環境サロン「世代間の対話~こころの環境問題」第6回 「宇部工業高等学校における環境教育と生徒指導」山口県立宇部工業高等学校 大濱信治先生 平成25年12月19日(木)18;30~20:30 山口大学工学部社会建設工学科会議室
2013年12月21日
大濱先生は、宇部工業高校から推薦で宮崎大学工学部工業化学科に入り、58年に卒業して、大王製紙の現場で約一年勤めたが、一族会社の社風に合わずやめた。その中で、現場環境の厳しさも経験したし、環境問題にも関心を持たれたそうである。
その後、山口県教員試験を受けて、養護学校、下松工業、美祢工業を経て、宇部工業高校に移った。この学校は大正9年山口県の工業学校として創立された古い歴史と伝統を持ち、校訓は「誠と熱」であり、「工の技をいそしみて御世の恵みにむくいなん」と校歌にうたわれている。
実際の工場現場は、三交替勤務(4斑体制の場合一勤、三勤、二勤をそれぞれ3日やって1日休む方式)がある。命にも関わる危険がいっぱいなので、危機管理能力、危険察知能力、コミュニケーション能力(報告・連絡・相談いわゆる、ほう れん そう)を身につけさせる教育をしている。
安全操業のための秘訣として、まず危険回避のために人の知恵と人の和が絶対に必要であり、これがないと事故発生につながる。
生徒指導に当たっては、家庭内の状況、夜更かし、ゲーム依存、引きこもり、喫煙など生徒の多様化を認識して、毎日真剣に向き合っている。ショートホームルーム時に生徒達の朝の顔色、目の力、朝食を摂ってきているかなど、注意して観察することにしている。
きちんとした食事をとること、糖分を摂りすぎない、ミネラルをしっかり摂る、体を冷やさない、用は健康が基本であるといったことも教えている。
最近気を付けていることとして、生徒のおかれている環境を知る上で、好まれている雑誌、携帯ゲーム、サイトなどのリサーチをして生徒との接点を模索すること、そして、授業中は寝させない、厳しい部活をしている生徒が居眠ることもあるが、自分の経験談や趣味談を交えて興味を持たせたり、時々立腰教育をして集中力を付けさせている。東京出張の折りには浅草演芸ホールの寄席に行くことが多いが、そこで雰囲気の感じかた、授業の間合いの取り方などを勉強している、
このような伝統の中で、先輩達の力もあり、生徒の就職率100%を維持している。
次に、環境学習プログラムであるが、地球環境科学という授業では、地球に起きている大気、水、土壌など様々な問題を説明している。また、積極的に産官学の外部と交流して、生徒達の視野を広げるようにしている。例として、産官学の連携による研究活動への参加、その成果を小中学校や地域社会へ伝達する活動、宇部高専で講義を受けたり、実験をさせてもらったりもやっている。
最近の課題研究活動としては、ミストを利用したみどりのカーテン事業、これにヒントを得たクーラー室外機周辺をミストで冷却することによる節電効果、SMCの通常エア用のチューブ(20mが3千円程度)と継ぎ手(何百円/個)を水にも用いたミスト発生装置(ノズルは千円/個)の改良、バイオジーゼル製造のモデルプラントの設置などがある。
課題研究は週2時間まとめ取りをして6時間5,6週続けてやる。
やらせるときに気をつけていることは、生徒に自由にやらせる。我慢して口を出さない。手を出さない。失敗しても勉強になる。そして、生徒自らが考える、チームで取り組む力を育成する、相手のいいところを見て、悪いところは見ず、自分が変わることが大事で、これで対人関係がうまくいく。目的を達成させるために工夫力を育てる。
生徒達は、ゴーヤの生育を観察することで、MgやFeなどのミネラルの重要性を理解する。室外機の節電効果はノズルを1個付けただけで、8月に200kwhの節約ができた。 これらの体験を通して色々な人たちと接して世間が広くなったり、得られた成果を小学校の環境学習で教えることで、達成感や自信に繋がり、教えることの大変さも理解する。
生徒達は3年間で、ものづくりの関わりを大切にする、新エネの開発の必要性を理解する、作業に集中する、働くことの意義を理解する、他人と協力・協働する、自ら学ぼうとする自主性の向上、専門科目の大切さを理解する力等を身につける。
教員の側も、環境への関心が向上する、大学や高専の相互理解、同じく編入について繋がりの強化、知的財産と経済の関係理解、最先端技術とローテク手仕事の関係などに理解が進む。
日頃の声かけ、挨拶は当たり前、自分の思いを伝えられるコミュニケーション能力、食育と健康作りが大事だ。
ディスカッション
○幅広いお話で、大学の先生にも聞いてもらいたいような話だった。
○生徒との対応仕方について、参考になった。大学の前は高専に2年勤めていたが、教員と生徒との距離感は大学より近かった。大学での学生とのつきあい方は試行錯誤している。学生とのそれぞれの対応の仕方について
→自分の趣味を通して学生との距離感を縮めるとか、つながるのもいいのでは。ま大学生はお酒を飲めるので、ノミニケーションができるのではないか。宮崎大学新歓コンパで1人1升の焼酎が出た。青島コンパではた工学部5学科が集まった先生も交えてコンパでもやはり1人1升の焼酎を飲みながら相撲、青島1周マラソンなどというのもあった。
○学生のしかり方はどうしたらいいか。あとのフォローのしかたは。
→生徒達に接する仕方は状況によって様々である。叱るときは思い切り叱る。納得させること。色々しかり方はある。言っちゃいけないこともある。あといいことはすごくほめる。タイミングは大事だが、もちろん日頃のコミュニケーションがまず大事。知らない生徒でも日頃から言葉をかけるようにしている。
○立腰教育はどんなときにやられるのか。
→立腰教育の時間がある。テストの時間には絶対寝させない。また、実習をする前に必ず、集団行動訓練も取り入れている。8人5斑の生徒を走らせたあと、8秒で整列させ、気をつけ、礼をし、服装をチェックする。目を閉じて5分間静止して精神統一させる。製造現場での経験が役に立っている。
○企業経験の1年目向上の労務をしていた。現場で3交替に入る、新しいことを身につけなければならない。大変である。対人関係の中では、主任にかかってくる。自分で判断せず、主任の言うとおりにすることが大事。会社はカネをもらいながら、学ぶのだから
工業高校出で現場のたたき上げの人が多く、事故防止にも主任の経験がものをいう。
→主任はカリスマ性がないといけない。その伝承が大事になっている。事故の起きる前には経験を積んだ人の第6感が大事。
工業高校の職員の間でも、旋盤などの技術の伝承が問題になっている。
C: 会社の中では、階級が一つ上がる段階で必ず教育を受ける。教育するとき、会社のための教育ではなく、あなたのための教育だよと言うことを常に心がけていた。
○今でも高専の学生さんが教えたりしていますか。
→今はやられていない。
○なぜ先生になったのですか。
→もともと先生になるとは思わなかった。工業高校の元の先生に大変お世話になった。その恩返しということもある。自分のように母校で教える影響のある先生になる後輩を育てたいという気持ちもある。色々なタイプの先生がいていいのだと思う。本物を見せてもらったり、色んな話をしてもらって、影響を受けた。色々な人を知っていることが大事。趣味も大事だと思う。色々な体験をする。自分の逃げ場でもある。
想像力を付けるためには、食育、健康、読書
○先生が食育に力を入れられているのに感心した。大変有意義なお話でした。
Youtubenoアドレスは以下です。ここで要約した他にも色々興味深いお話が聞けますので、視聴してみてください。 http://youtu.be/AH_XiK7rUOw
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