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第19回環境サロン「インドネシアの森林火災とCO2削減に係るCDMの可能性」の概要です。

2016年03月22日

遅くなりましたが、3月14日に行われました山本浩一先生の標記環境サロンの概要をまとめました。

以下概要要旨です。

2011年の世界のCO2排出量は318億トン、中国が26.9%、米国が16.6%を占める。

土地利用などから出るものを含めると、数値は変わってくると思われる。

一人当たりでは日本人は9.2トン、アメリカは16.9ドン、中国は6.4トンである。いずれもCO2トン。

2012年の日本のCO2排出量は12.75億トンであり、原発休止後、排出量は上がっている。このうち、電力の占める割合は4.86億トンで38%を占める。

インドネシアには泥炭湿地林がおおく残されてきたが、近年急速に、パルプ原料用のアカシアのプランテーションやパームオイルの生産のための油ヤシのプランテーションによって、開発が進められている。
ちなみにカリマンタンでは1995年~1998年の間にスハルト大統領の方針によってメガライスプロジェクトが進められたが、失敗に終わり、アブラヤシの栽培に切り替わっている。

収穫物の運搬用に深さ3,4m、幅30mもの運河を掘り、そのために地下水位が低下し、泥炭の参加が進行する。

泥炭の表層20cm程度には未分解の植物遺体が多く、下層は泥炭で未分解の植物残渣と腐植が多い。泥炭は、分解速度の遅い冷帯や熱帯の低湿地にも存在し、巨大な炭素量が蓄積されている。

ブンカリス島で採取したコアを見てみると、表層の部分はポソポソしたsapric(腐朽)と呼ばれるより分解が進んだ状態であるが、5.5mの深さのコアサンプルではfibric(繊維質)と呼ばれるまだ分解の進行していない泥炭である。
乾燥すると水が抜けることで収縮がおこり、また分解によっても縮むので地盤沈下にもつながる。

深度別の腐植化度を調べてみると地下水位を境に、それより上にある部分では腐植化度が高くなってくることを、最近、山本研究室の研究で確認している。

2001年にフリーマン等によって発表された酵素ラッチ説は、酸素がない状態ではポリフェノールが泥炭の分解を促進するフェノールオキシダーゼを阻害しているが、
酸素があると、その酵素が働いて、ポリフェノールを分解するため、泥炭の分解が加速化されると言うものである。
一旦火災が起きて、表層泥炭層が乾燥すると、生物酸化が促進されることにも注意が必要である。

右上の写真は、調査用ドローンを離陸させるときに舞い上がった泥炭表層の土ぼこりであり、粉状で非常に舞い上がりやすく着火しやすい。

左下の写真は泥炭地森林火災の状況で、泥炭層までくすぶり続け、雨季にならないと鎮火しない。おそらく木の根も焼かれているだろうとのことである。カリマンタンは土の透水性がよく、比較的地下水が利用しやすく、リアウ州に比べると消火しやすいということである。

右下のスライドはインドネシアにおける各年における、森林火災ホットスポットの数とCO2排出量の関係をしめしたものであるが、2015年は10月15日までの時点で10億トンと、日本の排出量に迫るような量になっていることが報告されている。

だいたい、エルニーニョの強い年が多い。これまでの最大の年は1997年で一説にはCO2だけで35億トンの排出があったとのことである。このほかN2Oもいくらか寄与する。また、ヘイズによってCO濃度も高まることも指摘されている。

さて、CDMとは先進国が開発途上国において技術・資金等の支援を行い、温室効果ガス排出量の削減または吸収量を増加する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を支援側国の温室効果ガス排出量の削減に充当する制度のことであり、る。第11回COP21で採択された京都議定書の第12条に規定されている京都メカニズムの1つである。

ちなみに最近よくきかれるREDD+とは、途上国に対し森林保全に経済的インセンティブを提供することで、森林を伐採するよりも残す方を経済的価値の高いものにしよう
という試みのことである。


最近はCDMより二国間クレジット制度JCMの方がクローズアップされてきているようであるが、上段に示す環境省の文書によると、JCMもCOP21で温暖化ガス削減の制度として認められたことを受けて、国としても力を入れ始めたようである。

いずれにしてもMRV(Measurement, Reporting, Verification)がうまく機能する必要があり、森林火災防止がCO2発生抑制がCDMあるいはJCMとして評価されるには、抑制効果の推定方法や、効果の継続性などの点で、課題が残されている。

インドネシアには2千万haを超える泥炭地があり、泥炭地からの温暖化ガスの排出量は2030年には10億トンを超えると推定されている。
また、マレー半島、ニュギニアを含む南西アジアの泥炭地の炭素蓄積量は概算で420億トンと推定されている。
http://www.biogeosciences.net/7/1505/2010/bg-7-1505-2010.pdf

パプアニューギニアやマレーシアのサラワクにはhistosolという有機質土壌として分類されている地域もある。

右上の図のブンカリス県の8つの郡(Sub-district)が森林火災のホットスポットの多い重点地域になっていることがわかる。

宇部市は泥炭地対策の重点地域であるスマトラのリアウ州ブンカリス県とJICA草の根技術協力事業を3年間実施し、これまで21名の行政幹部等の研修員を受け入れ、昨年度「ブンカリスケン環境基本計画」が策定されている。

アカシア人工林も広大であるが、大企業の管理で森林火災の発生源になることは少ない傾向がある。

これに対して、そのプランテーションは小規模なものも多く、更新時期に、手っ取り早く焼いてしまうことがあるそうである。
 油ヤシはすでに植物の中で、地球上最大のバイオマス存在量を持つに至っているという説もある。

質疑では、温暖化防止では住民は動かないだろうから、やはりヘイズによる健康被害、物的被害などの点から訴えていく事が大事ではないか、西沖石炭火力の環境影響評価で是非、JCM的要素を取り上げて欲しい、ことなどが議論された。

森林火災防止がCO2発生抑制がCDMとして評価されるには、まだハードルがあるとはいえ、この問題は、温暖化防止だけではなく、生物多様性にも絡んでくる。大気汚染による健康被害や、財産に及ぶ被害などを前面に出して、安易に火入れをしないという、啓発活動に力を入れるべきであると思われました。

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