができると言った効果が紹介されている。

 はなちゃんが小学校5年生の時にお母さんに書いた手紙から
「ママへ お弁当を自分で全部つくれるようになったよ。冬休みパパがお酒を飲み過ぎて、寝坊して、学童保育へ持って行く弁当が作れないといったけれど、自分がパパが風呂に入っている間に御飯を炊いて、おかずはばあばが教えてくれた玉子焼きと、パパが教えてくれたブタ肉とピーマンの塩こうじいため、・・・・後略・・・」

 お母さんは娘に何を残そうかと考えたとき、勉強より、掃除、洗濯、料理など、生きる力をつけることが大事と思ったとのこと。

 竹下先生が「弁当の日」に託した6つの夢。必ず実現する確信をもってられる。
①一家団欒の食事が当たり前になる夢
②食べ物の「命」をイメージできるようになる夢
③子ども達の感性が磨がかれるる夢
④人に喜ばれることを快く思うようにになる夢
⑤感謝の気持ちで物事を受けとめられるようななる夢
⑥世界を確かな目で「みつめられるようになる夢

 最後に平成14年度に滝宮小学校の卒業生に贈った言葉から、
・食事を作ることの大変さが分かり、家族をありがたいと思った人は優しい人
・手順良くできた人は、給料をもらえる仕事に就いたときにも、仕事の段取りのよい人
・食材が揃わなかったり、調理を失敗したりしたときに献立の変更ができた人は、工夫できる人
・わずかな味の違いに調味料や隠し味を見抜いた人は、自分の感性を磨ける人
・一粒の米、1個の白菜、一本の大根の中に「命」を感じた人は、思いやりのある人
・食材が弁当箱に収まるまでの道のりに、たくさんの働く人を思い描けた人は、想像力のある人です。
・スーパーの棚に並んだ食材の値段や賞味期限や原材料や山地を確認できた人は、賢い人
・「ある物で作る」、「できた物を食べる」異ができた人は、たくましい人
・「弁当の日」で仲間が増えた人、友達を見直した人は人とともに生きていける人
・調理をしながら、トレイやパックのごみの多さに驚いた人は、社会をよくしていける人・「いただきます」「ごちそうさま」を言えた人は、感謝の気持ちを忘れない人
・・・・

2015年7月では東日本で478校 西日本1236校。あわせて1714校であった。実際にやってみて、効果があるのでクチコミで拡がっている。
 コミュニティースクールにおいても理屈だけではなく実践の方法論が大事だと思っている。
 

質疑
○いい取組だと思うが、山口県内や宇部市内ではやっているところはあるか。琴芝クリーン作戦で小学校の生徒が親子で参加してくれるように働きかけている。学校と地域の繋がりがまだ十分ではない。こういう場にも教育関係者が集まってくれることが望まれる。
→具体的な方法論が大事。宇部でも竹下先生をお呼びして講演会を開催できたらという希望を持っている。

○恵まれない家庭もあり、学校教育だから、そのケアが重要だと思う。
→その配慮は必要であり、その通りだが、離婚したお母さんが弁当づくりの手ほどきに、もどるといったケースもあった由。給食費の支払い率が上がる効果もあるとのこと。
 ずっと続いている学校ばかりではないこともあるだろう。

○勉強だけしておればいいと言う家庭が多いのではないか。
C1:共働きで、余裕のない家庭が多く、昔のようにお母さんが家にいると言う時代とは変わっている。
→どこから切り込むかと言うと、「食」から入るのが、効果があると思う。
C2:食はやはり一番大事。少年院に小林カツ代さんがおにぎりを作って持って行くとすごく喜ばれた。手作りのおにぎりを食べた経験を持っていない子供も多い。お弁当ではなく、おにぎりでもそんな効果がある。 

○やはり実践が大事。大変かもしれないが、教育でも非常に重要と思う。
今回小野のキャンプでは、テントは家族で張ってもらった。その方が家族で試行錯誤していい経験になったのでは。食事も作ってもらった方がいいかもしれない。
→たしかに、至れり尽くせりはあまり良くない。

C3:3人の娘がいるが、3歳から7歳までに調理に参加させる経験をした。今はお母さんが何故そんなに忙しくなっているのか。暑ければエアコンをつける。など全てにお金がかかる時代になっていると感じる。

C4::自分は調理は全然できない。小さいときにやっておけば良かった。
C5:今からでも遅くない。自分なんか最近始めている。みそしるなんか早くうまく作れるよ。
C4:料理に挑戦します。
C5:それだけでも今日は値打ちがあった。

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