2022年度第2回ESD研修会「山口県におけるESD環境教育の現状」の報告(その1)
2023年01月07日
今回マイクの調子があまり良くなく、動画記録からの聴き取り確認ができなかったこともあり、報告が非常に遅くなりました。報告者の主観も入り交じった報告になりますが、ご容赦下さい。
講演していただいた、山口県環境学習推進センター所長の田中 勇さんは比較的長くこのセンターに関わっておられますが、理科のご専門で、琴芝小学校に4年ほど勤められたことがあるそうです。
まずはじめに、環境教育と環境学習の違いについて話されました。
両者とも、環境省・文部科学省・農林水産省・経済産業省・国土交通省を主務官庁とする環境教育等促進法(通称。2003年推進法制定、2011年全面改正促進法、2012年10月施行)に基づいています。
環境教育については文部科学省、山口県教育委員会を通して、小中高等学校での環境教育推進が図られています。
一方、環境学習については環境省、山口県環境生活部を通して、環境学習推進センターが平成16年(2004年)4月に設置され、山口県ひとづくり財団を指定管理者として運営されているとのことです。
そして、環境教育については県教育委員会により山口県環境教育推進計画(2020年3月改訂)が定められています。
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/19/11426.html
環境学習については県環境生活部により山口県環境基本計画に基づく山口県環境学習基本方針が定められています。
なお、学校における環境教育、ESD教育については、学習指導要領によって位置づけられているようです。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/013/003/shiryo/attach/1299713.htm
https://www.mext.go.jp/unesco/004/1339973.htm
山口県環境学習推進センターが山口県唯一の地域ESD活動推進拠点でもあることに関連して、図に示すようなESD推進ネットワークについて説明されました。
もともと2002年9月ヨハネスブルグサミットでの日本政府とNGOの共同提案から生まれた「国連ESDの10年」は、2005年から2014年まで世界中で展開されました。2015年からは「国連ESDの10年」の後継プログラムとして「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」が開始され、ESD関係省庁連絡会議において、2016年3月に「我が国におけるESDに関するグローバル・アクション・プログラム実施計画(ESD国内実施計画)」が策定されています。https://esdcenter.jp/aboutus/#setsuritsu
この動きを受けて、文科省と環境省は、東京にESD活動支援センターを開設し、2017年に環境省地方環境事務所により、全国8カ所に地方ESD活動支援センター(中国地方は広島に)が開設されたようです。
山口県環境学習推進センターは広島のESD活動支援センターから依頼を受けて、2018年に地域ESD活動推進拠点になったということです。この地域ESD拠点は2022年8月1日現在では全国で165件の登録があるようですが、中国地方では岡山県が6件、島根県2件、広島県、鳥取県、山口県は各1件のみになっています。
https://esdcenter.jp/kyoten/#chugoku
地域ESD拠点は、ESDを推進・支援する自治体、教育委員会、環境学習施設、社会教育施設、NGO/NPO、経済団体・企業、ユース組織、ESDに先駆的に取り組む複数の組織・団体による地域協議会やコンソーシアムなどを登録対象にしているので、山口県でも、手を上げるところが出てきてほしいとされました。
さて、ESDに関連して、2021年3月には山口県総合企画部から「山口県新たな時代の人づくり推進方針」が定められています。
目指す人材像としては、「ふるさと山口に誇りと愛着を有し、高い「志」と「行動力」を持って地域や社会の課題を自ら発見、他者と協働しながら解決し、新たな価値を創造できる人材」が上げられ、ほぼESDの精神が盛り込まれています。
しかし報告者の個人的感想としては、全体的には、エリート養成に力点を置いている印象が感じられないではありません。
山口県ひとづくり財団では、この方針に関連して、下の方の図に示すような、やまぐち未来アカデミアや、夢・「志」応援プロジェクトの事業も行われているとのことです。
次に、山口県ひとづくり財団の組織図と田中さんが所長を務められている山口県環境学習推進センターの位置づけについて説明されました。
総務課は県内3清祥念青少年自然の家のほか埋蔵文化財センター、スポーツ交流村、奨学センターを管理し、施設課はセミナーパークの施設管理を行い、自治研修部では県市職員研修を担当しているとのことです。
環境学習センターは生涯学習推進センターとともに県民学習部を構成し下の表に掲げられるような、学習活動の推進と交流の促進を目的とする多くの事業を適宜分担・協働して実施されているようです。
なお教員の研修はひとづくり財団とは別組織で、山口県教育委員会の外郭団体である、やまぐち総合教育支援センター生涯学習推進センターが主に担当されているものと思われます。
配付された詳しい資料から、環境学習推進センターが主催して実施されたこれら事業を抜き出してみると次表のようになり、いろいろ魅力ある多様なプログラムが実施されています。
この他に、環境学習指導者派遣制度の窓口をされており、令和3年度の派遣実績としては、環境アドバイザーの派遣2人、環境パートナーの派遣46人、子どもエコクラブアドバイザー派遣0人と、コロナ禍の影響もあると思われますが、大部分が環境パートナーの派遣になっています。登録者数は環境アドバイザー66人、環境パートナー113人、エコ倶楽部アドバイザー21人ですので、ややもったいない気がします。
また、情報誌「ecoサポート」を年2回発刊するほか、ホームページ運営にも力を入れているとのことです。
質疑: 講演終了後、以下のような質問やコメントがありました。
○文科省は環境教育、環境省は環境学習で、環境学習推進センターは後者の系列になるという説明があったが、ESDに関してはどちらが責任を持っているのでしょうか。
→どちらかが責任を持っているという体制ではないと思う。
○宇部工業高校では4年間ESDのモデル校として活動してきた。ESDで目指すものとして、7つの力や態度として、批判的に考える力 、 未来像を予測して計画を立てる力、 多面的・総合的に考える力、コミュニケーションを行う力 、常に、これらを意識して進めてきた。ESDは環境教育よりもっと広い。環境教育はESDの一部です。
→ひとづくり財団としては、やまぐち未来アカデミアや、夢・「志」応援プロジェクトの事業も行っている。学校教育では、学習指導要領に沿ったESDの取り組みが行われていると思う。
C:ESDの推進に関しては生涯学習推進センターと環境学習推進センター、そしてできれば環境学習部とやまぐち総合教育支援センター連携して取り組んでほしいと思う。
○環境学習アドバイザーの派遣件数が少ないように思われる。
→環境学習推進センターの方から、推薦することはできないので、それぞれアドバイザーの方々が学校等に働きかけていただくのが良いと思う。
(その2)につづく
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