環境サロン「里山の保全と再生」第1回 白木美和さん「里山を守ろう」 平成25年6月25日(火)18:30~20:30 ヒストリア宇部
2013年06月28日
はじめに、東日本大震災のあと、何かしなくてはと思い制作され、優秀賞を獲得された『子ども達が教えてくれたこと』を見せていただいた。平生町の大下充億(あつお)さんが運営する「こびとのおうちえん」という幼児園のルポルタージュです。3歳から5歳までの子どもが生き生きと、自主的に、助け合いながら暮らしている様子を見ることができました。小さい子が包丁を使って、自分たちでお昼のご飯もつくり、薪を割ったり、ご飯を炊く薪を燃やしたり、工事のお手伝いで土運びを手伝う子どももいます。自然のなかで、いろいろなことを学び、身につけている様子を見ると、健全な価値観を持ち本当に生命力のある子ども達が育ってくれるのではとの印象を持ちました。
http://tvf2010.org/2012/prize_movie/s17.html
ビデオの中で、大下さんは、「日常の今の生活がしあわせということをこども達が気づかせてくれる。自分が一番しあわせを感じているのでは」とも言われていた。白木さんは、いったい大人はなにをしているんだろう。子どもに残したいもの、それは自然のあるがままの環境であると感じたこと、園のこども達は気働きができていて、自分で自分のやりたいことをする。仁保のおばあちゃん達も鎌一本で朝早くから働いておられる。里山にはそういう「気働き」がある。久しぶりに自分もビデオを見て、実りの時期だからということもあるけれども最近少し時間に追われた生活をしている、と感じるということだった。
白木さんが里山暮らしに入り込むようになるについては、いろいろな人たちの影響を受けた。
黒五郎のアコちゃんもその一人で、はじめは県立大学でお話を聴き、後日ケーブルテレビで取材に行った。そのころ兄の博司さんはアメリカに行っていた。アコちゃんは、草履姿で、斧で竹を切っていた。2週間経ってまた訪問したとき、山が明るく変わっていた。そのとき「お金にはならないけれども、大事な労働だ」と思った。その後、房総なども含め、いろいろな里山を訪問した。生きるというのはこれでいいんだと思ったという。
ガンジーの「世界の人々が生きていく上で必要なものは世界にあるが、貪欲を満たすに足るものはない。」という言葉がある。
まちなかの暮らしは消費するだけ、里山は生活するのに必要なものを生産する。里山の人たちは食べるために働いている。
イヌを飼うのはお金がかかるが、ヤギはかからない。ほっとくだけでいい。馬酔木を食べて病気になったことがあるが、ヤギは自分でじっとしている。回復すると、塩をかじる。草と水と塩があればいい。ヤギに学ぶことも多いなどなど。
昔の暮らしから学ぶ
田中優子さんのお話で、本草学を学んだときに、すべてのものが役に立っていた。髪の毛や、爪も肥料として大事に利用されていた。当然人糞は貴重な肥料であった。土を通して大事なものが循環するということである。現代のわれわれは江戸時代の武士のような存在である。
また、松本幸之助さんの「昔の山口・仁保上郷」という、里山の暮らしぶりを絵と文章で紹介した本の紹介があり、昭和30年代までこういう生活があったのだと感動したそうである。今秋、嘉村磯多の家で松本幸之助さん絵の展示をする予定とのこと。
白木さんは、土に帰る生活を戻したいと言うことであるが、おばあちゃんの知恵を継承することも大事なことと思っている。
八女の梅干しづくりは土用干しをしない。
味噌をつくろうと思っても、最近は杉樽が手に入らない。東日本大震災で東北の醤油屋さんが津波で流された桶を探して、麹菌を回収された例もある。
農繁期の田植えのあと、泥落としでは、ゆで玉子、角ずしと、おはぎなどごちそうを食べた。玉子はニワトリの好みの食べ物によって、殻の色、黄味の色が違う。白っぽい黄味の玉子は米、黄色はカボチャ、リングに黄緑色がある玉子は野菜の好きなニワトリである。今の玉子はどうか。みな同じ色をしている。斧頃の玉子は抗生物質や女性ホルモンが含まれていて、栄養によいといって食べると草食性男子になるのだと思う。
宇部の小野地区に平山先生という元校長先生がおられて、いろいろな昔のお話を聞かしていただいている。その中で庚申塚のお話が面白かった。庚申の日は60日に一度回ってくるが、その日は集落の人が夜を徹して、話しあう。報告・連絡・相談の場に使われる。夜明けまで、決して人の悪口を言ってはいけない。これを3年間続けた村には、庚申塚を建てられた。コミュニティーを維持する知恵だった。
現代に取り戻したいこと
いま山口県でも養蜂家がどんどん少なくなっている。若い人が新たに始められる例も出てきたが。今日持ってこられた蜂蜜は周南の方が昨年夏にとられた蜂蜜である。夏の蜂蜜はクリの花など木の花の蜜が主になるので、色が濃いめである。ミネラルも多くおいしいが、市場では扱ってくれない。蜂は成虫になって30日しか生きない。そのうちはじめは巣箱の掃除などにも時間を費やすので、蜜を集められる期間はもっと短くなる。その一生の間に一匹の蜂が集められる蜂蜜の量はわずかピース缶である。とても貴重なものなので、大事にいただきたい。油谷で養蜂を始めた人が近くに和バチと洋バチの巣を置いていたので、和バチが逃げますよと言ったら、近所の山に拡がってくれるので別に気にしないと言われて感心したとのこと。
すでに他界されたが、おばあちゃんのつくったらっきょうは3年経っても、かりかりしているということだっが、白木さんがはじめつくったのはそうはならなかった。根のところを切ると良くないらしい。栽培して、収穫して、自然乾燥し、塩をかけて、ビン詰めする。これだけ手間をかけるとキロ1400円、泥付きのらっきょうはキロ300円である。いいものは手間がかかっていて高いのは当然である。ちなみに白木家では、食べる塩は百姓庵の塩であるが、洗濯は洗剤を使わず、通常の塩、酢、備長炭を入れて洗濯しているそうだ。
里山には季節感があり、鍛冶屋さんに教えてもらったということが、季節には色がある。春は青、夏は朱、秋は白、冬は玄。五行説でいうと、木・火・土・金・水にそれぞれ春・夏・土用・秋・冬が対応、方角はそれぞれ東・南・中央・西・北が対応する。体の臓器で言うと、肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓がそれぞれ対応する。それぞれの季節に負担がかかる臓器という意味である。土用というのは、立春・立夏・立秋・立冬のそれぞれ前の18日間をいい、この時期は季節の変わり目なので、体の健康等に注意するという意味である。斧の片面には線が三つ、もう片面には4つ刻まれているそうですが、これは山で斧を忘れるときに「ムツメ」が隠すためと信じられ、より強力な「ナナツメ」を刻んでいるとのこと。
なお、里山の生物多様性については、(NPO)農と自然の研究所がまとめている環境学習用の下敷きを見ると、30種類もの沢山の生き物が水田の中で育つことが示されている。なかでもカブトエビは何億年前から生きていて、しばらく水が入らなくてもじっと休眠しており、20年後に水が入っても復活するような生物である。メダカやドジョウなども復活させたいものである。
まとめ
最近は、クマ、サル、シカなどの被害が出て農家は困っているが、バランスを壊してしまったのも人間の側であり、時間をかけて、人と動物の関係を再構築したいものとされた。そしてなにより、土に返して、それがまた食べものになる、循環する生活を取り戻すことが重要であるとされた。
多くの資料を用意していただき、100分程度、よどみなくこういった内容の濃い話を聴かせていただきました。その上貴重な蜂蜜、パン、コーヒー、らっきょうまで味合わせていただき、参加者はみな満足していただいたと思います。
配布された「やっほー仁保スマイルMAP」には、仁保の魅力や自然体験イベント情報が紹介されており、仁保の全戸に配布されたそうだ。また、山口ケーブルテレビの15分番組で「やっほー!仁保♪スマイル」を毎日(1週間同じもの)放送が 8年間も続いているということにも感心しました。白木さんどうもありがとうございました。
なお、以下にビデオを収録していますが、こちらの不手際であとの1./4は記録されていませんでした。申し訳ありません。
http://www.youtube.com/watch?v=3om6MSPEvgs
http://www.youtube.com/watch?v=TII1Hnhe6SI
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