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第10回環境サロンは医学的側面から環境問題を考えました。

2017年12月27日

今回のサロンでは宇部志立市民大学環境学部OB会の企画で、関門医療センターの病理医をされている村上先生を講師にお迎えして、病理医のお仕事や病気の分類の考え方、環境と病気の関係などについて、教えていただきました。ブログのまとめは、OB会の山切睦彦さんにお願いしたものにすこし手を加えさせていただきました。

[講演概要]
 講師は先ずご自身の専門である「病理学」とはどのようなものか、病理医はどのような仕事、役割を果たしているのかについて話され、その上で、
自分は病理医であり、公衆衛生学、疫学の専門家でないので、環境問題について話すことは難しい。臨床医であれば、個々の公害病を列挙し、その原因物質、症状、検査、治療、予防について、具体的に、つまり「各論」の話が出来る。これに対し、病理医は治療はしないが、非常に多くの病気を診断する、病気の「総論」に携わっている。そこで本日は、病気をいくつかの範疇に分類してお話したい。これが本日の話の中心になる。病理医は、問題となっている病態が、この分類のどれに当たるかをまず判断し、さらに下位の分類を鑑別してゆき、最終的な病名に至る。この最初の分類が病気診断の大事な入口だ。この分類の中に環境因子による病気も含まれるので、「どんな環境因子が、どのタイプの病気を引き起こすか」についてお話したい。そのことをお話しすることで、私に与えられた演題(医学的側面から見た環境問題)の責めを果たしたい。

講師は、このように本日、お話される全体構想を説明され、無数にある病気を、ざっくり2種類の分類法により分けて話された。一つは、「病気の成り立ち分類」であり、もう一つが「DNA(染色体・遺伝子)変異による分類」である。この大分類のもとに、中分類、小分類があり、これに基づき、詳しい説明がなされた。

Ⅰ「病気の成り立ち分類」
□ 後天性疾患
⑴ 受け身の病気と能動的な病気
外傷の初期など、体がその障害から(まだ)治ろうとしていない「受け身的」状態と病気の治ってゆく過程「能動的(=炎症)」とがある。前者の治療原則は原因除去と障害部位の保護である。後者は治療が難しい。ステロイド治療など。  
細菌などの障害性異物と戦う白血球を抗生剤などで支援する必要があるが、白血球がやり過ぎて必要以上に正常組織を破壊しないようにコントロールするさじ加減が大事である。
アレルギーは重大な障害を与える異物ではないのに過剰反応(攻撃)して起こる症状。例は花粉症。例えれば、「こそ泥」にミサイルで攻撃し、その結果、町全体が壊滅するようなもの。
⑶ 腫瘍
人間の体は細胞から出来ている。その細胞は単なる集まりでなく、それぞれの役割を持っている。そのために互いに協力し合っている。     
 増殖すべき時は共に増殖し、休むときは共に休むし、死ぬときは共に死ぬ.(垢になり汚物を絡めとる役目を果たして死ぬ)このような細胞の協力の秩序を破って、勝手気ままにふるまい増殖するのが腫瘍である。
腫瘍には良性と悪性がある。両者の区分は「死に至らない程度の増殖・振る舞い」と「(治療しないと)死に至るもの」による。癌は掘っておくとどんどん悪化するので早期発見が大事である

□ 先天性疾患
⑴ 単一遺伝子病
 一個の遺伝子の変異による病気。メンデルの法則に従って必ず遺伝する。血友病など。
⑵ 染色体遺伝異常症
 ゲノムのひとかたまりである「染色体」の構造異常。複数の遺伝子に異常が生じる。遺伝することもある。ダウン症など。
⑶ 多因子遺伝病
 ほとんどの病気がこの多因子遺伝病。(例・くも膜下出血)。⑴ ほど遺伝性は強くない(家系的にやや多い、程度)。病気によって遺伝の程度も異なる。くも膜下出血は祖父、父が発症している人は必ず検査すること。昔は手術が難しく悩ましい病気だったが、今は完全に事前予防が可能になっている。
⑷ 外因による先天異常
 遺伝子に全く関係なく、母体の胎内環境の異常による発生する。先天性水俣病、カネミ油症事件(PCB)の黒い赤ちゃん等、環境関連の症状(公害)が多い。

Ⅱ「DNA(染色体・遺伝子)変異による分類」
 次に、別の分類法として、原因因子がDNAに変異を与えた結果による病気か、そうでないかで二分し、さらに前者を、遺伝しない病気か、遺伝する病気に分け、以下の3つに分類する。
⑴ D-N1「原因因子がDNAを変異させた結果の病気」で、遺伝しない病気
典型が「がん」。がんは一部の部位のDNAに変異が起こるが、精子・卵子のDNAには変異が起こらないので遺伝しない。先の分類の先天性疾患のうちでも外印による先天異常などはこの範疇に入る。
⑵ D-1 「原因因子がDNAを変異させた結果の病気」で遺伝する病気
精子・卵子のDNAに変異があり、かつ「児として誕生出来る」ことが必要になる。精子・卵子のDNAに変異が起こった場合、精巣がんや卵巣がんになるが、生殖が出来ないので、実際、遺伝することは少ない。先の分類の後天性疾患はD-1に該当する病気はない。
⑶ N 「原因因子がDNAを変異させた結果の病気」でない病気(DNA非変異疾患)
 このケースが圧倒的に多い。その理由は、DNAの大切な部分はわずかしかないから、そこに変異が当たることはめったにないためと、人体はDNAに変異が起こってもすぐに修復するため。

Ⅲ 環境因子による病気の成り立ち
 最後に、「環境因子がもたらす病気分類のフローチャートに基づき、そのフローチャートから読み取れる「環境因子もたらす病気」の特徴についての説明された。主な公害病として、
(1) 先天性水俣病
 有機水銀が原因。有機水銀自体はそれほど急性毒性は高くない。このため早発障害がない。魚の体内に蓄積された有機水銀が濃縮され(魚は死なない)、その魚を長年にわたり食べた人間の脳に沈着して発生する。
 (2) イタイイタイ病
 カドミウムが原因。カドミウムに触れて即発症と言う症例(早発障害)はない。骨が解けて骨折することによる痛み。その症状がずっと続くこと
はあっても、それ以外の症状の発症は確認されていない。
 (3) カネミ油症
PCBによる色素沈着(黒い赤ちゃん)、神経、消化器障害が発症。
   その他、四日市公害(喘息)、クボタショック(アスベスト)等

Ⅳ 質疑応答
◇がんになりやすいとか、ケガしやすい体質は遺伝するか。
~いろんな因子の組み合わせで発生する可能性が高いと言われている。ケガがしやすい体質(おっちょこちょい)はいくつかの遺伝子の組み合わせにより決まっていると言われており、「おっちょこちょいのマウス」を試験的に作ることが出来る。(多因子遺伝病)
◇「珪肺」はどのような病気か、今はあまりないのか。アスベストの場合は補償があるが、珪肺の場合も公的補償はあるか。
 ~珪素を吸い込み肺に沈着し、それによる組織傷害のために次第に呼吸困難になる。珪肺は塵肺につながり、肺ガンになりやすいとも言われている。以前は炭鉱、隧道工事、陶器工場、石工等の従事者に多発していたが、今はかなり改善されてきた。症状が認定されると公的補償制度がある。被雇用者は厚労省の労災、一般住民等は環境省の救済制度がある。
◇近隣関係で発生した化学物資の過敏症による環境トラブルの相談を受けたこともかなりあるが、どう対応したらいいか。
 ~被害発生の因果関係が明確であれば、行政、保健所に相談すればいい。
  原因と発生の因果関係がはっきりしていない場合は極めて困難。因果関係
は病理学でなく疫学の分野。水俣病、イタイイタイ病の解決に大変な時間と努力を要したのは、疫学の知識が一般的にきちんと確立されていなかったためだ。今は確立しているが、それでも因果関係の立証は大変難しい。相関関係があるだけではだめで、地域事情、時間的問題等、様々な事情、関係が絡んでいる。
WHOは因果関係認定のために8つの基準(関連の時間性・強固性・一貫性、生物学的説得性、現時点の知識との整合性、量反応関係、実験的証拠)を定め、これへの該当度で判断されるが、すごく長い時間もかかる。結局は、問題解決の基本は、こうした因果関係の基準を念頭におきながら、関係者との話し合いによることしかないと思う。
◇疫学が個々の要素をきちんと矛盾なく取捨選択して相関関係の存否を判断する、そのスタンスは必要だと思う。しかし周辺の状況からして、間違いなく因果関係ありと思われるケースでも、個々の要素が科学的にきっちり証明来ない限り因果関係があると言えないとする社会的な状況もある。内部被爆の問題もその範疇ではないか。このあたり疫学はある意味迷路に入り、野瀬先生の時代に比べてあまり重要な役割を果たしていないと感じるが、どうでしょうか。
~私も同じ考え。因果関係をきっちり判断することは極めて難しく「強弱」でしか言えない。疫学的因果関係もWHOの8つの条件をすべて満たすことは困難である。医学の場合、因果関係の信頼度の目安(エビデンスレベル)を6段階に(Ⅰ~Ⅵ)に分けている。治療の推奨レベルを4段階(A~D)で示し、現実的に対応している。因果関係の問題を明確な科学的根拠に基づき判断するのは難しく、結局は行政的判断に持っていくか、住民運動として盛り上げ解決するか等、心情的次元での解決にならざるを得ないのではないか。(その具体例として、平成4,5年にあった小野湖のゴルフ場建設反対運動の実情、経緯等についての詳細な説明がなされた)。
◇界面活性剤、強力殺虫剤、アロマ物質、大音量の音など、自然との共生にする不自然なものに囲まれるようになっているごとが問題ではないか。
~時の流れに添うことも必要かもしれないが、行き過ぎもあると思われる。そういった発信をしていくことも大事ではないか。
◇クジラとマグロに水銀が多いと聞くが本当か。
~真偽は知らないが、双方、食物連鎖の上位に位置し、大量に食べるので、多量蓄積の可能性は考えられるが。
◇以前「人口が62億(当時)にも増え、地球環境を破壊しているのはすべて人間ではないか」と言う新聞の投書欄の記事を印象的に覚えている。現状もこの通りではないかと思うが。
~その認識は大切だと思う。その前提に立たないとESDやSDGsは進められない。単に理想を掲げるだけでなく、現実に立って難問題にチャレンジすることが求められていると思う(浮田)。
◇今夏、買った強力蚊取りスプレーを使ってみて、その使用法、強烈な効果に、人体、ペット等への影響など不安を覚えたが大丈夫だろうか?
~本質問は、事前提出質問であったので、予め回答を用意したが、蚊取り線香の成分ピレトリン系の物質であるが濃度がすごく高い。ほ乳類はこの物質を分解する酵素を持っていること、また動物実験も行われているので安全性を確認して売り出されていると思われる。急性障害の危険性はある。晩発性の影響の有無は確認されていない。                            
以上                                

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