第2回環境サロン 「循環型社会形成に関する最新の動向について」 樋口隆哉先生 の概要です。
2019年07月30日
中国のプラスチック廃棄物輸入禁止に端を発して、この1年半位の間に、国外、国内のプラスチック廃棄物の対策について動きが活発になっている。この辺りを含めて、循環型社会形成に関する最新動向について話題提供をお願いした。
話された内容は、
○循環型社会形成に関する国内政策、 ○日本におけるプラスチック対策と世界の動き
○話題提供(2,3のトピックス) である。
まず2018年に入ってからの、主な動きを年表にまとめて示された。
2018年4月に策定された第5次環境基本計画では、基本的方向性と絵して、以下の3点が上げられている。
① 環境・経済・社会の統合的向上
② 地域循環共生圏の創造
③ 幅広い関係者とのパートナーシップの強化
2018年6月の第4次循環型社会形成推進基本計画では、第5次環境基本計画の環境・経済・社会の統合的向上を意識して、以下の重点課題が上げられている。
① 地域循環共生圏による地域活性化
② ライフサイクルを考慮した資源循環
③ 災害廃棄物適正処理
④ 適正な国際的な資源循環
また、その進捗状況の評価のための指標として、
① 資源生産性(天然資源投入量に対するGDPの比率)
② 入り口側の循環利用率(循環利用量を含む原料投入量に対する循環利用量の割合) ③ 出口側の循環利用率(廃棄物発生量に対する循環利用量の割合)
④ 最終処分量
が上げられている。
これらは、左下の、一般廃棄物、産業廃棄物を合わせた物質フロー図から計算される値である。
さて、プラスチック対策についての日本と世界の動きについてであるが、中国によるプラスチック廃棄物の輸入禁止を受けて、ヨーロッパでは、いち早く、2018年1月に、積極的に新たなビジネスとして発展させることを期待する基本姿勢を打ち出している。デザインと生産に再使用、修理、リサイクルのための要求を反映させること、 プラスチックのより持続的で安全な消費生産パターンを社会が支持すること、によって、社会変革と起業を通して、経済の活性化につながることを期待しているということである。
具体的な取り組みとして、
2030年までに全てのプラスチック製容器包装を再使用あるいはリサイクル可能にすることとし、・再生プラスチックの需要拡大、・環境中への排出防止、・マイクロプラスチック対策、・イノベーション推進が上げられている。
日本においては、やや出遅れの印象があるが、2018年10月に「プラスチック・スマート」キャンペーンが開始され、取組みの具体例としては、
① 新素材の開発(生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック)、
② 代替品の利用(バリア性紙素材、セルロースフィルムなど)、
③ 使用量の削減(ラベルレス、ゼロウェイスト認証、ゼロウェイストカードゲーム、量り売り、詰め替え、付け替え)、
④ 散乱ごみ回収(スポごみなど)、
⑤ 研究面では、・ドローンdroneを活用した漂着プラスチックの計測、・デジタルビデオカメラによる川ごみ輸送量のモニタリング、・ハイパースペクトルカメラを用いたマイクロプラスチックの自動計測 が上げられている。
また、今年に入って2019年5月には、プラスチック資源循環戦略が発表され、3R+Renewable、3Rに加えてあたらしく持続可能な資源への代替の概念が加えられた。
マイルストーンとしては、
・2030年までにワンウェイのプラスチックを累積(他の方法も含めて)25%減
・2025年までに、プラ容器包装・製品デザインを分別容易のものにする、リユースかリサイクル難しい場合でもサーマルリサイクル
・2030年までに プラ容器包装の60%リユースかリサイクル
・2035年までに 全ての使用済みプラスチックをリユースかリサイクル、難しい場合は サーマルリサイクル含めて100%
・2030年までにプラスチックの再生材利用を倍増。バイオマスプラスチックを最大200万トンとする,
ことが目指されている。
さらに同時期に、海洋プラスチックごみ対策アクションプランが策定され、
① アジア諸国の輸入規制に対応して、国内処理体制を整備する
② 海洋流出防止対策の推進
③ 代替素材の開発
④ 実態把握・科学的知見の集積
に力を入れることとされている。
バーゼル条約2021年1月1日より 「汚れたプラスチクごみ」が々条約の規制対象物質になる。すなわち輸出国政府は輸入国政府に事前通告をし、同意の回答を得た上で、輸出業者、輸入業者にそれぞれ輸出国政府あるいは輸入国政府から承認が与えられる。要は輸入国の同意がないと輸出できないということである。「汚れたプラスチックごみ」の定義はまだ明確ではないようである。
これらの動きを受けて、輸出量は3割程度減少になり
PETボトル(自主回収・独自処理)や家電由来の廃プラは販路の振り替えで対応、生産加工品ロスの一部やPETボトルの一部は国内の産廃処理(サーマルリサイクルを含む)により処理される見込み。
国内の産廃プラの行く先が滞り、保管数量が多くなったり困っている状況があるので、環境省としては一般廃棄物処理施設で余裕があれば受け入れる要請を出しているとのことである。
その他トピックスとしては
ごみのポイ捨てを防ぐ心理的要因
プラスチック劣化過程のおけるメタン、エチレン等の温室効果ガスの発生
ごみ処理分野におけるIoT/AIの活用(収集ルート等の効率化、仕分け・分解・選別の自動化、焼却炉等プラント運転の高度化)などが紹介された。
ディスカッション
・温室効果ガスのプラスチックの分解過程での発生
→さほど大きくないかも知れないが、注意喚起のため。
・環境省の対応は手ぬるいと思う。生産者としてのメーターの責任が果たされていないのでないか。業界も安易に途上国に押しつけている。先生方にももっと強く発言してほしい。
散歩時にごみ拾いもするが、一向に減らない。子どもの時からの教育が大事だ。
→日本とヨーロッパとの考え方の違いもある。欧州は割に積極的姿勢。日本の場合は経済界への配慮をする傾向があるかもしれない。
・炭素税の導入の議論についても、産業界の反対で進まない。地球温暖化が問題なら炭素税をかけるのが有効な方法だと思う。
・メーカーが勝手につくりすぎだと思う。再生プラを使うという政策もカスケードで質が悪くので限界がある。生産者責任をもっと強めるべきではないか。
→NHKの番組で、我々の生活にプラスチック依存がいまはいかに大きいかを感じた。
・プラスチックのごみの清掃は大事。石油の中で、プラスチックに使われる部分は
・、さほど大きくない。燃料としての利用の方が大きい。温暖化だけを考えると、そちらの方が大事と思う。
→3%以下という情報もあり、石油化学基礎製品に使われるのは8%強。化学製品原料その他20%という情報もある。
・進捗指標の推移のところで、最終処分量はずいぶん減っている。産廃の影響が大きいのか。
・一般廃棄物施設の非効率化という表現も見えるが、その意味あいは。
→最終処分量の目標1300万トンというのは、物質フロー図で紹介したように一般廃棄物、産業廃棄物を合わせたものである。進捗指標は4つともこのフロー図によるものである。
→地域差もあるが、地方によっては、人口減や高齢化により、処理施設が非効率になる傾向があるということではないか。中長期的に適正化あるいは、効率的利用も考えなくてはならないということだと思う。
・廃棄物処理施設がもっとエネルギーを有効利用できるように工夫することが重要である。農業分野の利用などでは、より低温の熱の利用も可能である。
・その辺の、全国での特徴ある実施例などを示していたっだけるとありがたいのだが。
→広域化・集約化がすべていいとは限らない。そのような成功例はまだそう多くはないと思うが、中小規模の施設での発電等エネルギー有効利用について研究開発も行われている。
今回はめずらしく、「プラスチック廃棄物の適正処理」に関する別件のプログラムに関連して、工学部から4名の若手が参加してくれている。内容が多岐にわたり、わかりにくいところもあったと思うが、疑問点があれば後日ネット等で調べて確認して頂きたいと思う。
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