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省エネ空調の研究(その2) 「見える化」

2017年05月15日

省エネ空調(その1)では、温水または冷水の搬送において省エネルギーを実現するための最適の添加剤の分子構造を見つけるためには、まずパイプの中の流れを見えるようにすることが大切であることを説明しました。
前回のブログのURL: http://ubekuru.com/blog_view.php?id=4479
見えるようにすることを最近では多くの分野で、「見える化」と表現します。英語の「visualization」は科学の分野では「可視化」と表現します。見えないものを見えるようにして、新しい情報を得ることは科学の発達に欠かせないものです。特定のたんぱく質分子に蛍光線などに反応して発光する部位を遺伝子組み換えによって付加して、医薬品の開発などに応用されつつあります。また、特殊な放射線に反応して光る物質を薬剤に組み込み、人体の投与後、その薬剤が患部にどのように到達して滞在するのかを可視化する技術も開発されつつあります。例えば薬物動態研究に応用することで、薬物が全身の各臓器へどのように移行しどの経路で排出されるかを、同じ個体で、かつ非侵襲的に解明することができます。さらに薬物トランスポーターが関わる遺伝子多型や薬物相互作用の影響についても、分子の可視化技術を応用し、詳細な速度論的な評価ができると考えられ、今後創薬研究には欠かせないツールになります。

このような技術は、分子イメージング技術と呼ばれます。この技術は医学・薬学分野の科学の発達に大きく貢献しています。しかしながら、多くの場合、静止しているか、ごくゆっくりとした動きの分子の画像を得るには適していますが、分子が高速で移動している場合は、データを得ることが困難です。

 空調技術の話に戻ると、パイプの中を温水または冷水は通常、1秒間に1~2m(メートル)程度の速さで流れていきます。そのため、仮に分子を見えるようにしても瞬間的に通り過ぎていくため高速度カメラでとらえる必要があります。しかしながら、現在の高速度カメラは、電子顕微鏡のような高倍率(高解像度)の画像を得ることが出来ません。それゆえ、パイプの中の流れの可視化には別の技術が必要になるのです。
 ここで一つ、コーヒーカップの中をスプーンで攪拌する場合を考えましょう。例えばカプチーノをスプーンで少し混ぜると、表面近くは写真のような模様が出来ます。これも流れの可視化の一つです。カップの中はかき混ぜられて、渦が出来ていますが前回の台風の写真で説明したように、スプーンの攪拌で投入されたエネルギーは、大きい渦からだんだんと小さい渦の運動に枝分かれしていって、最後には分子同士の摩擦によってエネルギーは熱になって消費されます。この渦の運動エネルギーが熱エネルギーに変わって、コーヒーが温度上昇する程度は非常に小さいので、通常はスプーンでかき混ぜたからコーヒーが熱くなったと感じすことはありません。でも、周囲との熱のやり取りを断つ(断熱と言います)装置の中で、コーヒーをかき混ぜると温度は確かに上昇するのです。

さて、パイプの中の温水または冷水の可視化に戻ります。水の分子は秒速1m(メートル)以上の速度で下流に向かって流れて行き、同時に流れの中で小さい渦に分かれていきます。幸いなことに、隣り合った分子同士は、分子間の相互作用によって弱い結合状態にあります。このため、ある程度小さい渦は摩擦による発熱が大きくて、それ以上小さい渦に分かれることなく、投入されたエネルギーと発熱量がバランスするようになります。それゆえ、このような流れでは、分子1個、1個の運動を見る必要はなく、摩擦によるエネルギーの発熱(これを専門用語では「粘性消散」と言います)の代表的な渦よりも大きい渦の運動を見ればよいのです。ちなみに、直径が2.5cm(センチメートル)のパイプの中を、毎秒1m(メートル)の速度で流れている場合、最小の渦は数ミクロン(1ミクロンは千分の1ミリメートル)程度であると言われています。人の髪の毛の直径が50ミクロン程度ですから、髪の毛の十分の一程度の渦まで可視化する必要があるという事です。通常は、この渦の直径よりも小さいセンサーを流れの中に入れて、そのセンサーからの情報を取り出す実験を行います。よく使われるのは熱線流速計という装置です。
 皆さんが、戸外で風がどちらから吹いてくるのかを知るために、指を湿らせて立てると冷たく感じることができます。この冷たい方向が風の吹いてくる方向です。これは、指から熱が奪われることを知覚神経が感じ取るからです。下図に示すように、直径が数ミクロンのワイヤーを支柱の間に張り、このワイヤーを風の中に置きます。ワイヤーの温度と抵抗は直線的な比例関係があるので、抵抗を測るとワイヤーがどの程度冷やされているかが分かり、これからその時の風の速度を知ることができるのです。

 熱線流速系は手軽に使われるのですが、省エネ空調で使おうとしている特殊な流れでは、正確な速度を測定することができないことが多くの研究者によって報告されています。前回(省エネ空調技術 その1)、説明したトムズさんが発見して、その後、省エネ技術として検討されてきた特殊な流れでは、冷水または温水に網目状の分子の集合体を、ごく微量添加してやります。下図は逆性石鹸の一種である界面活性剤を主体とする添加物が、ネッドワーク構造を作っている写真です。(クライオTEMと言う装置を使って、分子の集合体を凍結状態で撮った電子顕微鏡の写真です。)このような物質が水の中にあると、熱戦の周りの流れが滞って、風が吹いても温度が下がらない現象が生じて、熱線流速計で測定した実験結果は、国際会議などでは信用してもらえないのです。

 電子顕微鏡写真もある種の可視化なのですが、残念なことに毎秒1メートルもの速度で流れている写真は電子顕微鏡では観察できません。一方、高速度カメラは解像度か悪くて分子集合体の画像を見ることができません。ところが、幸いなことに私たちが考えている省エネ空調の流れでは、数ミクロン以上の画像をとらえることができると良いのです。初の入道雲を見ると、私たちは空の高いところで積乱雲が発達して、雷を伴う夕立がやがてやってくることを予想できます。このように流れの中に、目に見える小さな粒子を入れておいて、その粒子の動きを捉えれば良いのです。直径数ミクロンで、水とほとんど重さが変わらない(比重が水とほぼ同じ)微粒子としてはポリスチレン微粒子があります。直径2~3ミクロン程度のポリスチレン粒子を冷水(または温水)に分散させて、その粒子の運動を追跡しようとすると、高速度カメラでは倍率が低くて粒子を観察することができません。そこで考案されたのが「ドップラー流速計」と言う装置です。
 皆さんは救急車が近づいてくるときの「ピーポー、ピーポー」と言う警笛と、遠ざかるときの音は高さが違うことをよく経験しますね。これは、音の発生源とその速度、それを聞く人の位置によって生じるドップラー効果によるものなのです。次回は、ドップラーさんがこの効果を発見した経緯、それを高速の流れの中の微粒子の速度測定に応用する技術を説明しましょう。(HU)

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