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最近読んだ本の紹介 80’sある80年代の物語 橘玲

2020年08月15日

80’s (エイティーズ)
ある80年代の物語   橘玲(たちばなあきら)  を読んで


久しぶりにある作家の青春回想記を読んだ。70年代から80年代にかけて大学進学のため地方都市から東京に出てきた著者の疾風怒濤といっても良いような日本の現代史(主に出版業界周辺)の貴重な記録となっている。
著者にとっての「80’s」とは大学を卒業した1982年からオーム真理教による地下鉄サリン事件がおきた1995年までのことになるだろうとのこと。この「長い80年代」が僕の青春だったと。
 著者は高校時代にドストエフスキーの「罪と罰」にはじまり、「白痴」「悪霊」「カラマーゾフの兄弟」等の長編を1週間で読了してこの作家の魔術的な小説技法にはまってしまい、それが高じてW大の文学部ロシア文学科にすすんだ。しかしロシア語の授業を受けたもののロシア語で苦労して作品を読んでも倍感動できるわけではないことにやっと気づいて挫折。授業にも出なくなってしまった。
それからのことは本書でお読みいただくとして、私が1番興味を持ったのは後半のオーム真理教事件との関わりのところだった。「世界一安全な」はずの日本でカルト教団が化学兵器による大規模なテロをおこす前代未聞の事件を起こしてしまったのだ。高学歴の信者も多かった教団が何故に荒唐無稽な終末論や米軍関与説を信じてしまったのか?宗教は人の命を大事に考えるものではないのか?といった疑問が次から次へと湧いてきました。今思い出してもおぞましい出来事だっただけに感慨深いものがあります。
 なおこの本の解説は著者と同世代でW大出身の評論家、浅羽通明さんが担当されている。(本書205ページに実名で登場)編集者時代の著者と面識もあり、同時代を生きたもの同志の興味深いエピソードもあり楽しめた。

目次
 
Prologue No Woman,No Cry

1978-1981 雨上がりの夜空に

1982 ブルージーンズメモリ―

1983 見つめていたい

1984   雨音はショパンの調べ

1985-1995 DEPARTURES
                               
                         
1995-2008 マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン

Epilogue Redemption Song

あとがき

解説 浅羽通明


                     (文責:山本和)

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