第1回ESD研修会「SDGs未来都市における人づくりの重要性」の概要報告(その1)
2023年12月18日
先々週行われた第1回ESD研修会の概要報告(その1)です。
テーマは「SDGs未来都市における人づくりの重要性」として、2題の講演とディスカッションが行われました。
はじめの講演は宇部市市民環境部の村岡和弘次長の 「宇部市における環境教育の現状と課題」と題して、ESDの視点に立った環境教育を意識したお話でした。
まず、地球環境問題への宇部市の取り組みとしては、工業都市であることから、カーボンニュートラルの取り組みが重要であるが、技術革新やエネルギー源の抜本的な転換も含め、効果的かつ現実的なマイルストーンはまだ明確には見えていないとされ、地球環境問題は切実な問題であることを認識し、できることから率先して実践すること、環境にやさしい行動をとれる人材を幼少期から育成することが大事であるとされました。
その上で、環境教育分野で、市の行政としてやれることとして、次の3つが上げられました。
・CO2排出抑制につながる市民の実行動、
・自然との触れ合いによる環境保全への意識向上、
・幼少期からの環境人材の育成
これらを実際にうまく回していくためには、従来の環境政策の見直しが必要であると感じているとのこと。(ある見方からすれば、いずれもESD環境教育に関連した項目であるとも言えます。)
第三次宇部市環境基本計画(R4年度~ R13年度 )は演者が環境政策課長時代に策定されたものだそうですが、施策の体系のうちの重点施策として、再生可能エネルギーの活用、省エネルギーの推進、低炭素なまちづくりの推進、多様な動植物の生息・生育状況の把握 、自然と触れ合う機会の確保、環境学習・教育の充実、多様な主体の参加促進が上げられています。中でも、環境学習・環境教育によって小さいときから環境マインドを醸成することの重要性が強く認識されているようでした。
また、主な環境指標と目標値を抜粋され、民生部門からの温室効果ガス年間排出量、自然観察会や環境保全活動への参加者数、1人1日当たりのごみ排出量等があげられています。
アウトプットとアウトカムの区分が明確でないきらいはあるということでした。
(アウトカムを意識できることが大事ということでしょうか。)
R3年度までの問題点として、自然観察会の参加人数の伸び悩みと参加者の固定化、ゴミ学習については、環境学習がごみ学習だけに限定的であったことや小学4年生だけを対象にしていたことから、小学校の他学年や中学校へ拡大し、内容を刷新して魅力ある幅広い環境学習へ拡充することが課題であるとされました。
環境学習の拡充についても様々な努力をされているようで、小学校については、校長会や教頭会で環境学習プログラムを紹介する、アンケートで興味を示してくれた学校へ訪問する、授業と連動させた環境学習を担任と調整する、土日開催の自然観察会への親子の参加へのチラシ配布、教員に対する研修会の実施、必要な費用を宇部市が負担などの努力をされています。
課題としては、過密スケジュールの小学校において、新たな負担を感じさせないようプレゼンを工夫すること、授業との連動においても一方的な講演会に終わらないように担任教師と考え、子供たちが「考える」ことで意識醸成に深みをもたせること、職員の育成も必要、十分な人材を確保することも必要であることなど、きめ細かく努力されているようです。
一方中学校での展開については現段階では手探り状態であること、小学校での環境学習の拡充により小中一貫での取り組みを進めることとされました。
その後、宇部市教育委員会からの意見も聞いた上で、小学校における環境学習と学習単元との関連を整理された図を示され、令和6年度の小学校環境教育プログラムとして、中国電力による出前授業(https://www.energia.co.jp/kids/demae/index.html)を含む9プログラムと、番外として管轄は他部局ですが、「せかい!動物かんきょう会議」のプログラムも紹介されました。動物かんきょう会議のプログラムは2018年度から継続されていて、市民インストラクターによって実践されているとされました。
これらの中には、野外の現場に出て、時間をかけて体験させるプログラムも半分程度あり、ESD的な要素も相当意識されているようです。また移動時のバス代や材料費等の方も行政側が面倒見てくれるということです。
なお、これら以外にもより広い環境教育関連の取り組みについては宇部市のHP以下のURLにまとめられています。(実に多様な取り組みが行われていることが認識できます。ちなみに我々になじみのあるUNCCAが請け負っている「省エネ・環境教育出前事業」による出前授業は、この多くのリストの1行に記載されています。)
https://www.city.ube.yamaguchi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/780/2023keikaku.pdf
また、教員向けや環境リーダー育成の研修会も年1回行われています。この取り組みついては、アンケートでも好評のようで、次年度以降も、模擬授業を含めたような形も検討していきたいとのことでした。
ちなみに2018年度かに大濱先生もお話されたようです。
(参考までに、今年度の講師を勤められた栢之間倫さんの取り組みについては下記
https://www.youtube.com/watch?v=nPT6b6RBB-8
【環境教育・ESDトーク】#19 行動者が生まれる教室をつくりたい kankyosho )
最後に、環境行政においては、ESDの観点は認識しつつも、それを学校現場で最後まで実践していくことは、情報を出してこうしてほしいとアピールすることまではできるが、行政単独ではなかなか困難である。私たちのプログラムをどう活用して最後まで実践し、自然と環境配慮行動がとれるこども達を育成していただけることを期待して、先生方とコミュニケーションをとりながら、学校現場に於いて無理がないように、お互いにWin-Winの関係になるように検討を重ねていきたいと思う、結ばれました。
全体を通して、このような注目すべき動きを、これまで環境政策課を中心に進めてこられたことは、ESDうべ推進協議会の事務局としてほとんど把握できていなかったことに大きなショックを受け、協議会のこれまでの在り方を反省するとともに、今後の在り方を考える必要を痛感しました。
なお、当日オンライン参加の方々には、映像の共有等がうまくいかず、大変ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
その2では、講演2と総合討論の概要を報告いたします。(文責:浮田)
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