新山口のホテルで開催された地球温暖化セミナーに参加しました。
2019年02月13日
2月11日小郡のホテルで行われた気候ネットワーク主催のセミナーで、国立環境研究所の江守正多さん、気候ネットワークの平田仁子さん、山口市地球温暖化対策協議会の今村主税さんのお話を聴き、最新の状況を学びました。
江森さんの「異常気象・気候災害をどう受け止めるか?~IPCC1.5℃特別報告の最新科学~」のお話からは、昨年ポーランドのカトヴィツエで開催されたCOP24の成果として、2015年採択されたパリ協定の目標「2050年までに工業化以前から1.5℃~2.0℃の上昇にとどめる」について、1.5℃が島国の強い要請で盛り込まれた経緯を受け、検討されていた報告書が会議に先立ってまとめられたことと、パリ協定の約束のルールブックの作成が主な成果であったことが紹介された。
このIPCC1.5℃報告書では、現状ですでに工業化以前の状況から1℃上昇しており、1.5℃上昇は2040年前後に起こりうること、2℃と比べると海面が10cm低く保てるなど、その他、種々総合的に考えると、できる限り2℃よりも1.5℃以下に抑えることが求められる。そしてそのためには世界全体のCO2の人為的な排出量を2030年までに45%減少させ、2050年前後に正味ゼロにする必要があるとなっている。
そうなると、パリ協定で各国が表明している目標では2030年の削減量は全く足りず、さらに強化する必要があるということである。https://www.env.go.jp/press/files/jp/110087.pdf
またティッピング効果についても触れられ、永久凍土層の融解によるメタンやCO2の放出、海底のメタンハイドレートからのメタンの放出も温暖化の予測に考慮されていないようであり、2℃未満の達成で限界点を超えないという保証は必ずしも明瞭ではないとのことである。
われわれはこのような知見をどう受け止めるべきかについて、1.5℃未満の実現を目指すことは、持続可能な社会への取組を加速する機会になるとの前向きな姿勢で臨むべきではないかとされた。
平田さんの「COP24カトヴィツエ会議参加報告季候変動対策の世界動向」のお話では、
パリ協定の気温上昇を2℃未満に抑制し、1.5℃未満を目指すという目標達成のためには2020年以降対策を本格実施して2050年頃にはエネルギー部門のCO2排出量を実質ゼロにする必要があり、2℃目標のためには化石燃料の大半は地中に埋めておかなくてはならず、もはや石炭火力発電所の新設も認められないし、既存の石炭火力も削減して行かなくてはならならず、とくに先進国は2030年に石炭火力全廃が必要とされた。
COP24の成果である、パリ協定の実施指針ルールブックの合意については、全ての国の参加を前提に途上国に柔軟性を持たせつつ、各国が約束した対策実施の情報を提供して、行動を引き上げていく仕組み等を決め、目標と現状のギャップを埋めるための各主体の行動実施が最重要課題であるとされた。また途上国支援の拡大が急務とされたが、これについては資金援助等の強化が図られたとのこと。一方、炭素排出量取引に関しては課題を残したようである。
ギャップの大きさ、時間のなさという厳しい状況であるが、世界的には希望のもてる動きが出てきており、多くの企業が参加し始めていること、金融の面で 多くの投資家や金融機関が化石燃料への投資から撤退する動きがあることや、再生可能エネルギー100%イニシアティブや、脱石炭国際連盟の結成などの紹介があった。
一方、日本においてはこれまでの取組はかなり不十分で、日本の気候政策は国際的に評価が低く、60カ国中49位、石炭火力政策はG7中最下位である。現在、31基1739万kWの石炭火力があり、2012年以降の新設計画は50基2323万kW もある。
最近世界の逆風を受けて、計画中止も相次いだが、日本の石炭火力に明確な廃止計画がなく、パリ協定の約束を実施していくためには今後厳しい状況が予想され、悩ましい問題である。
宇部に計画されている大規模な石炭火力発電所新設計画についても、市民がもっと関心を持って反対の表明をすべきである。また、CO2問題だけではなく、PM2.5等の問題も考えるべきであるとされた。実際そのような動きが3つの計画の中止に結びついているとのこと。
今村さんの「山口の温暖化対策とエシカル・アクション」のお話では、まず、山口県の温室効果ガスの1990年から2015年までの推移が示され、特徴として産業部門からの排出量が多いこと、マイカーによるガソリン消費が山口市の場合は県庁所在地としては1,2位であることが示された。
次に、山口市地球温暖化対策協議会”温暖化とめるっちゃネットワーク”の活動として多様な活動をやっておられるが、とくに印象に残ったのは夏休みエコチェックシートの活動で、市内の23の小学校4年生員891名にエコチェックシートを配布し、8月の1ヶ月間チェックしてもらい、891名から回収したデータから、全体のCO2削減量は5.1トンに上ったと言うことである。
さらに、今村さんが中心になって進められているNPO法人フードバンク山口による食品ロスの有効利用の活動についての紹介もあった。すなわち、フードバンク山口が仲介して、フードバンクポストを設置したり、スパー等の協力企業から寄付を受けたりして、集めた食品を用いて、子ども食堂や生活困窮者支援団体などに届けて、喜ばれていると言うことであった。2017年には7トンの実績を上げられている。
質疑では、地球温暖化問題では、自分ごととして捉えにくいこともあり、多くの人を巻き込むことは、難しいと日頃感じている。演者の方々は、若い人たちも巻き込んだ、前向きの活動をされたり、あるいは直接見聞されたりする経験もあると思うが、そのあたりについてもう少しお話しを伺いたい。
これに対して、江守さんからは、スウェーデンで15才の少女が学校を休んで、地球温暖化対策を進めて欲しいことを訴える座り込みを国会議事堂まで行ったことが発端になり、その後SNSでも世界に広がって、オーストラリアで数千人の生徒や学生がストライキをして学校を休み、デモ行進をして、対策推進を訴えた動画を紹介された。
要は、大人達に任せておいても、ちっとも当てにならないので、自分たちが行動を起こすというこども達の純粋な気持ちである。この動きは世界に拡散しつつあるようである。発端になったグレタさんはCOP24の会場で演説も頼まれていて、動画でみることができる。江守さんは、必ずしも全員が全員同じ考えになることは不可欠ではなく、制度が確立されれば多くの人はそれに従ってくれるはずであり、常識も変わっていく。そのような動きに持って行くことが大事である。多勢で重い物を押して、なかなか動かないが、ある千を超えると動き出す、そんなイメージを持っているとされた。
平田さんからは、確かに、時間的余裕もなく危機感も感じる。運動に参加してくれる方々でも、地球温暖化ではぴんと来ないことも多く、石炭火力発電所反対の運動でも、大気汚染問題など身近な影響について問題意識を持って参加する人も多い。いずれにしても、もっと多くの人が現状をよく知って理解することがまず大事であるが、他に質問のあった、放射性廃棄物の地下処分の問題にしても、あまり議論がされていないというのが問題であるといった意見を述べられた。
マスメディアの役割も大きいように思われた。
クルマで来た人はカーボンオフセットでワンコインをということで、宇部の場合は大抵自転車なのでこれまで経験なく、500円を用意し、100円であったが、そのまま入れた。
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セミナーの翌日、太陽の活動と気候変動の関係がどのように絡むのかについて、考えてみたので、これについては稿をあらためて、紹介したいと思います。 (文責:浮田)
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