環境サロン「中心市街地の活性化」第4回として、宇部市都市計画マスタープランの概要について、宇部市都市政策推進課課長補佐の市川浩さんの出前講座を聴きました。
2013年11月12日
都市計画マスタープランとは、都市計画法にもとづく「市町村の都市計画に関する基本的な方針」のことであり、宇部市では、都市の将来像やまちづくりの目標、土地利用や都市計画の指針、個別都市計画の相互調整、市民のまちづくりへの参加意識を高めるといった方針が定められている。山口県が定める都市計画区域マスタープランや宇部市総合計画、さらには全国・山口県・宇部市の国土利用計画との整合も図られる。
公共事業の逆風の中で、五ケ年計画で総事業費の枠を確保していくやり方が見直され、事業も進めにくく、一般の人にもわかりにくくなっている。また成熟型の地方分権型計画づくりに移行しつつあり、全総、新全総、三全総、四全総という全国総合開発計画の流れをくむ国の国土形成計画、中国圏広域地方計画があり、自治体の社会資本整備計画にもとづいて、国の社会資本整備総合交付金の配分が行われ、昔に比べると地方の主体性がより活かせるようになっている。
マスタープランの策定に当たっては、アンケートやワークショップなどにより、市民意見が反映されている。中学1年生と20才以上の一般市民の意識調査では、将来の町のイメージとして、中学生では自然に恵まれたまち、大人では高齢者などが安心して暮らせるまちが一番多かった。
現在、市の最上位の計画である第四次宇部市総合計画の前期実行計画の最終年度にあたる。来年度から4年間は中期実行計画に入る。この現総合計画では、求める都市像として、「
みんなで築く 活力と交流による元気都市」となっている。都市計画マスタープランは平成16年3月に策定されたが、平成18年度に楠町の合併があり、平成23年度に統合したマスタープランになった状況であるがものであり、求める都市像としては、第三次宇部市総合計画をうけて、「人が交流し、みどりと共生するまち」となっている。キーワードとしてはゆとり、活力、共生、交流があげられている。
書かれている理念はいいが、実行できるか、実行できているかというと、それは別問題で、予算、スタッフ、利害関係者の合意形成、権利調整などで、実際はなかなかむずかしいのが現実である。それじゃそんな計画づくりにお金をかけなくてもいいのではないかという意見も聞くが、やはり実際に補助金を得て、事業を実行する場合には、これら計画に位置づけられていることが前提になる。そのため、様々な計画策定が行われる。市民意見を反映するための協議会も多い。法定審議会や条例に位置づけられた協議会でない場合は、交通費も出ないものも多い。
現在進められている「低炭素のまちづくり」は目標年を40年というスパンで考えられている。その協議会に関連して、公共交通のあり方、新川駅周辺再生について、市民意見を聞く協議会も行われている。そのほか、パブリックコメントの募集や各種審議会等への市民代表委員の公募も行われている。志立市民大学卒業生のまちづくりサポーターとしての活動もあり、市民参加の機会も増えている。
まちづくりの方針(全体構想)としては、人のにぎわいのある都市拠点と、豊かな環境のある郊外を、両立し連携して一体の都市として魅力あるまちづくりを進めるとしている。まちづくりの方針(地域別構想)としては、中央部地域、西部地域、東部地域、北部地域、クスの貴地域の5地域に区分し、それぞれのテーマとして「緑とぬくもりを育み 人々が集う賑わいのまち」、「水とみどりと豊かな心を育む うるおいと活気のあるまち」、「海・山・人とふれあい 便利で住みよいまち」、「水・緑・土を活かしてゆったり暮らせる 交流のまち」、「歴史と自然にあふれ安心して暮らせる 生きがいのあるまち」となっている。
さらに、中央地域を例にとると、緑豊かな都市空間の形成、魅力と賑わいのある中心市街地の形成、利便性の高いやすらぎのある住環境の形成、多様な交流空間の形成が課題としてあげられている。問題はいかにそれを実現していくかと言うことであろう。真締川の高潮対策河川改修も市庁舎の建て替えとあわせて、進められることが期待される。
行政上は、これら基本計画に書かれた内容を実際の事業をする場合には、実施計画に落とし込んでいくことになる。
最後に、人口減少の時代のまちづくりについて、「賢く縮小するまちづくり」を考えている大阪市立大学の矢作教授や、同じく線引き方式で縮小するやり方ではなく、都市・農地・自然のミクロコスモス的な縮小を考えている首都大学東京の饗庭準教授の紹介をされた。
また、行政職員が話をする場合は、個人の立場で自由にものが言いにくく、変な発言をすると暴言を吐いたとか批判を受けたり、一市民としてボランティア活動に参加しても、市職員として意見を求められたりするので、やりにくい思いをすることがある。その意味では今回は出前講座として依頼を受けたので、話しやすかったと感想をのべられた。
議論では、まず参加者のみじかい自己紹介があり、お互いよく知らない人がいるので有意義であった。以下次のようなやりとりがあった。
○土木建築部等の構成はどうなっているか。
→30年近く前は都市建設部と下水道部の2部であったが、都市建設部が土木建築部と都市開発部とに分かれ、都市開発部からその後、公園整備局が局として分かれ、現在は土木建築部と下水道部になっている。中心市街地に関しては、区画整理課、まちづくり推進課が市街地整備課に統合され、さらに都市計画課と統合され、都市政策推進課になっている。予算も職員の数が減っているが、大丈夫かという声も聞かれるが、レベルアップをしているので大丈夫と答えている。
○いままで携われた案件の中でむずかしかったものがあるか。
→役所全体からすると、医学部の裏を通る柳瀬丸河内線や床波の海岸通などでは地権者の調整がむずかしかったと思う。時間がかかっても完成しているということは行政の継続性であり、民間事業であればそうはいかない。
中心市街の活性化の成功例として知られる、弘前、富山、市川、高松などでも、費用対効果は、交流人口の増加効果はいいとしても、定住人口や商業売り上げの増加の効果では充分でない場合が多い。全国共通の問題であるといえる。
また、まちなかに投資するより、とくに不便を感じないのだから、もっと福祉や教育等に投資する方がいいのではと言う意見もある。地元の当事者も、何もしなければ損もしない。なんとか食べていける。補助金があっても1/2、1/3の自己負担もあり、投資して、子どもや孫に先で負担をかける危険もあるので、簡単に説得することができないことが多い。
○マスタープランにおける都市のビジョンとして、山出保さんの「金沢の気骨」という本を読んだが、金沢のまちづくりビジョンなど、色々参考になるのではと思う。
→その後、宇部市では低炭素のまちづくりが加わってきているが、これは全国でも先進的な取組である。金沢の例は勉強してみたい。
○外から見ると宇部は、空港、道路などのインフラや大学などいいものがたくさんあるが、まちなかのみどりが少ない。街路樹が周南などに比べるとみどりが少ないと感じる。みどりで住宅地の価値も上がり、まちの魅力が上がるはずである。
→宇部市も「緑の基本計画」は設定されている。常盤公園については見直したと思うが、そろそろ改定の時期かもしれない。歴史的に街路樹の無剪定方式で管理してきたが、あとからNTT、中国電力、ケーブルテレビなどのラインが増えたり、交通信号が見えないなどの問題があり、この方式は後退している。また、インターロッキングの施工に伴い樹形が小振りになっているかもしれない。
○若い人がどんどんいなくなると言うが、商業高校もあるし、防府では商業高校の生徒がまちづくりに参加している。
→この学習館もたしかにまちなかの活性化につながっていると思う。エコ市場やまちなかおそうじ隊にも高校生達が多く参加するようになっているようである。
○宇部市のまちづくりで、これは自慢できることは
→みんなでつくるアートフェスタが始めたが、ハードな土木建築部で、このようなソフトな取組を始めたところは自慢できるのではないかと思う。
○工事をやるときに簡単に木を切らないでほしい。いま490号で大きい街路樹を切ろうとしている。それと、中心市街地の活性化の効果の指標として、商業売り上げ高などはにこだわるのは、もう時代が変わっているのでおかしいのではないか。地元の人が再開発を本気で望んでないということなら、何のためにやるのかと思う。
→490号は県の関係だが、大金をかけて、移植しても枯れることがある。新たに植えた方が経済的に有利だと判断されることが多い。
安らぎの空間の指標などは主観的な指標であり、客観的な数値で表すのはむずかしい。数値だけで、総合的な効果を表すこともむずかしい。今後の課題である。
人口減少による「賢く縮小するまちづくり」が求められていること、都市の膨張時に東京近郊でもしぶとく生き残った都市内農地や自然を、もう一度生かしたまちづくりが考えられているようで、中心市街地の活性化もこれまでとは違った価値観で、考える必要があるかもしれない。出前講座のあり方についても、 考えさせられるところがありました。
Youtubeは以下です。
http://youtu.be/L_NoZxata4c
http://youtu.be/bJthPBFCav4
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