第2回特別サロン(その2)安溪貴子さんの講演(つづき)
2022年10月28日
阪本寧男さんによると、栽培植物は西南アジア、地中海、アフリカ、中米、南米、東南アジアなど、それぞれ起源を持ち、古代から人々によって栽培し、食べつないできた人々のものであり、本来、知的所有権の対象になるようなものではないということです、
そして、スーパーや量販店で手軽に「タネや苗が買える」ようになり、あたりまえにやってきた「自家採種」をやめ、伝統野菜のタネが失われた。
地域で繰り返し自家採種され、選抜をうけてきた地域固有のタネ「在来品種」、その地域で育てやすい、季節の巡りに合ったタネが失われた。すなわち地域固有の食文化そのものが失われてきたのだと思うとされました。
そもそもタネは人々がそれぞれの土地で作物を作り続けることで、タネの遺伝的多様性を守ってきた。つくり続けることで、その地域に適した栽培作物(在来品種)に変化させてきた。まわりの「微生物を含む生き物たち」とのバランスが取れた関係ができてきた、とされました。
ところが、植物の新品種を育成し、登録した者の権利(育成者権)を保護するUPOV条約があり、2014年現在、日本、米国、EU諸国などを含む71か国が加盟国であるとのこと。
植物の一部分が変化したものを「自分のもの」として所有権を認めるということは、1万年作り続けてきた先人たちの努力を軽視するものであり、生命(遺伝子)に対する「所有権」の主張は、あまりにも傲慢であるとされました。
さらに、遺伝子組み換え作物が出てきており、その安全性が危惧されています。
食べ続けた際の人体への影響が、しっかりとした検証がされてはいないので、安心して食べることができない。自然界に存在しない性質を持つ作物(例えば除草剤耐性)なので、花粉が雑草に混ざってしまうと、自然界のバランスを壊してしまうおそれがある、とされました。すでにこのトウモロコシや大豆を日本は輸入しているそうです。
さらに最近はゲノム編集生物が作られつつあり、ゲノム編集トマト、肉厚マダイや高成長トラフグの例を上げられました。
ゲノム編集生物の実験室外への放出と食品への応用について、日本政府は、本来必要な環境影響評価や安全性審査、表示も義務づけていないそうです。
色々問題がありそうですね。
(遺伝子組み換えとゲノム編集の違いについては、たとえば以下のサイトによると
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/anzenka/genom_editting/interview_1.htm
ゲノム編集はもともと持っている性質を改変する方法。遺伝子組換えはもともともっていない新しい性質を付け加える方法、ゲノムは各々の生物の持つ遺伝子情報全体を指す言葉です。)
表示義務もないということは、消費者が選択することもできないので、大変問題ですね。
子供達に食べさせることができるでしょうか。
こんなゲノム編集トマトの苗を、パイオニアエコサイエンス社は、福祉施設(2022年)や、教育施設(2023年)へ無償配布する計画を発表しているそうです。
いま、足元でできることとして
消費者団体、農民団体.食の安心安全を求めるNGOは、ゲノム編集生物の放出と栽培、食品流通に強く反対していること、北海道、熊本などから「ゲノム編集トマトを受け取らないで」という要望書を自治体に提出しているそうです。
山口でもやりませんか。「やまぐちの種子を守る会」のMLへの参加と入会をよびかけられました。
生命の誕生から35億年、生命が出会ったことがないモノが環境に出てきている。数万種類の化学物質、放射性物質、遺伝子組み換え作物など。
私たちは地球の生物のひとつ、次世代、次々世代の地球、子どもや孫たちは生き延びられるのか? とされ、先生としてはアフリカの体験をもとにして、自分でタネを採ったりイモを植えることを始めたということです。
「やってみたら、おもしろい、楽しい、でも忙しい。失敗もいろいろ。」「何より友だち(先生)がたくさんできた。タネを通じて、日本全国に面白いことをしている人たちがいる」されました。
安溪さん一家のつばめ農園では、すでに、あずき、黒豆、白大豆、キュウリ、マクワウリ、シロウリ(トクサウリ)、トマト、ネギ、ニラ、カラシ菜、カボチャのいろいろの自家採種をされているそうです。
食生活では、鶏肉、塩、油以外はほぼ自給できるようになってきたと言うことです。
ローカルフード法案は国会で議論しはじめているということです。地域のタネをまもること、地域の農家を守ること、学校給食を無償化して、有機にすること、地域の食のシステムを再構築することなど。海外でも韓国でも行われている由。今治市は先進都市で、10年以上前から有機給食が行われ、有機農業の関心も高くなっている。最近では千葉県いすみ市も学校給食の無償化、有機化が行われているそうです。若いお母さん方の関心も高いので、このような動きがきっかけになって、地域の消費者、農家、漁師、流通企業、食品企業など多くの人達が関わって、ローカルな食のシステムへ転換する糸口になるのではないかとされました。
ローカルフード法案については、食糧安全保障の観点から、川田龍平参議院議員、鈴木宣弘東大教授らが法案を作成したもので、超党派で成立させたいと願っているものです。
安溪さんの配付資料に、そのサイトのURLが示されています。
https://localfood.jp/results
実現をめざすローカルフード法・条例とは?
以下のYoutube動画では、その経緯がわかりやすく語られています。
https://www.youtube.com/watch?v=yWL6002O7wU
ローカルフード法/条例サイト公開記者発表 川田龍平参議院議員
山口は三方海に囲まれて、自然に恵まれている。身近な自然に目を向けると、自然から、先人から色んなことが学べる。調理法を教えてもらうと、ヒントがいっぱい。
最後に、その3の話題提供も含めて、今回の第2回特別サロンに関するアンケート結果を村上ひとみさんがまとめていただいていますので、その結果を紹介しておきます。
5枚目には、アンケートの自由意見を参考までに示しておきます。
なお、質疑も活発でしたが、以下の通りです。
○小学校の時に朝顔を育て、タネを採って植えたり、ミニトマトからタネを採って植えたりしたことを思い出しながら聴いた。そもそも、なぜ勝手にタネを採ってはいけないとか、苗を買わなくてはならないとか、なぜそのようなことになったのでしょうか。
→ 一つは便利なものができちゃったからということがあるかと思う。意外に自分でタネを採るのは手間がかかる。大根の種だと、1,2月の収穫時期から花が咲いてタネができル5、6月くらいまで畑においておかなくてはならない。結構面倒だということがあると思う。ただ、農家の場合はもっと効率を上げることが求められると言うことがあっただろう。
○家庭菜園で自分もスイカやメロンの種を採ったりしている。接ぎ木による品種改良は規制の対象になるのか。
→ 種苗法の改正で接ぎ木も含まれることになった。ただ家庭菜園なら問題ない。ただし、とれた作物を売ることはできない。登録品種であることを知らなくっても罪になる。それも外観だけで判定されるということになった。
タネに関する法律に関して、家庭菜園であれば、タネの自家採種は問題ない. ただし、企業の登録品種の場合、その作物を売る場合は違反になる。
○有機農業に関心があるが、人間の排泄物を肥料として使うということについてはどう思われるか。
→ 山口県農協仁保支所から聞いた話では、人間は色んな薬や食べ物を食べているので、肉類の中には抗生物質も含まれているものもあり、意外によくない成分も含まれているということで、有機農業には問題があるのではと思う。
○屎尿の土壌処理をしているが、屎尿そのものよりも、それを土に戻したあとの土の成分が大事ではないか。
○昔は二里四方の物を食べなさいと言われていたが、今はよくない方に変わってきたので心配だ。野菜でもいつまでもぴんぴんしているのも変な感じがする。なにか漂白剤をうすめたようなものをかけているのではないかとか。食べ物によって内面的、外面的にも障がいが増えるのではないかと言うことも心配だ。何とかしなくてはと思うが、どういうつながりを持って行けばいいかと考える。
→ ゲノム編集のトマトを受け取らないでという要望書を、それぞれの市に提出していくことや、有機給食の動きを拡大していくとかでつながりができてくるのではと思う。また個人として市長に要望書を出すこともできる。「ヤッタネ!やまぐち」というグループもある。そういう動きが県内に広まってくれば良いのではないか。
○ゲノム編集をした食べ物を知らずに食べているかもしれないと思うと、これからどうなっていくのかと言うことに気づかされた。
○食料に不安がある社会になっているが、我々としてどうしたら良いか。
→ ロシアが大きな戦争などの危機に耐えられたのはダーチャといわわれる菜園付きの住宅があって、それで食糧を自給できたからだという説があると聴いたことがある。うべも休耕田が多いと思うので、少しずつからでも、初めて行ったら良いのではと思う。
→ 量販店に行って、除草剤の宣伝なんかに力を入れている店が多いが、一人の客として、こういうことはやめていただけないかということも、ちょこちょこ言うと案外、効果がある。産地表示がない場合に、どこでとれたんですかと、聴いてみるのもいい。スーパーなど消費者の声に敏感だ。
司会: 消費者が食べ物の生産者ともっとつながる必要がある。
消費者がもっと賢くならないといけないと思う。安全な食べ物、持続可能な農業ということにもっと関心を持たなくてはいけないと思う。
(その3 野村勝義さんの話題提供に続く)
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