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省エネ空調の研究(その3) 「ドップラー効果のお話」

2017年05月28日

 前回は高速で移動する透明な液体中の微少な渦を見えるようにする技術のお話をしました。また、最後の部分で、ドップラー効果のお話を少ししました。
前回のブログのURL:
  http://ubekuru.com/blog_view.php?id=4483
http://ubekuru.com/blog_view.php?id=4479
音の発生源が近付く場合には、波の振動が詰められて周波数高くなり、逆に遠ざかる場合は振動が伸ばされて低くなることが知られています。例えば、救急車などが近付くときにはサイレンの音が高く聞こえ、遠ざかる時には低く聞こえるのは、この現象によるものです。音についてのこの現象は、古くから知られていましたが、オーストリアの物理学者、クリスチャン・ドップラーが速度と周波数の間の数学的な関係式を1842年に見出したので、この現象はドップラー効果と呼ばれています。
 下図を見て下さい。音の高さ(周波数)が分かっている場合、前方あるいは後方に位置する人が、その音の周波数を測定すると音源の速度を計算することができます。ドップラー効果を利用した速度の測定でよく知られているのは、野球で投手が投げた球の速度を瞬間的に測定する技術です。この場合、救急車のように移動している物体が音を発生してはいないので、測定する物体に向けて電波を照射し、物体による反射波を測定することになります。物体が運動している時はドップラー効果によって反射波の周波数が変化するため、これと発射波の周波数を比較することにより、運動の速さを算出します。

野球の球速測定の他に、自動車の速度違反取締にも使われています。このような装置は、速度を測定しようとする物体が比較的大きくて、観測範囲に1個しか存在しない場合は電波を照射することで測定が可能です。でも、測定しようとする対象の粒子が多数で、それぞれが異なる速度で近づいたり遠ざかっている場合は測定結果が不正確になります。医学の応用分野で、血管内の血流が正常値より少ないかどうかを診断する場合は超音波血流計が良く使われます。超音波は体の中をある程度透過しますので、流れている赤血球により反射される超音波の周波数を測定して、血管内の平均的な速度を計算することができます。このようなドップラー流束計は、下肢静脈瘤の有無、頸動脈血流・狭窄の可視化などの専用機が市販されています。

さて、省エネ空調技術の開発において、パイプの中に分散された直径数ミクロンのポリスチレン粒子の速度を測定する必要があることを指摘しました。(赤血球よりも小さい微粒子です。)また、パイプの中の最小の渦も数ミクロン程度なので、直径2センチメートル程度のパイプの中の平均的な速度を超音波照射で測定しても、パイプの中の流れを可視化したことになりません。それ故、測定しようとする微小な空間に飛び込んできた直径数ミクロンの粒子の速度を瞬間的に測定する必要があります。微小な測定空間を形成するために、レーザー光が使われます。下図の左上の図をご覧ください。レーザー光線を光学レンズによって非常に細く集光します。その部分を通過する微粒子からの散乱光を受光部で捕捉します。この光を光電子増倍管によって電流値に変換します。光の周波数は非常に大きいので通常の電子回路で変化する光の周波数を瞬間的に測定するのは困難です。それ故、元のレーザー光(入射光)と散乱光を光電子増倍管上で混合します。そうすると、光の干渉によって両者の差の周波数の「うなり」が生じます。(中学校の頃に、音の高さの違う2個の音叉を同時にならすと「うなり」が聞こえることを実験した記憶があると思います。)これをドップラーシフト周波数と呼びます。この系では次式が成立します。
2πf=V∙(ki-ks)
ここで、fはドップラーシフトの周波数、Vは流れの速度、ki は入射光のベクトル、ks は散乱光のベクトルです。下図に示すように、レーザー光(入射光)と散乱光を混合するためには、観測点からの散乱光のみを受光する必要があり、微小なピンホールを受光部の前に置く必要があります。また同じ程度の強さのレーザー光を受光部に照射して混合するのですが、この方式は参照光方式と呼ばれます。微弱な散乱光を検出するために、レーザーの強度を大きくする必要があるので、初期の開発段階では参照光方式が使われましたが、現在では二本のレーザー光を観測地点で交差させることにより出来る光の干渉縞を、散乱粒子が通過する時の散乱強度を測定するフリンジ方式と呼ばれるドップラーシフト周波数の検出方式が多用されています。この方式の方がレーザー光の散乱光への変換を有効に使うことが出来るのです。

このようなドップラー流束速計を製作して、省エネ空調技術の開発の応用した研究は次回に説明することとします。

ドップラーさんのお話の最後に、雲とか雨の可視化について説明しましょう。毎日の気象情報で、下図のような画面を見ることがあると思います。ニュースでは「レーダーによる画像」と表現していますが、実はドップラー効果を利用しているのです。通常のレーダーでは発射された電波が雲や雨水により反射されて戻ってくるまでの時間と方向を測定します。これによりどこに雲があるかを知ることができます。一方雨の速度とか武茂の移動速度と方向をドップラー効果で計測して、より詳しい情報を得ることができます。このようにして得られたデータを総合して、気象予報の降水量画像を作っているのです。このような技術は集中豪雨や竜巻などの災害の情報発信に役立っています。

今回で、ドップラーさんのお話は一段落です。次回からは、レーザードップラー流速計による省エネ空調の研究の話に入ります。私事で恐縮ですが、先週、環境省の環境学習推進に関するプロジェクトの採択通知が届きました。昨年に続いて2年目の採択となりましたが、当面このプロジェクトの再開に集中する必要があります。そのため、省エネ空調の研究シリーズは少し休憩して、多分夏の終わり頃か初秋の頃には再開できると思っています。よろしくお願いいたします。(HU)

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