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11月22日の環境サロン、バブルタンク社による興味深い環境技術についての紹介です。

2018年12月11日

今回は地元の中小企業ではあるが、世界的に注目されている、気体と液体の接触を良くし、気液交換の効率を高める技術開発を長年行なってこられたバブルタンク社の藤里さんに、お願いして、これまで開発された装置の全体について、まとめて、紹介していただいた。

このたびの概要まとめは、これまでよく話を聞いてきたけれども体系立って理解し切れていないところがある司会者の立場から、自らの頭を整理しながら、要点をまとめさせていただいたことをご了解いただければと思う。

地元に、このような注目される技術開発が行われていることを誇りに思うとともに、是非、同社が経済的にも大きく成長発展されることを期待し、このまとめが少しでもそのお役に立てればと思う。

様々な装置等の写真は同社のHPより見ることができます。
http://ww52.tiki.ne.jp/~bubbletank/
https://blog.goo.ne.jp/bubbletank/images/?p=14

BT-50は初期に開発されたマイクロバブル発生器であり、次の動画で見ることができます。https://www.youtube.com/watch?v=VQ-1tye8oBI

マイクロバブルを用いた例として、広島の35階建て高層ビルの中水道用の処理施設で元々用いられていたオゾン溶解装置をアスピレーター式から、BT-50にやり変えて成功した例である。中水道管の初期投資は別として、年間電気代56万円で上水道・下水道使用料合わせて4100万円の節約になっているそうである。

また最近の例として、シーメンス社へ加圧浮上用のSUS製のマイクロバブル発生器を納入した際、スケールアップに工夫が必要であり、かなり苦労されたそうである。

さらに、ウナギ養殖場において、餌をやる際の酸欠を防ぐ対策として、PSAを通して酸素を富化してBT-50により高濃度に溶解させた水を供給することで摂餌効率を3割上げることに成功した例も紹介された。

さて、本題の気液接触方法の改善についてであるが、たとえば下水処理における曝気方法としては一般には微細気泡曝気が効率がいいとされてきた。藤里さんは液薄膜を形成させ、それがはじける際に、気液交換の効率が良いことに経験的に気づかれた。

液薄膜をつくる方法は、水圧を利用する方法と空気圧を利用する方法がある。
水圧を利用する方法は、広口のコニカルビーカーの底面近くに水道水を突入させることで液膜が生成する。その様子は以下の動画で確認できる。https://www.youtube.com/watch?v=YWsbzfShJrs


液薄膜は常圧下でも、加圧下あるいは減圧下でも形成することが可能であり、それによって様々な用途が開ける。これらの用途に多く使われているのがF.BT-50である。

例として、マイクロバブル温泉があるが、F.BT-50を用いて、加圧下の装置内で液薄膜を形成させ、空気を溶解させた水を常圧の水に注入すると、過飽和分の空気がマイクロバブルとなって、湯船の水を白濁させるというわけである。(左下の図の写真で上のパイプは加圧装置内の空気の取り入れ口であり、いくらか空気も含んだ水がBT-50の緑の部分に圧入される。)
湯田温泉のかめ福や大分県の温泉、東京の大きな銭湯、あるいは訪問介護要の石けん不要のマイクロバブルバスにも使われているそうだ。
また、アメリカでは活発な需要があり、F.BT-50とBT-50をセットとして、相当数輸出されているとのことである。

二つ目の右上の例は、カツオ漁船に、撒き餌用の魚を活かしておくためのタンパク質の泡沫分離の装置が導入され、酸素供給と水質浄化を兼ねた効果があり、成功を収めている。料理店等の魚の生け簀にも同様の装置が有効である。

右下の写真では、地下水から飲料水を製造するために、オゾン処理と過剰な炭酸分を除去する装置に、アスピレータに替えてF.BT-50が利用され、うまくいった例が示された。

そのほか、真空に近い条件下で、石油から不要な成分を除去したり、液体製品から溶存酸素をN2ガスで置き換えることによって、劣化を防ぐといったことにも応用されているとのことである。

一方、空気圧を利用した方法は、水圧を利用するよりエネルギー的には1/5以下とずいぶん有利である。

左下の図に見られるように、空気を様々なタイプのエアポンプで下から、長さ10cm以下、5~10mmφ程度の複数のエアリフト管(管状束)を通すことにより、その表面で液薄膜が連続的に形成される。

h型曝気装置は曝気機能の他に、処理すべき水を装置に移動導入できることが大きな特長である。右上の図に示されるように、貯水池の水質改善や、あるいは汚濁水路の水質改善に利用され、また下水圧送管路の硫化水素を除去して、管の破損を防ぐことについても利用が検討されている。

また、わずか22.7Wのエアポンプで120L/分の水が処理する非常に効率的にh型曝気装置を動かせることができ、最近注目されている。以下の動画で確認できる。
https://www.youtube.com/watch?v=39kKganGAcA

もう一つの装置はAWA-200であり、廃水処理に利用され、エアレーションの省エネ技術として注目されている。
かなり以前になるが、山口大学工学部の今井研を中心としたチームが下水道事業団の助成を得て、行われたパイロット実験では、宇部市の東部下水処理場でエアレーションタンクの表面近くにAWAの原型のような装置をかぶせて、下から上がってくる気泡を通すだけで、溶存酸素濃度が0.3ppmから3ppm程度まで高まることが確認された。

また韓国のLG電子の廃液処理装置にもAWAが用いられ、水質改善に役立っているそうである。

さらに水道の民営化で社会問題になっているが、世界的な水処理企業であるヴェオリア社からも注目され、アメリカの下水処理場でパイロット実験が行われたが、こちらの方は先方担当者の理解不足もあって採用に至らなかったようである。

エアレーションブースター(水中液膜形成装置)で研究している今井研修士課程の佐伯さんによる説明もあった。

産業廃棄物の最終処分場の浸出水処理における水質改善にも、F.BT-50、BT-50、多段のAWA曝気装置を利用することで、排出基準をクリアできるようになったとのことである。(左上)

そのほか、ワイン、牛乳など液体食品に溶解している空気を、空気をPSAに通して得た窒素主体の気体で置き換えて酸素を追い出すことにより、酸化防止剤を入れずに、変質劣化を防ぐなどなど、多様な用途の可能性が紹介された。(右上)

ところで、とくに下水処理の分野では、業界が既成概念にとらわれていることで、なかなか理解が得られにくい所があり、日本での普及は思うように進んでいない状況がある。また、ヘンリーの法則が曝気槽の水にも適用できるのかという基本的な問題もあり、学問的研究としても本格的に取り組む価値があると思われる。

藤里さんはこのような長年の経験に基づく新しい技術開発のほか、社会問題にも詳しく、驚かされることが多い。またトカラ列島のうねりのエネルギーで発電する特許もとられているそうである。

質疑応答では、あまり時間がなかったが、以下のような議論があった。
・新製品の開発にはお金がかなりかかるのではないか。故障はすくないか。
→経験によって、失敗はあまりない。金型をつくったりするのは、やはり何百万円する。故障は少ない方だが、あまりすくないと商売にならない面もある。
・昔は、マイクロバブルが主体の技術かと思っていたが、液薄膜の方に重点が移った印象をもった。オゾン関連技術など、管理しているポータルサイトで紹介したい。
・細かいところは難しくて分からないが、固定観念にとらわれずに、実地経験に基づいて頑張っておられて、期待したい。
→小企業の場合は、情報の広報、宣伝するにも限界がある。特許の取得、防衛も難しい面がある。どんどん新しいものをがんばって開発するしかない。幸い、興味を持って理解してくれた企業は積極的に普及を図ってくれる。
                                         (文責:浮田)

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