環境サロン「里山の保全と再生」第8回 藤本弘さん「森林バイオマスの利用における飯森木材の取り組み」
2014年03月02日
藤本さんは飯森木材の専務を務められる傍ら、うりぼう倶楽部会長として活躍されている。2月27日のサロンは、会社のバイオマス利用の取組、里山における再生可能エネルギーの可能性、里山のコミュニティーの再生、われわれの今後の生き方についてまで多岐にわたり、活発な議論が行われた。
林地残材とは、立木を伐採して丸太にする際に出る枝葉、梢端部分、根元部、森林外へ搬出されない間伐材など通常は林地に放置される残材であり、飯森木材ではこれらを集めてチップにし、バーク堆肥や木質バイオマスの発電用燃料として利用している。
かつては堆肥用がかなりの割合を占め、自社でも14haを宇部市より借り受け、ニンニク、サツマイモ、ジャガイモ、ジネンジョの栽培にも力を入れたが、現在では、経済性を考慮して、ほとんどがバイオマス燃料用として利用している。
岩国のバイオマス発電所(蒸発量45t/hr、10MW)は木質バイオマスだけで発電を行う施設としては日本で初めてのものである。建設廃材も含めて、当社が100%の木質バイオマスを収めている。
バイオマスの未利用資源としては、食品廃棄物800万トンと林地残材350万トンがあり、それぞれ原油換算で28万klと150万klに相当する(参考:2011年における日本の一次エネルギー消費量は461百万TOE)。林地残材を活用したバイオマス発電の効果は、林業の振興、森林の管理がよくなり川や海にも好影響を与える、CO2削減やエネルギー自給率の向上に寄与する。
再生可能エネルギーの推進やエネルギー自給率(日本の自給率は4% と先進国の中では最低)の向上のため、全量固定価格買取制度(FIT)が2012年7月から導入された。
隣地残材33円/kWh、建設廃材15円/kWhで、バーク堆肥からバイオマス燃料に移行した要因である。
太陽光発電の場合、太陽光パネルを設置できる家庭は恩恵を受けるが、設置できない家庭はその恩恵を負担するという不公平感が大きいことが問題になっている。また、ソーラーパネルの長寿命化のために強固な加工処理がなされる結果、それがかえってリサイクルを困難にする要因となり、将来の大量廃棄時が懸念されている。
さらにメガソーラーバブル、お金儲けのために設備設置用地を農地を中心に不動産的なバブルな状況になることが懸念されている。休耕田利用に名を借りた新たな土地問題の可能性もある。
これに比べると、小水力発電は、伝統的な水車でより環境に優しく、里山にはよりふさわしい。実際、再生可能エネルギー発電量の59%(2011年では45%)が小水力(100kW以下 )が占める。山梨県都留市の小水力発電(3基で24年度580MWh)の例等が紹介された。
日本で、エネルギーを100%自給できる自治体は60市町村あり、都道府県別では全国平均3.5%、トップは地熱発電がある大分県で27.5%、最下位が東京の0.2%である。
電気事業法の一部改正が行われ、2016年をめどに電力の小売り前面自由化、2018~20年をめどに、電力会社から送配電部門を切り離す計画としている。すでに円国の自家発電総出力は5380万kW+水力439万+風力239万=6058万kWで、原発60基分といわれている。
バイオマスと風力を組み合わせたようなハイブリッド発電の技術にも注目している。
自分としては、小野地区でもエコビレッジを目指したい。食の自給、自然エネルギーの使用、廃棄物の減少、必要に応じて生物多様性に配慮したエコな暮らし、そして地域の繋がりを「しがらみ」と考えないで、「つながり」と考えていきたい。
バートランド・ラッセルは「人間は、自分の情熱と興味が内ではなく外へむけられているかぎり、幸福を高めるはずである。」と言っている。
表面的な便利さや豊かさの蔭で失っていくものそれは「人と人とのつながり」自由と引き替えに失った「つながり」。得た自由とは単なる「ワガママ」だったかも・・・。
経済成長を求めて50年以上、先輩達が一生懸命働いて、確かに物質的には豊かになったが、本当の豊かさ、幸せとは何かを、いま考えなくてはならないと思う。
藻谷さんの「里山資本主義」では、「世の中の先端を走っていると自認してきた都会より、遅れていると信じ込まされてきた田舎の方が、今やむしろ先端を走っている」という言葉は印象深い。
今、世界人口は72億、19世紀の100年で10億人増えたが、2050年には93億人になるといわれる。ケニアは高原で蚊がいなくてマラリアは発生しなかったが、最近は温度上昇でマラリアが多発し、死ぬ人が多くなっている。「地球は過去から授かり、未来から預かっている・・・」ということを忘れずに行きたいと思う、と結ばれた。
議論:
○「里山資本主義」では阿武町や祝島のことも触れられていたが、われわれ世代の責任として、脱原発のその次、どうするのかということになるが、宇部と小野でどのような展望があるか。どうしていけばいいと思うか。
→小野は自然は豊かだが、高齢化が益々進み、限界集落になるおそれがある。地域再生を々するのか、山のバイオマスを利用した発電・熱利用や小水力利用などエネルギー自給を目指したい。今日はうりぼう倶楽部の若手も来てくれている。結論は出ていないが、若手にも期待している。
○バイオマスを利用した発電所は岩国の他、県内にあるのか。
→石炭混焼では中電小野田でも木質バイオマスが利用されている。宇部興産のボイラー故障でややだぶつき感があるが、下関でも大型のバイオマス発電が計画中とも聞く。
○灰はどの程度出るのか。
→0.6、0.7%程度だと思う。最終処分場へ行っている。小規模な発電所なら肥料に持って行ける。
○小野でバイオマス発電をやるとするとどの程度の規模になるのか。
→千kWを5つ、6つというところか。木質バイオマスの入手はそう簡単ではないだろう。スウェーデンでは熱利用が主だった。
○経済的に成り立つのか。
→まだきちっと計算してはいない。チップ工場から近いのは有利な条件だ。岩国も円高の時は一部インドネシアからチップを入れたこともある。
○木質チップの竹も使えるか。
→昨秋、カルスト森林組合で検討され、混合して利用可能とされている。
○円安もあり、電力料金が上昇し、やはりベース電源の安定確保が大事だと思うが。
→やはり再生可能エネルギーを最大限利用すること、原発なしでもやっていけると思えるような社会を目指すべきだと思う。
○買取価格が林地残材の場合33円/kwh、建設廃材の場合15円と違うのは採算性を考慮して定められたという理解でいいのか。
→そうだとと思うが、林業活性化のねらいもあるのでは。
○キングニンニクの栽培は々だったのか。
→人件費がかつかつ出る程度で、特に付加価値を付けられていたわけではないので、採算はなかなかきつかった。企業の農業参入を進めるための特区構想に乗ったものだ。
○小野の山奥にお住まいだが。
→結婚後、西岐波から移ったが、想定外にサル、イノシシが多い。シカ、アナグマもいる。有害鳥獣の駆除についてだが、今年に入ってからはサル40、イノシシ60と少なくなっている。撃った数と獲った数は違う。
○バーク堆肥の生産をやめたのは。
→もともとチップのはけ口としてお金がかかってもやっていたが、今は電力の方が経済性がいいのでそちらに向いていいる。
C:農家は国の方針に従い、かつては基盤整備をして大借金をした。昨日のテレビ番組で、ローソンの農業参入の子とをしていたが、大きさの揃ったダイコンを店頭にだすため、規格外のものは廃棄物にまわる。小泉さんの市場原理主義に乗っているだけではないか。元々の価値観を見直すことが大切だと思う。途上国も日本のように豊かになろうとするわけだが、こっちのやり方の方がいいよというものを生み出していくべきだ。
これも2年間マレーシアのボルネオで過ごした娘からたたき込まれたもので、夏エアコンも使わない、風呂は続けてはいるとか、できるだけ工夫をしている。野菜屑は山羊が食べる。生活費も月10万円くらいで済む。自分も3年前までスーパーサラリーマンだったが、ホテルの窓から道路を通勤する人も群れを見ていて、ただ食べてうんちしている人のように感じてしまった。
C:電気や技術は活かすべきと思う。タイで電気のきていない山奥に、政府が太陽光パネルを無償配布した、これで電灯とテレビがまかなえる。やはりこの技術はすごい。携帯電話も電線等のインフラは不要だし、こういった知恵は活かすべきと思う。我慢してくよくよ生活するのもどうかと思う。人間の幸せにつながる社会の仕組み作りが大事で、シェウナウの森も人々が繋がりあって技術をうまく使っている。
C:今の生活を変えないで、社会を変えようとしている人がほとんどで、我慢、我慢というと人はついてこない。
C:生活を落とそうという表現するからおかしい。東南アジアは貧しくても豊か。足を知るということが大事。もっともっとではいつまでも満たされない。生き方そのものを変えてみることが大事。
C:50年前の日本のエネルギー消費は今の8分の1であった。その頃は木炭などをつかっていたろうが、「三丁目の夕日」にでてくるような生活だった。
C:世の中は経済ばかりで、ここでの雰囲気とは逆。総論ではみな分かっていても、各論は別。藻谷さんは2割が変われば世の中が変わるというが。今日もほとんどの人が自動車に乗ってこられているのではないか。
C:生き方を選ばされるより、自分で選ぶ。その方がかっこいいと思えるようになれば変わっていくのではないか。そういう人がすこしずつ増えてきていると思う。
C:バイオマスエネルギーは地域の活性化派別として、国全体としてみた場合、重要性は低い。大消費地へのエネルギー供給としてはシェールガスやメタンハイドレートもあるが、水素が主流になると思う。
自分たちがやれる省エネは明日からやることという司会の言葉で終わったが、終盤は以上のような大変活発な意見が出されました。
動画サイトは http://youtu.be/fjf6emqt_oU
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