10月17日 環境サロン「小学校における環境学習の現状について」三好保雄先生にお話をお聴きし、活発な議論が行われました。
2013年10月19日
三好先生は、現在見初小学校の現役教諭ですが、宇部市地球温暖化対策ネットワークの幹事を長くしていただいているなど、環境問題にもたいへん熱心な先生です。
お話の前半では、環境学習にもっとも関係の深い、3年生から6年生までの理科の教科書の内容を示され、ご自身のやられた授業の模様を、ビデオや写真を示しながら、説明していただきました。
・6年生の理科で、植物の光合成を調べるため、息を吹き込んで二酸化炭素の濃度を上げたビニール袋をかぶせ、2時間後に酸素濃度と二酸化炭素の濃度の変化を測ったり、光の有無によるデンプン量の違いを見る授業。
昔と違い、いまのこども達は随分高度なことを勉強しているんだなあとの感想を持ちました。
その他、
・校庭で虫を調べる 3年生の授業や、宇部興産アイプラザ・美祢市伊佐の石灰採掘場・里山などへの社会見学の模様、5年生の、「流れる水のはたらき」で、大雨の降った後の川のビデオを見せたり、簡単な流水実験をやったり、実際に厚東川の蛇行の現場であらかじめビデオを撮影しておいたものを見せて、川の瀬と淵のでき方を理解させる授業などである。
総合的学習の時間は英語教育が入ったので、環境学習の内容も減っているが、環境教育としては、そのほか、社会科の中にもあるし、家庭科の中にもあるということである。
なるほど理科一つとっても、なかなか先生達のご苦労はたいへんだなということがよくわかりました。
議論
Q:小学校は先生が全教科を教えられると思うが、このような充実した授業を全ての先生がやられるのはむずかしいのではないか。
A:教務主任の時代は自分が4年生以上の理科の授業を担当した。今は3年生担当で全教科を教えている。昔は理科専科がおられた。今は、教頭先生か教務主任が理科担当している。理科支援員の方がいてくれると少し楽である。
Q:ITの利用状況はどうか。また小学校の先生は忙しいと聞いているが、どういう状況なのか。
A:今の小学校は1学年1クラスなので、各教室にプロジェクターは使える。また書架カメラがあって教科書を映し出せるようになっている。PPTをつくって使う先生も増えている。チョーク1本でやる人もいる。
たしかに忙しい。昼休みはないような状況。運動会練習シーズンには応援団の指導、 市の音楽祭の練習だとか、配慮の必要な子もいるし、一緒に遊びながらこども達から目が離せない。調査ものも多い。土曜日があった時代の方がむしろ、余裕があった気がする。土曜がなくなってから、平日にしわ寄せがきて忙しくなった面もある。体力勝負という感じがある。
山口県は恵まれている方だが、理科や音楽の専科の先生もあればいい。支援員は増えている。
Q:最近、環境問題への関心が低下していると思うが、学校側から、PTAに働きかけはしているのか。
A:フィフティ・フィフティ活動をやっていたときは活発だったと思う。4年生で段ボールコンポストを経験させている。
Q:教育委員会から学校に環境教育についてなにか言ってくることはあるか。
A:あまりない。今はいじめ問題に関することなどが多い。それとやはり学力向上のこと。教員同士の情報交換などが活発になるメリットはあるが、順位の公表はプレッシャーになる。教育委員会も非常に忙しい。
Q:環境学習担当の先生がおられると思うが、学校間の連絡会などあるのか。
A:理科とか、総合的な学習の時間とか教科単位ではあるが、環境学習としてはない。
Q:外部から、環境学習を手伝いたいと申し込んだらどうなるか。
A:教育委員会を窓口にして、各学校で検討されるだろうが可能だと思う。こども達も外部からの授業だと興味を持つことが多い。教育委員会からリストが回ってくることもある。
4月の早い時期に出すと、理科、社会、総合的学習の教科の中で、調整される可能性はある。イベントのチラシは、夏休み近くではなく7月の初めに出されるといい.
C:宇部市地球温暖化対策ネットワークが窓口になって、「省エネ環境学習教育」として出前授業のリストを作成して、校長会に提出しているが、一部を除いてあまり利用はされていない。
Q:美祢への社会見学は全市的にやられているのか。
A:3年生で地元の工場などへ見学する。美祢まで行くのは1/3くらい全部ではない。
Q:一日仕事になると思うが。
A:学校行事、社会、理科に時間を充当して実施される。
Q:こども達は年々変わってきていますか。
A:もちろん全部ではないけれども、がまんができなくなっている。自分の意見が通らないとだだをこねる。けんかは対応できるが、いじめの限度がわからない。友達関係が下手。群れで遊ぶという経験がない。ゲームをやりすぎ。その影響でけんかでけりがはいる。寝る時間が遅くなってきた。食べっぷりが悪くなった。昔は残すことはなかった。地域であいさつができない。元気な子がすくなくなっている。特別支援、発達障害が増えてきた。短期記憶が少ない傾向。これもあそびと関係があるかもしれない。うまく支援して、育てることが大事。つねに全体に目を配るように授業することが必要。こども達の注意を引きつける工夫が大事になっている。成功体験をもたせることが大切。
漢字学習の指書き、ノートはきれいに書かせる、算数の計算もスペースを考えてやらせると、間違いが少なくなるなど工夫が必要。
Q:親御さんも変わってきているか。
A:子供の言い分だけを聞く親御さんが多くなった傾向がある。子供は嘘は言わないが、抜かしていることもある。子供を諭して教える昔の育て方を見直す動きが出てきている。
Q:テレビの影響も大きい。コマーシャルの影響などがすべてに行き渡っているのでは。ゲームをやらないと仲間はずれになるというようなこともあるのでは。こういう文化を考えないといけないのではないか。理科の教える内容も多すぎるように思う。先生も親も忙しすぎる。
A:子供もついて行けない子が出てきているのかもしれない。いまはテレビの流行語で「倍返し」をよく使う。先生にかまってもらいたい、見てもらいたい子供もいる。ある意味で愛情に飢えているのかもしれない。親の前でいい子で学校でわがままを出す子もいる。LINEなどでフェイスtoファイスではなく、言葉で傷つく。3歳6歳9歳は非常に大事。
Q:宇部市におけるESD(持続可能社会のための教育)の現状はどうか。
A:図書館のコーナーに教科書があるが、全国的に各教科で環境問題が盛り込まれている。
Q:将来、教師志望だが、たいへんそうだが、こども達に合わせて行かなくてはならないのか、また、しかり方はどうすればいいか。
A:教師はとってもいい仕事。覚悟がいる。やるぞという強い気持ち。しっかりした考え方を持っていること。仕切ること、教え方の技術も大事。ヒストリア宇部で月2回、教え方の研究会をしている。
しかり方は、体罰は禁止。体罰で人が動くということはない。指導力があれば子供はついてくる。友達を力でいじめたりしているときに、力で止めることは体罰とは違う。
どなってもいけない。自分に言われてなくても、すごく腹を立てる子どももいる。
できていない子どもを叱るより、できている子どもをほめる。ほめることが大事。
その子が自分をどう思っているかを想像して関わることと言われている。よく観察することが大事。
Q:放射線に対する副読本が今年配布されたようだが、どうなっているか。
A:福島事故以前につくられたものだったので、その後回収された。中学校の理科で、放射線に関する時間が復活している。
Q:道徳教育はどのような体制でやられているか。
A:教科ではないが、副読本を中心に、35時間とられている。イチローの話や、いじめを対象にした話もある。低学年ではマナー、高学年では、考えるということに重点が置かれる。かつて、道徳は戦前の修身の復活になることが懸念され、道徳の授業自体を行うかどうかが議論されたが、最近子どもたちの規範意識の低下を懸念して、重視されてきている。
副読本を読んだ感想を書かせ、黒板にかかせて、議論する。ソーシャルスキルカルタをつくったりもしている。たとえば「・・・かかとをそろえてくつばこへ」など、効果がある。
Youtubeは以下でご覧いただけます。
http://www.youtube.com/watch?v=1b6m9KxsvnA
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